神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

文字の大きさ
381 / 554
第6章 お花見と修羅場

第359話 お兄ちゃんと修羅場

しおりを挟む

「飛鳥、何やってんだ、お前!!」

 隆臣の怒号が響けば、あかりは青ざめた。

 目の前には、飛鳥の首根っこを掴み、困惑と同時に怒りを露わにする隆臣の姿があって

(ど、どうしよう……!)

 これは確実に、浮気だと思われている!

 いや、でも女の子に興味がないなら、浮気にはならない!?

 同性同士の恋愛事情が、全く分からないあかりには、この場をどう対処すればいいのか、よく分からなかった。

 だが、とにもかくにも、誤解を解かなくては!
 そう思ったあかりは、慌てて隆臣を静止する。

「た、橘さん! これは、違うんです!」

「え? 違う?」

「はい。神木さん、具合が悪いみたいで、ちょっと寄りかかられてただけなんです」

「よ、寄りかかられてたって……」

 どう見ても、ようにしか見えなかった。

 そう、一瞬、告白でもして、両思いにでもなったのかとおもった。

 だが、隆臣は先程、源さんと遭遇し、既に飛鳥が酒を飲まされていることを知っていた。

 それ故に、心配になり必死に探しまわったわけなのだが、時すでに遅し!

 隆臣が飛鳥を見つけた時には、この酔っぱらいは、しっかり好きな女の子にセクハラをしている最中だった。

「あかりさん、今は飛鳥の肩をもたなくていいです。変なところ触られたり、変なこと言われたりしてませんか?」

「え、いえ、大丈夫です! 本当に、寄りかかられたけで、匂いは嗅がれましけど、変なことは何もされてません!」

「匂い!? え!? それ、立派なセクハラですよ、あかりさん!!」

 この酔っぱらい、何やってんだ!?
 まさに、隆臣はそんな心境だった。

 だが、あかりはあかりで、二人の間に亀裂が入りそうで心配で仕方なかった。

「橘さん、どうか神木さんのこと怒らないであげてください! なにより神木さんは、私には一切興味ありませんし、これは、ただの同性同士のじゃれ合いだと思ってください! 私と神木さんの間には、一切なにもありません。あるのは友情だけです! だから、どうか心配しないでください!!」

「…………」

 必死に浮気でない旨を、隆臣に力説するが、そのあかりの言葉に、隆臣はなんとも言えない気持ちになった。

 私には一切興味がない!
 同性同士のじゃれ合い!
 あげくのはてに、あるのは友情だけ!

(マジか……今、確実に抱きしめられてたのに、全く意識してないぞ)

 飛鳥は、誰もが振り返るほどの、絶世の美男子だ。そんなやつに、抱きしめられたら、(あかりさんは、寄りかかられてだけと言うが)、大抵の女の子は、顔を真っ赤にして恥じらうだろう。

 だが、あかりさんは、恥じらうどころか、同性同士のじゃれ合いなどといった。

 つまりこれは、確実に飛鳥をとして見てない!!

(……本当に、飛鳥のこと友達としか思ってないんだな)

 ちょっと可哀想になってきた。

 本気で好きな女の子に、男とすら見られていないなんて……

「あの、神木さんは、大丈夫でしょうか?」

「え、あぁ……」

 すると、あかりが再度、飛鳥を心配そうに見つめてきて、隆臣は、あらためて飛鳥に向き直る。

 頬を赤くして、呆然としたさまは、まさに酔ったときの飛鳥の症状だ。

 弱々しくて、素直で、可愛らしさが限界値まで高まったその姿は、まさに、無防備で愛らしい産まれたての小鹿。

 だが、あかりは飛鳥が酔っているとは思っていないようで、どうやら体調が悪いと勘違いしているらしい。

「あかりさん、飛鳥は酔ってるだけだから、心配しなくていいですよ」

「え、酔ってるんですか?」

「はい。さっき酒を飲まされたらしくて。おぃ、飛鳥、大丈夫か? ここで寝るなよ!」

「ぅにゃ……?」

 話を全く聞いていないのか、うつらうつら船を漕ぎ出した飛鳥をみて、隆臣が揺すり起こせば、飛鳥はまるで猫のような声を上げた。

(ぅにゃ?じゃねーよ、全く)
(なんか、神木さん。すごく可愛い)

