運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました

十夜 篁

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プロローグ

幸せな日

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 昔々、とある村に、
この世界では珍しい、夜を閉じ込めたような黒い髪と瞳をもつ1人の少女が生まれました。
 少女の両親や村人たちは、最初こそ、その珍しい容姿に驚きましたが、特に気にすることもなく他の子供たちと一緒に大切に育てました。
 しかし、少女が15歳の時に、魔物の襲撃によりこの幸せな日々は突然終わりを告げました。
 魔物の大群は次々と村人たちを襲い、少女の両親も犠牲となりました。少女は、今朝まで話をしていた人が目の前で傷つけられていく姿や、暮らしていた村が次々と壊されていく姿に深く絶望し、神様に『この村を救ってほしい』と祈りを捧げました。
 すると、天から優しい光が降り注ぎ、少女を明るく照らしました。
その光は、神様が深く傷付いた少女の願いを叶えるためにおこなった祝福の光だったのです。少女は神様が授けてくれた祝福の力を使って魔物を退け、傷ついた村人たちを癒していきました。
 こうして魔物の襲撃は終わりを迎えたのです。
 のちに少女は、村の再建を手伝っていた少年と恋に落ち、幸せに暮らしました。

 ─そう言って、ベッドサイドに背中を預けていた母さまは静かに本を閉じた。そして、隣に寝転んでいる僕の頭を優しく撫で、眠りを誘うかのような穏やかな声で話し始めた。
「このお話はね、私たちのご先祖様のお話なのよ」
「ごせんぞさま?」
「そう。私のおばあちゃんのおばあちゃんのおばあちゃんのおばあちゃんのお話」
「うえ…?えっと、おばあちゃんのおばあちゃんのおばあちゃん?の…?」
僕は混乱しながら、あたふたと母さまが言っていたことを復唱しようとした。
「ふふ!
ずっと昔の私たちの家族のお話ってことよ。
この絵本に出てくる少女と少年が出会わなければ、私たちはここに生まれていないってことよ」
「…っ!そっかぁ!すごいね!」
正直に言うと、僕には母さまが言ってることが難しくてあまり分からなかった。
けれど、母さまが優しく語りかけてくれるから嬉しくなって、母さまに抱きついた。
母さまはそんな僕を抱きしめ返し、チュッと額にキスを送ると、ポンポンと布団を叩き、「さあ、良い子は寝る時間ですよ」と寝るように促した。
「はぁーい」
母さまの隣に寝転がるとふわっとお日様の匂いがする布団が被せられる。
そして、母さまも隣に寝転がると僕の方を向き、そっと僕を抱きしめてくれた。
僕も母さまをぎゅと抱き返し、眠りにつく。

─この時が僕の中で一番幸せな時間だった。
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