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第一章 種付けおじさんになった男
2 竿役に生まれ変わった日
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姿見に映る男がいる。
肥満体で禿げた頭、テカる顔と団子鼻、厚い唇。
間違いない……今さっきまでやっていたエロゲの竿役のおっさんだ。
手を動かす。
目の前の男が動く。
どうして。
ジオ……ジオ・ネヅタケンサ。
どうして俺が竿役……しかもNTR専門のキャラクターに……!?
「あ……!」
さっき見えて、言えてしまった、あの言葉。
「種付け……おじさん……!」
バカみたいなあの一言が原因としか思えない。
じゃああの都市伝説は本当で、俺は、エロゲの中に……転生した、ってことか?
あ、頭が痛くなってきた。
冗談だと思ってやったことが、まさか本当だとは思わないじゃないか。
何が悲しくて、こんなおっさんになって……あれ?
(なんでこんなにボロボロなんだ?)
俺と化してしまったジオの肉体はボロボロで擦り傷など手当の後はあるが、かなり負傷している。
足に至っては包帯がグルグルに巻かれていて、徐々に痛みを思い出してきた。
だが、肝心の『原因』が思い出せない。
そもそも、なんでこうなっているのか一ミリも理解できていない。
(もしかして……NTR失敗後に転生した?)
可能性としては大いに考えられる。
ジオはNTR竿役として登場するキャラだが、この見た目と中身で多くの人間に嫌われている。
ゆえに恨みも買っていることが多く、NTRを失敗させるルートだとフルボッコにされたり、時には見殺しにされたりもする結末を迎える……大体が自業自得なんだが。
その内の一つのルート後のジオに転生した……エロゲの知識があるから導けることだ。
しかし。
「……ここがジオの部屋なのか?」
奴の部屋にしてはあまりにも奇麗すぎるし、物もなさすぎる。
宿の一部屋といったほうが正しいくらいだ。
そもそもジオの部屋のスチルは、完全に汚部屋なので、ありえない。
だから、ここは別の部屋である可能性があるが……。
「――目を覚ましたかい」
背後から声が聞こえる。
振り返るとそこには、着物の老婆が一人立っていた。
「あ、あなたは?」
その言葉に少しだけ眉をひそめた老婆は一つため息をついた。
「……家の前にあんたが倒れていた、それを助けたババアだよ」
「えっ!? あ、ありがとう、ございます……」
老婆の一言に少しだけ動揺する。
(このジオを助けるような人間が存在するなんて……)
正直、この老婆がジオをボコボコにした身内か、あるいは本人かと思って身構えていた。
どうやら助けてくれた恩人だった。
「見た目に違わず頑丈のようだね」
「え、いや、まあ……どうなんでしょう」
ジオは決して強い存在などではない。
ルート次第では戦うこともあるが強いわけじゃなく、どちらかといえば本人よりも取り巻きのほうが強い。
だからジオそのものが強い、あるいは頑丈なんて言う印象はない……しぶとい、っていうイメージが恐ろしいほど脳裏に残っているが。
「? なんだい、ハッキリしない物言いじゃないか」
「ああ、その……実は、ですね」
どうする。
このお婆さんは命の恩人ではあるが、その人にいきなり「いや実はこの世界はゲームで、僕はそのプレイヤーなんですよ~」なんて言えるわけない。
頭がおかしい人、で最悪通報される……というかこの見た目でも通報される。
問答無用で逮捕……死刑にでもなりそうだ。
それくらいにジオは嫌われている、細胞レベルで。
だが。
(なんていうか、普通に話せているような……)
原作のゲーム状態なら本当に今すぐ出て行けと言われてもおかしくないし、そもそも助けられることもなかったろうと思う。
なのに今、俺はこうして普通に……いやジオは普通に他人と話すことができている。
能力を使うこともなく。
「なんか事情でもあるのかい?」
お婆さんは疑いを含む目でこちらを見てくる。
まあ諸々のことがあっても、怪しい人間であることには変わりない。
しかしここで真実を言えば間違いなくおかしい人間扱いだ。
ここは――。
「実は……記憶が、混乱してまして……」
俺は噓をつくことにした。
肥満体で禿げた頭、テカる顔と団子鼻、厚い唇。
間違いない……今さっきまでやっていたエロゲの竿役のおっさんだ。
手を動かす。
目の前の男が動く。
どうして。
ジオ……ジオ・ネヅタケンサ。
どうして俺が竿役……しかもNTR専門のキャラクターに……!?
