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4・知らない……
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原作のロックはもっと肥満体系で、ナイフで戦い、舌なめずりをする一見すると三下野郎である。
実際はC級冒険者にまで上がれるほどの実力を持ち、ステータスもさることながら攻略本に掲載されている『主人公たちとの戦闘で使用する前に殺されてお披露目されなかった』スキル一覧を見れば『斥候』として理想的な姿といわれるほど完成されているのがわかる。
覚醒しなかったら絶対に勝てないほどの実力差があった。
ただ。
問題は、原作のロックは、アホなので、戦士の道を歩んでいたことなのだが。
スキルも全部無駄にしながらC級冒険者になっているのである。
……ある意味すごい奴だったのでは?
今の俺はというと『戦士』の適性があり、戦士として生きている。
ただ魔術も使えるし、他の技術も研鑽しているから単純な戦士ではない。
ソロとしての活動が多いから、色んなことができないと困ることが多かっただけなのだが。
そのおかげで『A級手前のB級冒険者』として目をかけられてはいる……かけられてはいるが、A級にはなるつもりは毛頭ない。
この冒険者の階級というのは単純に実績も必要だが、それに見合う強さの証明も必須であり、袖の下を通して不正をすることはできない。
ギルドが責任をもって「この人はこの階級として認めてます」と国や世間に言わねばならないからだ。
その割には原作のロックみたいなカスとか多いのは、ゲーム的なあるあるなんだろうと割り切っている。
設定や世界観の穴を突いて楽しむ趣味はない。
まあ冒険者ってのは舐められたらおしまいの職業なところもあるし、プライドで飯食ってる奴らばかりだから品位とかの考えに差が出てくるのはしょうがない。
誰にでもなれる職業だからゆえに。
そんな『誰でもなれる職業』だからこそ夢を見てしまう。
一騎当千の力、億千万の富、拍手喝采の名声……地位も立場も生まれも関係なく、という職業だからこそ、トアルとアリルは求めているんだろう。
彼らは孤児だ。
〇
あれから数か月ほどの時間が過ぎた。
やはり主人公とヒロイン候補だけあってか、筋はいいし伸びしろも普通じゃない。
確実に化けていくし、俺なんかあっという間に超えていくだろう才能の持ち主たちだ。
(主人公とヒロインだからな……)と頭では納得するが、なんだろう、少しだけずるいよな、って思ってしまうのは原作からの感情から湧き出てきているものなのだろうか。
まあ、それはそれとして。
「トアル、アリル。今日の訓練は中止だ」
「……えっ!」
反応があまりにも遅い。
言葉に対する返事が間が開くほどの遅さだ。
気が抜けているというか、心ここにあらず極まれり、というか。
「……なんかあったのか?」
「いや、大丈夫ですよ!」
「く、訓練やりますから!」
嘘へたくそだろこいつら……。
トアルの振るう訓練用の剣は刃を落としているとはいえ実物だから扱いを間違えれば事故につながるし、アリルに至っては魔術の行使を失敗すれば大ケガの原因にもなる。
「今のままやっても意味がないからな……訓練の中止は変わらん」
「……すいません」
「ごめんなさい」
「悪いと思うのなら、何があったのか話してくれてもいいんじゃないか?」
「っ……それは……」
どうせ、こいつらのことだから『迷惑をかける』とか『これ以上お世話になるのは申し訳ない』とか言ってくるんだろうなと内心思ってしまう。
さすがに数か月師匠として付き合えばどういう性格かはわかる。
わかってしまう。
だから、先手を打つ
「――あのな」
俺は屈んで、二人の目線に合わせる。
少しだけトアルの背が高くて、アリルの背は小さい。
まだ、まだまだ子供なんだこの二人は。
ゲームとは違って、そこに、確かにいるんだ。
「俺は、お前らの師匠なんだ。訓練だけつけるっていう関係は、そら最初の頃だったら割り切ってたかもしれんが、もう数か月の付き合いで……だから……あーもう! 素直になんか困ってるなら言え! 師弟だろ!?」
後半ヤケクソになってしまった。
なんか、恥ずかしくなって。
思わず二人から顔ごと逸らす。
「……本当に、私たち、師匠に会えてよかったです」
「うん」
くそっ、うれしいけど恥ずかしいこと言いやがって!
