神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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番外編

お兄ちゃんと家族旅行①

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「飛鳥ー、旅行に行こう~!」

 それは、今から3年前。
 飛鳥が大学1年生。双子が中学2年生の初夏のこと。

 突然、父が電話をかけて来たかと思えば、いきなり、そんなことを言ってきた。

「旅行?」

「そうそう! 飛鳥も、もう大学生だし、この先パパと一緒に旅行なんて行ってくれないかもしれないし、華も温泉に行きたいって言ってたしさー。だから、夏に俺が帰ってきたら、みんなで旅行に行こう!」

 父が、ロサンゼルスに海外赴任をしてから、もうすぐ1年。兄妹弟3人だけの生活も、大分慣れてきた。

 だが、正月や春休みなどの長期休みには、父の侑斗は、必ずと言っていいほど、時間をつくり帰省してくれる。

 だからか、次の夏休みにも帰ってくるそうで、その際に、家族で旅行に行こうと、父は楽しそうに話す。

「旅行か……まぁ、いいんじゃない? 蓮華も喜ぶだろうし」

 そして、せっかく父が、連れて行ってくれるというのだ。決して悪い話ではなく。飛鳥が、にこやかに返事を返せば、この頃、淡々と旅行先を決め、神木家は、家族で温泉旅行に出かけることになった。








【番外編】お兄ちゃんと家族旅行 








 ◇◇◇

「わ~、素敵~!」

 それから、夏休みに入り、陽射しが眩しくきらめく頃、神木家は、とある温泉地に訪れていた。

 美しい山間やまあいに、ひっそりと佇むのは、風流な温泉旅館だ。

 純和風の優美な外観は、大正時代を思わせるような風情ある趣で、まさに、タイムスリップでもしてきたようだった。

 だが、そんな大正ロマンを思わせる世界に降りたったにも関わらず、我らがお兄様は、今日も一際輝いていた。

 なにより、金髪碧眼で、明らかに異国の姿をしているにも関わらず、不思議と様になっているのだから驚きだ。

「なんか、兄貴って、どこにいても馴染むよね?」

「やっぱ、顔がいいって最強なのかな?」

「そりゃぁ、うちの飛鳥くんは美人すぎるからなぁ。どんなに美しい景色も、立派な建造物も、飛鳥の前では霞んじゃうよねー」

「馬鹿なこと言ってないで、行くよ」

 双子と侑斗が、しみじみと絶賛すれば飛鳥は、呆れつつ旅館の門をぐくった。

「いらっしゃいませー」

 すると、中に入った瞬間、旅館の従業員たちが、にこやかに出迎えてくれた。

「ようこそ、お越しくださいまッ」

 だが、礼儀正しくお辞儀をしたあと、従業員たちは、飛鳥の顔を見るなり、顔を赤らめた。

(な、な、なにこの子! すごく綺麗!)

(芸能人!? いや、もしかして天使なの!?)

 そしてそれは、従業員だけでなく、ロビーにいた客たちをも、ザワつかせた。

「こんにちは。予約してた神木です」

 だが、そんな中、飛鳥はニッコリ笑って挨拶をし、平然と受付を始める。

 飛鳥をみて、ざわつかれるのは、いつものこと。

 だからか、飛鳥はもちろん、双子も侑斗も、特に気にすることはなく、その後、スムーズに受付を終えると、店の人達に案内され、神木家は、ロビーを後にした。

 だが、その後、四人が去ったロビーでは

「なぁ! 今の子、めちゃくちゃ美人じゃなかった!?」

「うん! 俺、あんなに綺麗な子、見た事ねーよ」

「俺もだよ!」

「あとで、ナンパしてみよーぜ!」

「えー、でも、親もいただろ!」

「大丈夫だって! それに、今を逃したら、あんな美女と出会える機会なんて、この先、一生ねーぞ!」

「た、確かに……!」

 そして、その噂は、あれよあれよと広まり、宿中に駆け巡った。

 そう、今、この旅館には、金髪碧眼で、とっても美人なが来ていると──…
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