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11・ロックの昔話②
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物心ついた時には、ひもじさしか感じなかった。
両親は優しかったけど、いつも優しさしか渡せなくて申し訳ないって顔してた。
あの頃は……いやまあ今も大して差はないか、みんな同じだったな。
誰もが自分たち以外の面倒を見るには厳しくて難しい。
村社会って言っても、最低限のつながりっていう感じしかなくて。
両親以外と話したことも遊んだこともなかったな。
五歳くらいの時かな、村が近くで発生したスタンピードに巻き込まれてな。
必死に逃げて、足掻いて……気が付いた時には冷たくなった両親や村の人たちだったもので溢れ返っていたよ。
魔物の群れがそのまま俺のところまで来て、幼心に死ぬんだって理解して……諦めて目を瞑った。
いくら待っても覚悟していた痛みとかねえな、って思って眼を開けたら、あの人たちがいたんだ。
ああ、そうだよ。
前に話していた、俺を拾って、俺を育ててくれた傭兵団の人たちさ。
ここが出会いだったんだ。
〇
『おー! こんなところに生き残りがいましたよ団長!』
いつもデカい声で、雑で馬鹿な切り込み隊長の〈ザッケ〉が小さい俺を抱き上げる。
全身血まみれ臓物まみれなのを考慮せずに抱いたもんだから、一瞬にして気分が悪くなって吐いたな。
今じゃ笑い話だが、当時の俺には結構なトラウマになったもんだ。
『おいザッケ! てめえそんな状態でガキ抱いてんじゃねえよ!』
そんな男の雑な子ども扱いに切れたのが団長の〈カイン〉だ。
行き場のない俺に生きる道を与えてくれた、生涯の憧れ。
越えることのできない、越えるべき人。
そして。
助けることのできなかった人。
〇
この出会いから、俺は傭兵団の一員になるため頑張った。
荷運びに、調理や調合、時に獲物の解体や、自衛のための殺しなど。
とにかく皆から色んな技術や知識を叩き込まれた。
その中でも、団長に教わった戦いと信念は今でも活きている。
『いいかロック、人助けってのは自分のためにするものなんだ』
『巡り巡って助けられることがあるから、ってわけじゃない』
『これは打算だ』
『仮にそいつを見捨てちまって、次に出会ったときに俺が死にかけていて、助けを乞っても恨みで見捨てられてしまわれないようにな』
『だからお前を助けたんだよ、ロック』
冗談めかして言うカインの顔は、どこか真剣だった。
本気で思っていて、どこかでやるせない気持ちだったんだと、俺は思ってる。
正しいことをまっすぐ言えるような、そういう世界じゃないから。
甘ちゃんやお人好しと思われては困る仕事だからな。
まあ俺含めた団員はみんな、団長のことをそういう風に思ってたけどな。
そして、団長はすさまじく強かった。
俺がいつも背負ってるこの得物も元は団長のものだったんだ。
両刃の戦斧〈バーキス〉という。
小さい頃の俺はこいつを振るいたくてしょうがなくてな。
とにかく我武者羅に鍛えようとしていたよ。
そしたらザッケに叱られてな。
『目的があってそれのために頑張ることはいいとこだぜ!』
『でも雑だな! 目的や目標があるのなら、なおさら丁寧にしないと変なのが染みついちまうぜ!』
ザッケに言われたくねえなっていうことばかりだったけれども、今思い返せばちゃんとしたことを教えてくれていたんだなって思ったよ。
要は『気持ちが別に向いている』『決めた回数をこなすことばかりに集中している』……そんな状態になるなって、ことだったんだ。
気づいたのは、一月後の別のことでなんだけどな。
まあ、そんなこんなで、俺は傭兵団を……。
……え?
何か特別なこと?
……ちょっと待ってな、思い出すから。
両親は優しかったけど、いつも優しさしか渡せなくて申し訳ないって顔してた。
あの頃は……いやまあ今も大して差はないか、みんな同じだったな。
誰もが自分たち以外の面倒を見るには厳しくて難しい。
村社会って言っても、最低限のつながりっていう感じしかなくて。
両親以外と話したことも遊んだこともなかったな。
五歳くらいの時かな、村が近くで発生したスタンピードに巻き込まれてな。
必死に逃げて、足掻いて……気が付いた時には冷たくなった両親や村の人たちだったもので溢れ返っていたよ。
魔物の群れがそのまま俺のところまで来て、幼心に死ぬんだって理解して……諦めて目を瞑った。
いくら待っても覚悟していた痛みとかねえな、って思って眼を開けたら、あの人たちがいたんだ。
ああ、そうだよ。
前に話していた、俺を拾って、俺を育ててくれた傭兵団の人たちさ。
ここが出会いだったんだ。
〇
『おー! こんなところに生き残りがいましたよ団長!』
いつもデカい声で、雑で馬鹿な切り込み隊長の〈ザッケ〉が小さい俺を抱き上げる。
全身血まみれ臓物まみれなのを考慮せずに抱いたもんだから、一瞬にして気分が悪くなって吐いたな。
今じゃ笑い話だが、当時の俺には結構なトラウマになったもんだ。
『おいザッケ! てめえそんな状態でガキ抱いてんじゃねえよ!』
そんな男の雑な子ども扱いに切れたのが団長の〈カイン〉だ。
行き場のない俺に生きる道を与えてくれた、生涯の憧れ。
越えることのできない、越えるべき人。
そして。
助けることのできなかった人。
〇
この出会いから、俺は傭兵団の一員になるため頑張った。
荷運びに、調理や調合、時に獲物の解体や、自衛のための殺しなど。
とにかく皆から色んな技術や知識を叩き込まれた。
その中でも、団長に教わった戦いと信念は今でも活きている。
『いいかロック、人助けってのは自分のためにするものなんだ』
『巡り巡って助けられることがあるから、ってわけじゃない』
『これは打算だ』
『仮にそいつを見捨てちまって、次に出会ったときに俺が死にかけていて、助けを乞っても恨みで見捨てられてしまわれないようにな』
『だからお前を助けたんだよ、ロック』
冗談めかして言うカインの顔は、どこか真剣だった。
本気で思っていて、どこかでやるせない気持ちだったんだと、俺は思ってる。
正しいことをまっすぐ言えるような、そういう世界じゃないから。
甘ちゃんやお人好しと思われては困る仕事だからな。
まあ俺含めた団員はみんな、団長のことをそういう風に思ってたけどな。
そして、団長はすさまじく強かった。
俺がいつも背負ってるこの得物も元は団長のものだったんだ。
両刃の戦斧〈バーキス〉という。
小さい頃の俺はこいつを振るいたくてしょうがなくてな。
とにかく我武者羅に鍛えようとしていたよ。
そしたらザッケに叱られてな。
『目的があってそれのために頑張ることはいいとこだぜ!』
『でも雑だな! 目的や目標があるのなら、なおさら丁寧にしないと変なのが染みついちまうぜ!』
ザッケに言われたくねえなっていうことばかりだったけれども、今思い返せばちゃんとしたことを教えてくれていたんだなって思ったよ。
要は『気持ちが別に向いている』『決めた回数をこなすことばかりに集中している』……そんな状態になるなって、ことだったんだ。
気づいたのは、一月後の別のことでなんだけどな。
まあ、そんなこんなで、俺は傭兵団を……。
……え?
何か特別なこと?
……ちょっと待ってな、思い出すから。
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