顔の照れが落ち着いてから、二人を見る。
「お願いします、師匠――」
その二人の口から放たれた言葉は。
「家族を……姉を、助けてくれませんか?」
原作にはない、姉の存在を認識させてきた。
え、誰、知らない……。
実際はC級冒険者にまで上がれるほどの実力を持ち、ステータスもさることながら攻略本に掲載されている『主人公たちとの戦闘で使用する前に殺されてお披露目されなかった』スキル一覧を見れば『斥候』として理想的な姿といわれるほど完成されているのがわかる。
覚醒しなかったら絶対に勝てないほどの実力差があった。
ただ。
問題は、原作のロックは、アホなので、戦士の道を歩んでいたことなのだが。
スキルも全部無駄にしながらC級冒険者になっているのである。
……ある意味すごい奴だったのでは?
今の俺はというと『戦士』の適性があり、戦士として生きている。
ただ魔術も使えるし、他の技術も研鑽しているから単純な戦士ではない。
ソロとしての活動が多いから、色んなことができないと困ることが多かっただけなのだが。
そのおかげで『A級手前のB級冒険者』として目をかけられてはいる……かけられてはいるが、A級にはなるつもりは毛頭ない。
この冒険者の階級というのは単純に実績も必要だが、それに見合う強さの証明も必須であり、袖の下を通して不正をすることはできない。
ギルドが責任をもって「この人はこの階級として認めてます」と国や世間に言わねばならないからだ。
その割には原作のロックみたいなカスとか多いのは、ゲーム的なあるあるなんだろうと割り切っている。
設定や世界観の穴を突いて楽しむ趣味はない。
まあ冒険者ってのは舐められたらおしまいの職業なところもあるし、プライドで飯食ってる奴らばかりだから品位とかの考えに差が出てくるのはしょうがない。
誰にでもなれる職業だからゆえに。
そんな『誰でもなれる職業』だからこそ夢を見てしまう。
一騎当千の力、億千万の富、拍手喝采の名声……地位も立場も生まれも関係なく、という職業だからこそ、トアルとアリルは求めているんだろう。
彼らは孤児だ。
〇
あれから数か月ほどの時間が過ぎた。
やはり主人公とヒロイン候補だけあってか、筋はいいし伸びしろも普通じゃない。
確実に化けていくし、俺なんかあっという間に超えていくだろう才能の持ち主たちだ。
(主人公とヒロインだからな……)と頭では納得するが、なんだろう、少しだけずるいよな、って思ってしまうのは原作からの感情から湧き出てきているものなのだろうか。
まあ、それはそれとして。
「トアル、アリル。今日の訓練は中止だ」
「……えっ!」
反応があまりにも遅い。
言葉に対する返事が間が開くほどの遅さだ。
気が抜けているというか、心ここにあらず極まれり、というか。
「……なんかあったのか?」
「いや、大丈夫ですよ!」
「く、訓練やりますから!」
嘘へたくそだろこいつら……。
トアルの振るう訓練用の剣は刃を落としているとはいえ実物だから扱いを間違えれば事故につながるし、アリルに至っては魔術の行使を失敗すれば大ケガの原因にもなる。
「今のままやっても意味がないからな……訓練の中止は変わらん」
「……すいません」
「ごめんなさい」
「悪いと思うのなら、何があったのか話してくれてもいいんじゃないか?」
「っ……それは……」
どうせ、こいつらのことだから『迷惑をかける』とか『これ以上お世話になるのは申し訳ない』とか言ってくるんだろうなと内心思ってしまう。
さすがに数か月師匠として付き合えばどういう性格かはわかる。
わかってしまう。
だから、先手を打つ
「――あのな」
俺は屈んで、二人の目線に合わせる。
少しだけトアルの背が高くて、アリルの背は小さい。
まだ、まだまだ子供なんだこの二人は。
ゲームとは違って、そこに、確かにいるんだ。
「俺は、お前らの師匠なんだ。訓練だけつけるっていう関係は、そら最初の頃だったら割り切ってたかもしれんが、もう数か月の付き合いで……だから……あーもう! 素直になんか困ってるなら言え! 師弟だろ!?」
後半ヤケクソになってしまった。
なんか、恥ずかしくなって。
思わず二人から顔ごと逸らす。
「……本当に、私たち、師匠に会えてよかったです」
「うん」
くそっ、うれしいけど恥ずかしいこと言いやがって!
顔の照れが落ち着いてから、二人を見る。
「お願いします、師匠――」
その二人の口から放たれた言葉は。
「家族を……姉を、助けてくれませんか?」
原作にはない、姉の存在を認識させてきた。
え、誰、知らない……。
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