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5・メイ

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 訓練を中断しその姉についての相談を受けた俺は、知り合いの薬師を訪ねた。
 容体の状態を詳しく聞いたうえで、それを治せるような薬を貰おうとしたのだが『ちゃんとてめえの眼で見てから俺に伝えてこい』という至極まっとうな返事を頂いたので、とりあえず滋養がつくような食材を買い上げて、トアルとアリルが住んでいるという家へと向かった。
 何気に、弟子たちが住んでいる家に行くのは、初めてである。
 この数か月でこんなにも初期の『原作キャラに近づくと危ない』とかいう信念がねじ曲がって主人公とかヒロインとか関係なく『弟子たち可愛い!』に変わっちまって、近寄るつもりもなかったはずなのに、大接近して、超関係していってるのは、もう気にしないことにした。
 なるようになる。
 今日ほど、この言葉を胸の内に刻んだ日はないだろう。
 明日には忘れそうだが。
 しかし。
「このあたりのはず……だが……」
 思わず呟くほど、人のいる区域から外れてる。
 郊外って感じではないが、それでもここは、本当に人里離れた、というか。
 誰も近寄りがたい、というか。
(…………あれか?)
 見えてきた建物が一つ。
 この距離でわかるボロボロ感。
 あれを家というには、あまりにも、その。
 言葉が、詰まる。
「あ、師匠!」
 そんなボロの家屋からトアルが元気よく出てきてこちらに走ってくる。
 どうやら窓らしきところから俺を発見したらしい。
 いい眼をしている……というか、あれ窓だったんだな。
「すまん、遅くなった」
「いや十分に早いですって」
「とりあえず、俺が来るってことは家族に話しているのか?」
「ええ、俺とアリルでみんなに説明してますんで」
 どうやらその件の姉以外に複数人いるらしい。
 全然知らない、ゲームでそんな情報一切出てこない。
 ゲームだとトアルとアリルだけのはずなのに。
 どういうことだ……?
 聞いてみるか。
「……何人家族なんだ?」
「えーっと、俺とアリル、昨日話した姉のメイに、俺らより小さいのが2人です」
 5人家族!
 多いな……いやそんなに多いなら作中で明言されるだろうに。
 なんだって作中で一切触れられてないんだ。
(もしかして、俺の行動や介入による、ゲームのストーリーや大筋に変化が……?)
 いや今更過ぎる。
 俺の生まれがそもそも違う時点で、この世界は、何かおかしいんだ。
 原作のメインストーリーが役に立たなくなる日がこんなにも早く来るなんて。
(……いや本当に今更過ぎるな)
 俺というイレギュラーの時点で、エルダとの関係の時点で、そもそも、この主人公を助ける側になっていた時点で、原作とは乖離していると腹括っていくべきだったんだよなぁ。
「師匠? どうしたんです立ち止まって」
「いや……なんでもない」
 腹は括った。
 もう何が来ても、俺は驚きはしない。
「では、どうぞ師匠! 俺たちのわが家へ!」
 そういって招かれた壊れそうな扉から入ると、そこには。
 こちらを不安そうに見つめる複数の瞳と、アリルと。そして。
「こんにちは、貴方がトアルとアリルのお師匠様ですね」
 え。
 なんで。
 なんでこのキャラがここにいるんだ……?

「私はこの子たちの姉をさせて貰っています、メイと申します」

 ラスボスが、そこにいた。
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