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第8章 好きな人のお願い
第378話 恋愛とメッセージ
しおりを挟む「いっそ、つきあっちゃえば?」
「!?」
その言葉に、華はいっそう頬を赤くし困惑する。
付き合っちゃえば?
付き合っちゃえばって、なに?
まさか、榊くんと!?
「ムリムリムリ!! 絶対ムリ!!」
「いや、そこまで拒否らなくても」
だが、これでもかと首をブンブンと振る華をみて、葉月は苦笑いを浮かべた。
さすがに、榊が可哀想だ。好きな女の子から、ここまで『ムリ』を連呼されるのは
「もう、なにがムリなのよ! つきあってから、始まる恋もあるかもしれないし、なんなら、私が二人の仲を取り持って」
「ダメ! 榊くん、今、私への気持ち忘れようのしてるの! だから、そんなことしちゃダメ!」
「……っ」
周りに聞かれないように、コソコソと話しながらも、華は必死に訴えた。
あれから、いつも通り友達として振舞って、今やっと、これまで通りの関係に戻りつつある。
それなのに、そんなことをしたら、また、榊くんを傷つけてしまうかもしれない。
「お願い。私もう、榊くんのこと傷つけたくないの……!」
葉月の手を掴み、華が必死に頼み込む。だが、葉月は、そんな華の言葉に小さく眉をひそめた。
華は言う。これ以上、傷つけたくないからと。だから華は、榊の望むとおり友達として振舞ってるのだろう。
でも……
「華、榊が本当に望んでるのは、それじゃないよ」
「え?」
一瞬、時が止まった。
葉月の言葉が上手く飲み込めず、戸惑いと同時に葉月を見つめれば、今度は、葉月が華の手を握り、まっすぐに見つめ返してきた。
「榊が華に、友達でいることを望んだんだろうけど、それは、アイツの本心じゃないよ」
「え? 本心じゃ……ない?」
「うん。アイツが一番望んでるのは、華の友達に戻ることじゃなくて──華に、自分を好きになってもらうこと!」
「……!」
キュッと掴まれた手に力がこもった。葉月の言葉が、直接胸に響いて、微かに鼓動が早まる。
「す、好きに……?」
「そう。華をこれ以上、困らせないために、あいつは忘れるなんて言ったんだろうけど、本心は違うよ。自分の好きな人には、やっぱり自分を好きになって欲しいって思うもんだし」
「………」
「なにより、アイツ中二の頃から、ずっと華が好きなんだよ、簡単にわすれられるわけないじゃん。華はホント、恋愛面 疎いよね?」
「え? そうかな……っ」
「そうだよ。じゃぁ、改めて聞くけど、華はどう思ったの?」
「え?」
それは、さっきと同じ質問だった。でも
「華は嫌だった? 榊に好きだって言われた時」
「……え?」
葉月の言葉に、華は改めて、自分の心情を振り返った。
蓮にけしかけられて、正直、戸惑った。
榊くんの本気の思いを聞いて、凄く恥ずかしくかった。
でも……
「嫌、では……なかった……っ」
小さく、頬を染めながら呟けば、その言葉に、葉月は安心したように微笑んだ。
「そっか。じゃぁ、その気持ちだけは、伝えてあげなよ!」
「え?」
「『好きって言われて嫌じゃなかった』って、それだけは、榊に伝えること! アイツ今頃、華に嫌われたと思って、ビクビクしてそうだし」
「そ、そんなことはないと」
「えー、チャラそうに見えて、案外、繊細なやつかもよ~。あと、スマホに何かメッセージが届いてるみたいだけど、大丈夫?」
「え? あ……!」
すると、葉月の言葉に、華はふと机の上に置いていたスマホを見つめた。すると、確かにメッセージが届いているみたいだった。
しかも、兄から──
「あ、ほんとだ。しかも、飛鳥兄ぃからって珍しい」
「また、あれじゃない? なんか買ってこい的なやつ」
「あー、そうかも───あれ??」
だが、その後メッセージを見れば、毎度恒例のお使いではなく、兄のメッセージには
《明日、なにか予定ある?》
と、一言。
(ん? 明日って、土曜日? なんだろ?)
意味深な兄のメッセージに、華はすぐさま返信する。
《何もないよ!なんで?》
《暇なら、買い物に付き合って?》
《OK!(猫のスタンプ) いいよ!なに買いに行くの?》
《服》
《服! じゃぁ、私のも買って~!》
《いいよ。買ってやるから、ちょっと協力して》
ん? 協力?──と、また兄には珍しい返事が返ってきて、華は再び首を傾げた。だが、その後に続いた言葉に、華は
「ぎゃああああぁぁぁぁ!!!」
「え!? どうしたの華!?」
いきなり悲鳴を上げた華に、その瞬間、葉月だけじゃなく、教室中が驚いた。
「どうしたの、神木さん!」
「何かあったの!?」
「あ! うんん。なんでもない! ごめんね、いきなり叫んで!」
突然、喚いたことを詫び、華は申し訳なさそうに謝るが、その後、葉月にグッと近づいた華は、葉月の耳元でコソコソと話し始める。
「ねぇ、葉月、明日空いてる? できたら、買い物付き合って、私だけじゃ荷が重すぎる!!!」
「え? 荷が重いって、どういう」
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「いや、待って。何が始まろうとしてるの?」
まるで、世界レベルの秘密を知ってしまったかのように危機迫る華に、葉月は「誓う」といいつつも、ゴクリと息を飲んだ。
飛鳥さんのメッセージには、何が書かれていたのか?緊張の面持ちで、華の言葉を待つ。
すると華は、葉月の耳元に、これでもかと唇を近づけたあと
「あのね。明日一緒に、お兄ちゃんの女装服を、選びに行って欲しいの」
「へ??」
お兄ちゃんの──女装服??
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