 苛立つ隆臣と、その珍しい姿を見て、キュンとするあかり。そう、それはまるで、猫のように愛でたくなる可愛さだ。

(神木さんて、酔うとこんなにかわいくなっちゃうのね。これなら、橘さんも好きになっちゃうよね)

(飛鳥のやつ、こんな姿あかりさんに見せて、状況悪化してないか?)

 悪化もなにも、飛鳥と隆臣が付き合っていると勘違いしているあかりの誤解は、より深まるばかり。

「あの、あかりさん、とりあえず、飛鳥が色々すみませんでした。今日はこのまま寝ると思うので、また後日、謝らせにいきます」

「え! いいですよ! このことは、神木さんには話さないでください! 酔っぱらいを介抱していただけの話ですし、それに、また気に病んで、菓子折りもってお詫びしに来ても困りますから!」

 そう、前にも衝動的に抱きしめてしまって、菓子折りもって謝りに来た飛鳥。

 酔って、セクハラしましたなんて聞かされたら、今度は土下座までしに来そう!

「あの、今日は私、とても楽しかったんです。これも全て、神木さんが、お花見に誘ってくれたおかげです。私怒ってもいませんし、あまり荒立てないでください」

 あと、絶対に別れないでください!

 これが、あかりには一番切実な話だった。

 口には出来ないが、自分のせいで別れ話に発展さしたら、もう目もあてられない!

「あ、そうだ! 私、華ちゃんに連絡しますね!」

「え、あ……」

 すると、あかりはすぐさま話を終わらせ、スマホを手にメッセージを打ち始めた。



 ◇◇◇


 そして、華と蓮はと言うと……

「えー!! 飛鳥兄ぃに、お酒飲ませたの!?」

 ちょうど源さんと出くわした双子は、まさに衝撃の事実を聞かされていた!

 なんと、あの超絶お酒に弱くて、超絶色っぽくなる兄が、お酒を飲まされたというのだ!

「ちょっと、ちょっと、源さんなにしてんの!? 飛鳥兄ぃ、お酒めちゃくちゃ弱いんだから!」

「あれ~そうだったのか? ここでは、普通にのんで、みんな待ってるから、そろそろ行くね~って、いつも通り帰っていったんだけどなー?」

「え!? そうなの! いつ、いつ離れたの!?」

「15分ほど前かなー」

 どうやら、源さんたちの前で、無様な姿は晒していないらしい。

 すると、そのタイミングで、あかりからLIMEが届いた。

 そしてそこには「神木さん、見つかりましたよ」と書かれていた。

「蓮! 見つかったって! しかも、あかりさんから!」

「え!? 大丈夫かよ、兄貴! あかりさんに、あんな姿見せたら、まずいんじゃない!?」

「とにかく急ごう!!」

 そんなこんなで、双子たちは源さんたちに挨拶をすると、バタバタと駆け出して行ったのだが

(あのイケメン、酔うとどうなるんだろう)
(超気になる……!)

 源さんのお孫さんたちは、あの超絶綺麗なイケメンの酔った姿を拝めなかったと、少しだけ残念な気持ちになったとか。

 ちなみに、お留守番中の狭山&エレナと、飛鳥を探していた、大河はと言うと

「狭山さん! どうしよう! 神木くんがみつからないんです! これはもしや事件では!?」

「うそ! 狭山さん、今すぐ警察に連絡しよう!!」

「いやいや、エレナちゃん、大河くん。美人だけど、あの子、20歳の男だからね?」

 心配する大河とエレナを、冷静に宥める狭山。


 こうして、みんなでいったお花見は、飛鳥とあかりを進展させるどころか、ただただ誤解を深めただけに終わってしまい、グダグダなお花見と化してしまったのでした。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...