6 / 7
第二章 抗う種付けおじさん
6
しおりを挟む
シゲさんちにお世話になってから一か月は経った。
近所の人と全く関わることなく生活することは不可能に近かったので、どう言い訳しようと思っていたらどうやらシゲさんが先手を打っていたらしく『親戚から紹介された住み込みのお手伝いさん』という扱いになっていた。
おかげで話はスムーズに進み、今では普通に挨拶を交わせてもらったり、物をくれたり、一緒に何かの作業をしたこともあった。
なんていうか、この周辺の一人として生きていっているなという実感は強まった。
まだゲームという感覚は……いやもう何かお婆ちゃんと田舎に暮らしている一人っていう感じで。
実はそれっぽい世界でゲームの世界に転生したとかウソなんじゃないか?なんて思っていた。
だが残念なことにこの世界は地球ではなく『アストル』という星であり、この国も『和国』だったりする。
猫耳のついた女性や二足歩行する牛の男性が近所にいるが、決してコスプレではない。
間違いなく、俺はゲームの世界の住人にはなっていた。
そんな感覚が薄れつつあった、ある日のこと。
「ジオや、今日からしばらく孫が来るからな」
庭で竹刀を使った素振りをしていた時、突然そんなことを言われたのだった。
「えっ、シゲさんのお孫さんですか?」
「ああ……かんなり可愛いからな、覚悟せえよ」
「覚悟しないといけないレベルなんですか……?」
「そらもう、あれはお前さん、動く可愛いとしか言いようがないよ」
「動く可愛い……?」
「まあ、そろそろ来ると思うからな。一応風呂入って身綺麗にしとき」
「あ、はい……あの」
「なんや?」
「あ、いえ……なんでもないです」
「?」
会ってもいいのかな?という言葉を飲み込み思い返す。
シゲさんの孫、という話題が出て、そういえばそういう話は全然しなかったなと。
他愛ない話をしながら、一緒にテレビを見て、ああだこうだという会話はしても、お互いの過去については触れることはなかったな……と思ったところでシゲさんが俺に対して――正確にはジオの素性や過去について――触れないようにしてくれていたとわかり、心の中で感謝と礼を言った。
手早くシャワーを浴びて身綺麗にし、シゲさんが用意してくれたじんべえを着た。
そのタイミングだった。
「おばあちゃあああああああああああん!!!!!」
幼さの残るでっけえ声が家の中を貫くように響いた。
おそらく、シゲさんの孫だろう……じゃなかったらちょっと怖い。
玄関のほうへと足を運んでいくと、オシャレな見た目の真っ赤な髪の少女がシゲさんに抱き着きながらキャッキャとはしゃいでいた。
シゲさんは相変わらず変化に乏しいが、少しだけ口角が上がっているのを俺は見た。
「ようきたね、あかり」
「大変だったよ~……あれ?」
「ああ、まだ言うてなかったね。この人は私の家のお手伝いさん」
そういってシゲさんは俺をあかりと呼ばれた少女に教えた。
「お手伝いさん?」
「ああそうさ。もう私も歳だからね、男手が欲しかったのさ」
「ふーん……」
そういって、少女はこちらに近づいてくると丁寧に頭を下げてきて――。
「椿内あかりです! よろしくお願いします!」
元気な声と笑顔で答えてくれた。
メインヒロインの一人と同じ名前と、笑顔で――。
近所の人と全く関わることなく生活することは不可能に近かったので、どう言い訳しようと思っていたらどうやらシゲさんが先手を打っていたらしく『親戚から紹介された住み込みのお手伝いさん』という扱いになっていた。
おかげで話はスムーズに進み、今では普通に挨拶を交わせてもらったり、物をくれたり、一緒に何かの作業をしたこともあった。
なんていうか、この周辺の一人として生きていっているなという実感は強まった。
まだゲームという感覚は……いやもう何かお婆ちゃんと田舎に暮らしている一人っていう感じで。
実はそれっぽい世界でゲームの世界に転生したとかウソなんじゃないか?なんて思っていた。
だが残念なことにこの世界は地球ではなく『アストル』という星であり、この国も『和国』だったりする。
猫耳のついた女性や二足歩行する牛の男性が近所にいるが、決してコスプレではない。
間違いなく、俺はゲームの世界の住人にはなっていた。
そんな感覚が薄れつつあった、ある日のこと。
「ジオや、今日からしばらく孫が来るからな」
庭で竹刀を使った素振りをしていた時、突然そんなことを言われたのだった。
「えっ、シゲさんのお孫さんですか?」
「ああ……かんなり可愛いからな、覚悟せえよ」
「覚悟しないといけないレベルなんですか……?」
「そらもう、あれはお前さん、動く可愛いとしか言いようがないよ」
「動く可愛い……?」
「まあ、そろそろ来ると思うからな。一応風呂入って身綺麗にしとき」
「あ、はい……あの」
「なんや?」
「あ、いえ……なんでもないです」
「?」
会ってもいいのかな?という言葉を飲み込み思い返す。
シゲさんの孫、という話題が出て、そういえばそういう話は全然しなかったなと。
他愛ない話をしながら、一緒にテレビを見て、ああだこうだという会話はしても、お互いの過去については触れることはなかったな……と思ったところでシゲさんが俺に対して――正確にはジオの素性や過去について――触れないようにしてくれていたとわかり、心の中で感謝と礼を言った。
手早くシャワーを浴びて身綺麗にし、シゲさんが用意してくれたじんべえを着た。
そのタイミングだった。
「おばあちゃあああああああああああん!!!!!」
幼さの残るでっけえ声が家の中を貫くように響いた。
おそらく、シゲさんの孫だろう……じゃなかったらちょっと怖い。
玄関のほうへと足を運んでいくと、オシャレな見た目の真っ赤な髪の少女がシゲさんに抱き着きながらキャッキャとはしゃいでいた。
シゲさんは相変わらず変化に乏しいが、少しだけ口角が上がっているのを俺は見た。
「ようきたね、あかり」
「大変だったよ~……あれ?」
「ああ、まだ言うてなかったね。この人は私の家のお手伝いさん」
そういってシゲさんは俺をあかりと呼ばれた少女に教えた。
「お手伝いさん?」
「ああそうさ。もう私も歳だからね、男手が欲しかったのさ」
「ふーん……」
そういって、少女はこちらに近づいてくると丁寧に頭を下げてきて――。
「椿内あかりです! よろしくお願いします!」
元気な声と笑顔で答えてくれた。
メインヒロインの一人と同じ名前と、笑顔で――。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】
m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。
その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする
【R18 】必ずイカせる! 異世界性活
飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。
偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。
ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。
男女比1対999の異世界は、思った以上に過酷で天国
てりやき
ファンタジー
『魔法が存在して、男女比が1対999という世界に転生しませんか? 男性が少ないから、モテモテですよ。もし即決なら特典として、転生者に大人気の回復スキルと収納スキルも付けちゃいますけど』
女性経験が無いまま迎えた三十歳の誕生日に、不慮の事故で死んでしまった主人公が、突然目の前に現れた女神様の提案で転生した異世界で、頑張って生きてくお話。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
【R18】セックス・ダンジョンでハーレム生活
ねんごろ
ファンタジー
僕はアトレント公爵家の次期当主、サイモン・アトレントだ。
我が一族には代々伝わる修行がある。
それに僕も挑戦することになるのだが……
まさか、その行き先がセックス・ダンジョンだったなんて。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる