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第6章 お花見と修羅場
第359話 お兄ちゃんと修羅場
しおりを挟む「飛鳥、何やってんだ、お前!!」
隆臣の怒号が響けば、あかりは青ざめた。
目の前には、飛鳥の首根っこを掴み、困惑と同時に怒りを露わにする隆臣の姿があって
(ど、どうしよう……!)
これは確実に、浮気だと思われている!
いや、でも女の子に興味がないなら、浮気にはならない!?
同性同士の恋愛事情が、全く分からないあかりには、この場をどう対処すればいいのか、よく分からなかった。
だが、とにもかくにも、誤解を解かなくては!
そう思ったあかりは、慌てて隆臣を静止する。
「た、橘さん! これは、違うんです!」
「え? 違う?」
「はい。神木さん、具合が悪いみたいで、ちょっと寄りかかられてただけなんです」
「よ、寄りかかられてたって……」
どう見ても、抱きしめているようにしか見えなかった。
そう、一瞬、告白でもして、両思いにでもなったのかとおもった。
だが、隆臣は先程、源さんと遭遇し、既に飛鳥が酒を飲まされていることを知っていた。
それ故に、心配になり必死に探しまわったわけなのだが、時すでに遅し!
隆臣が飛鳥を見つけた時には、この酔っぱらいは、しっかり好きな女の子にセクハラをしている最中だった。
「あかりさん、今は飛鳥の肩をもたなくていいです。変なところ触られたり、変なこと言われたりしてませんか?」
「え、いえ、大丈夫です! 本当に、寄りかかられたけで、匂いは嗅がれましけど、変なことは何もされてません!」
「匂い!? え!? それ、立派なセクハラですよ、あかりさん!!」
この酔っぱらい、何やってんだ!?
まさに、隆臣はそんな心境だった。
だが、あかりはあかりで、二人の間に亀裂が入りそうで心配で仕方なかった。
「橘さん、どうか神木さんのこと怒らないであげてください! なにより神木さんは、私には一切興味ありませんし、これは、ただの同性同士のじゃれ合いだと思ってください! 私と神木さんの間には、一切なにもありません。あるのは友情だけです! だから、どうか心配しないでください!!」
「…………」
必死に浮気でない旨を、隆臣に力説するが、そのあかりの言葉に、隆臣はなんとも言えない気持ちになった。
私には一切興味がない!
同性同士のじゃれ合い!
あげくのはてに、あるのは友情だけ!
(マジか……今、確実に抱きしめられてたのに、全く意識してないぞ)
飛鳥は、誰もが振り返るほどの、絶世の美男子だ。そんなやつに、抱きしめられたら、(あかりさんは、寄りかかられてだけと言うが)、大抵の女の子は、顔を真っ赤にして恥じらうだろう。
だが、あかりさんは、恥じらうどころか、同性同士のじゃれ合いなどといった。
つまりこれは、確実に飛鳥を男として見てない!!
(……本当に、飛鳥のこと友達としか思ってないんだな)
ちょっと可哀想になってきた。
本気で好きな女の子に、男とすら見られていないなんて……
「あの、神木さんは、大丈夫でしょうか?」
「え、あぁ……」
すると、あかりが再度、飛鳥を心配そうに見つめてきて、隆臣は、あらためて飛鳥に向き直る。
頬を赤くして、呆然としたさまは、まさに酔ったときの飛鳥の症状だ。
弱々しくて、素直で、可愛らしさが限界値まで高まったその姿は、まさに、無防備で愛らしい産まれたての小鹿。
だが、あかりは飛鳥が酔っているとは思っていないようで、どうやら体調が悪いと勘違いしているらしい。
「あかりさん、飛鳥は酔ってるだけだから、心配しなくていいですよ」
「え、酔ってるんですか?」
「はい。さっき酒を飲まされたらしくて。おぃ、飛鳥、大丈夫か? ここで寝るなよ!」
「ぅにゃ……?」
話を全く聞いていないのか、うつらうつら船を漕ぎ出した飛鳥をみて、隆臣が揺すり起こせば、飛鳥はまるで猫のような声を上げた。
(ぅにゃ?じゃねーよ、全く)
(なんか、神木さん。すごく可愛い)
苛立つ隆臣と、その珍しい姿を見て、キュンとするあかり。そう、それはまるで、猫のように愛でたくなる可愛さだ。
(神木さんて、酔うとこんなにかわいくなっちゃうのね。これなら、橘さんも好きになっちゃうよね)
(飛鳥のやつ、こんな姿あかりさんに見せて、状況悪化してないか?)