「あ……!」
さっき見えて、言えてしまった、あの言葉。
「種付け……おじさん……!」
バカみたいなあの一言が原因としか思えない。
じゃああの都市伝説は本当で、俺は、エロゲの中に……転生した、ってことか?
あ、頭が痛くなってきた。
冗談だと思ってやったことが、まさか本当だとは思わないじゃないか。
何が悲しくて、こんなおっさんになって……あれ?
(なんでこんなにボロボロなんだ?)
俺と化してしまったジオの肉体はボロボロで擦り傷など手当の後はあるが、かなり負傷している。
足に至っては包帯がグルグルに巻かれていて、徐々に痛みを思い出してきた。
だが、肝心の『原因』が思い出せない。
そもそも、なんでこうなっているのか一ミリも理解できていない。
(もしかして……NTR失敗後に転生した?)
可能性としては大いに考えられる。
ジオはNTR竿役として登場するキャラだが、この見た目と中身で多くの人間に嫌われている。
ゆえに恨みも買っていることが多く、NTRを失敗させるルートだとフルボッコにされたり、時には見殺しにされたりもする結末を迎える……大体が自業自得なんだが。
その内の一つのルート後のジオに転生した……エロゲの知識があるから導けることだ。
しかし。
「……ここがジオの部屋なのか?」
奴の部屋にしてはあまりにも奇麗すぎるし、物もなさすぎる。
宿の一部屋といったほうが正しいくらいだ。
そもそもジオの部屋のスチルは、完全に汚部屋なので、ありえない。
だから、ここは別の部屋である可能性があるが……。
「――目を覚ましたかい」
背後から声が聞こえる。
振り返るとそこには、着物の老婆が一人立っていた。
「あ、あなたは?」
その言葉に少しだけ眉をひそめた老婆は一つため息をついた。
「……家の前にあんたが倒れていた、それを助けたババアだよ」
「えっ!? あ、ありがとう、ございます……」
老婆の一言に少しだけ動揺する。
(このジオを助けるような人間が存在するなんて……)
正直、この老婆がジオをボコボコにした身内か、あるいは本人かと思って身構えていた。
どうやら助けてくれた恩人だった。
「見た目に違わず頑丈のようだね」
「え、いや、まあ……どうなんでしょう」
ジオは決して強い存在などではない。
ルート次第では戦うこともあるが強いわけじゃなく、どちらかといえば本人よりも取り巻きのほうが強い。
だからジオそのものが強い、あるいは頑丈なんて言う印象はない……しぶとい、っていうイメージが恐ろしいほど脳裏に残っているが。
「? なんだい、ハッキリしない物言いじゃないか」
「ああ、その……実は、ですね」
どうする。
このお婆さんは命の恩人ではあるが、その人にいきなり「いや実はこの世界はゲームで、僕はそのプレイヤーなんですよ~」なんて言えるわけない。
頭がおかしい人、で最悪通報される……というかこの見た目でも通報される。
問答無用で逮捕……死刑にでもなりそうだ。
それくらいにジオは嫌われている、細胞レベルで。
だが。
(なんていうか、普通に話せているような……)
原作のゲーム状態なら本当に今すぐ出て行けと言われてもおかしくないし、そもそも助けられることもなかったろうと思う。
なのに今、俺はこうして普通に……いやジオは普通に他人と話すことができている。
能力を使うこともなく。
「なんか事情でもあるのかい?」
お婆さんは疑いを含む目でこちらを見てくる。
まあ諸々のことがあっても、怪しい人間であることには変わりない。
しかしここで真実を言えば間違いなくおかしい人間扱いだ。
ここは――。
「実は……記憶が、混乱してまして……」
俺は噓をつくことにした。
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