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第9話『お二人は『聖女』というものを御存知ですか?』 3/3
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「あー。その、なんだ? 俺と島風は、どんな相手が立ちふさがっても負けんという事だ」
「シュン。お前……もう少し何とかならんか」
「やかましいな。オーロ。俺はこういうのが苦手なんだ。話すのはお前の方が得意だろう。お前が言え」
「はいはい。分かった分かった」
オーロさんは笑いながらコップの中のお茶を飲み干し、コップを置きながら私を見る。
「ミラ」
「は、はい」
「俺はな。戦場で生まれたんだ」
「戦場」
「そう。戦場だ。人間同士が戦争をしている戦場だな。その何処かで俺は生まれた。そして色々な奴に拾われて、戦いながら生きてきた。しかし、そんな俺にも、家族が出来てな。戦う事しか知らん俺にも、安らぐ場所って奴が出来た」
「……はい」
「つまりだ。生まれも、育ちも関係ない。己がどうありたいかだ。ミラ。たった二日しか過ごしていないが、俺はミラの事が嫌いじゃない。もしミラが望むのならば、どんな運命からも逃がしてやろう」
「オーロさん」
「まぁ、こんな風に逃げ回る生活という訳にはいかないからな。このまま東の果て。セオストにでも行けば良いさ。あそこには世界最強の男、エドワルド・エルネストが居る。あの男は、子供が犠牲になる未来など認めはしない。君の夢を脅かすものは居ない」
「セオスト……確か、自由商業都市でしたか」
西に集まっている国々とは違い、確かに東に行けば、国連議会も手が届かないだろう。
ましてや獣人戦争の英雄エドワルド・エルネストと敵対する事は、国連議会も避けたいはずだ。
そこには未来がある。
でも、それは駄目だ。
だって私には護りたい物があるのだから。
「お二人の好意はとても嬉しいです。ですが、私はその提案に頷く事は出来ません」
「……」
「何故なら、それは歴史が証明しているからです。かつて五十年前に起こった獣人戦争は、聖女が獣人の国に奪われた事から始まりました。今、私がここで逃げ出せば同じ事が起こります」
私は首から下げているペンダントを、服の下から取り出してそれを二人に見せて笑う。
「私がこうして夢を追えるのも、このペンダントがあるからです」
「……それは?」
「はい。私が確かに生きている事と、ヴェルクモント王国から出ていない事を知らせる為に付けている物です。これがあり、私が国外に出ていない事で、人々は安心し、戦争を起こさずにいられるのです。だから、私は、決してこの運命から逃げるつもりはありませんよ」
キラリと鈍色に輝く運命を見ながら、私は静かに目を閉じるのだった。
「シュン。お前……もう少し何とかならんか」
「やかましいな。オーロ。俺はこういうのが苦手なんだ。話すのはお前の方が得意だろう。お前が言え」
「はいはい。分かった分かった」
オーロさんは笑いながらコップの中のお茶を飲み干し、コップを置きながら私を見る。
「ミラ」
「は、はい」
「俺はな。戦場で生まれたんだ」
「戦場」
「そう。戦場だ。人間同士が戦争をしている戦場だな。その何処かで俺は生まれた。そして色々な奴に拾われて、戦いながら生きてきた。しかし、そんな俺にも、家族が出来てな。戦う事しか知らん俺にも、安らぐ場所って奴が出来た」
「……はい」
「つまりだ。生まれも、育ちも関係ない。己がどうありたいかだ。ミラ。たった二日しか過ごしていないが、俺はミラの事が嫌いじゃない。もしミラが望むのならば、どんな運命からも逃がしてやろう」
「オーロさん」
「まぁ、こんな風に逃げ回る生活という訳にはいかないからな。このまま東の果て。セオストにでも行けば良いさ。あそこには世界最強の男、エドワルド・エルネストが居る。あの男は、子供が犠牲になる未来など認めはしない。君の夢を脅かすものは居ない」
「セオスト……確か、自由商業都市でしたか」
西に集まっている国々とは違い、確かに東に行けば、国連議会も手が届かないだろう。
ましてや獣人戦争の英雄エドワルド・エルネストと敵対する事は、国連議会も避けたいはずだ。
そこには未来がある。
でも、それは駄目だ。
だって私には護りたい物があるのだから。
「お二人の好意はとても嬉しいです。ですが、私はその提案に頷く事は出来ません」
「……」
「何故なら、それは歴史が証明しているからです。かつて五十年前に起こった獣人戦争は、聖女が獣人の国に奪われた事から始まりました。今、私がここで逃げ出せば同じ事が起こります」
私は首から下げているペンダントを、服の下から取り出してそれを二人に見せて笑う。
「私がこうして夢を追えるのも、このペンダントがあるからです」
「……それは?」
「はい。私が確かに生きている事と、ヴェルクモント王国から出ていない事を知らせる為に付けている物です。これがあり、私が国外に出ていない事で、人々は安心し、戦争を起こさずにいられるのです。だから、私は、決してこの運命から逃げるつもりはありませんよ」
キラリと鈍色に輝く運命を見ながら、私は静かに目を閉じるのだった。
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