悪化もなにも、飛鳥と隆臣が付き合っていると勘違いしているあかりの誤解は、より深まるばかり。
「あの、あかりさん、とりあえず、飛鳥が色々すみませんでした。今日はこのまま寝ると思うので、また後日、謝らせにいきます」
「え! いいですよ! このことは、神木さんには話さないでください! 酔っぱらいを介抱していただけの話ですし、それに、また気に病んで、菓子折りもってお詫びしに来ても困りますから!」
そう、前にも衝動的に抱きしめてしまって、菓子折りもって謝りに来た飛鳥。
酔って、セクハラしましたなんて聞かされたら、今度は土下座までしに来そう!
「あの、今日は私、とても楽しかったんです。これも全て、神木さんが、お花見に誘ってくれたおかげです。私怒ってもいませんし、あまり荒立てないでください」
あと、絶対に別れないでください!
これが、あかりには一番切実な話だった。
口には出来ないが、自分のせいで別れ話に発展さしたら、もう目もあてられない!
「あ、そうだ! 私、華ちゃんに連絡しますね!」
「え、あ……」
すると、あかりはすぐさま話を終わらせ、スマホを手にメッセージを打ち始めた。
◇◇◇
そして、華と蓮はと言うと……
「えー!! 飛鳥兄ぃに、お酒飲ませたの!?」
ちょうど源さんと出くわした双子は、まさに衝撃の事実を聞かされていた!
なんと、あの超絶お酒に弱くて、超絶色っぽくなる兄が、お酒を飲まされたというのだ!
「ちょっと、ちょっと、源さんなにしてんの!? 飛鳥兄ぃ、お酒めちゃくちゃ弱いんだから!」
「あれ~そうだったのか? ここでは、普通にのんで、みんな待ってるから、そろそろ行くね~って、いつも通り帰っていったんだけどなー?」
「え!? そうなの! いつ、いつ離れたの!?」
「15分ほど前かなー」
どうやら、源さんたちの前で、無様な姿は晒していないらしい。
すると、そのタイミングで、あかりからLIMEが届いた。
そしてそこには「神木さん、見つかりましたよ」と書かれていた。
「蓮! 見つかったって! しかも、あかりさんから!」
「え!? 大丈夫かよ、兄貴! あかりさんに、あんな姿見せたら、まずいんじゃない!?」
「とにかく急ごう!!」
そんなこんなで、双子たちは源さんたちに挨拶をすると、バタバタと駆け出して行ったのだが
(あのイケメン、酔うとどうなるんだろう)
(超気になる……!)
源さんのお孫さんたちは、あの超絶綺麗なイケメンの酔った姿を拝めなかったと、少しだけ残念な気持ちになったとか。
ちなみに、お留守番中の狭山&エレナと、飛鳥を探していた、大河はと言うと
「狭山さん! どうしよう! 神木くんがみつからないんです! これはもしや事件では!?」
「うそ! 狭山さん、今すぐ警察に連絡しよう!!」
「いやいや、エレナちゃん、大河くん。美人だけど、あの子、20歳の男だからね?」
心配する大河とエレナを、冷静に宥める狭山。
こうして、みんなでいったお花見は、飛鳥とあかりを進展させるどころか、ただただ誤解を深めただけに終わってしまい、グダグダなお花見と化してしまったのでした。
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