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第3章 バレンタインと告白
第329話 あかりと神木家
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「こんにちは、神木さん」
「え?」
突然、現れたあかりに、飛鳥は瞠目する。
だが、あかりの隣にエレナがいるのを見て、すぐさま察したらしい。飛鳥は、再びあかりをみつめると
「もしかして、送ってきてくれたの?」
「はい。もう、暗くなってきたので」
時刻は、夕方5時前。
真冬のこの季節、世間はもう薄暗い。
飛鳥は、エレナを心配し、ここまで送り届けてくれたのだと理解すると、今度はエレナを見つめた。
「エレナ、あかりの家にいってたんだ。友達の家っていってたから、てっきり同級生かと……」
さっき「迎えに行こうか」と連絡した飛鳥。だが、まさか、それがあかりの家だったとは。すると、エレナは少しだけ頬を赤らめながら、手にした袋を差し出してきた。
「あの……実は、これを作っていて」
「?」
さしだされたのは、可愛いピンクの紙袋だった。
そして、それを受け取れば、中にはケーキの箱が入っていた。
「え、ケーキ作ってきたの!?」
「う、うん。私、飛鳥さんたちにすごくお世話になったから、なにかお礼をしたいと思って、あかりお姉ちゃんに作り方を教わって、自分でつくったの」
「自分で!?」
なんて、いじらしい! お世話になったお礼に、わざわざケーキを作ってきてくれるなんて!
「エレナちゃん、お菓子作りすごく上手でしたよ。初めてとは思えないくらい、手際もよくて」
すると、今度は、あかりがそう言って、飛鳥は、思いのほか感動してしまった。
「そっか、ありがとうエレナ。ケーキ作れるなんて凄いな。早速、みんなで食べようか。あかりも、どうぞ」
「え?」
瞬間、飛鳥がエレナの頭を撫でながら、そういえば、あかりは驚き、目を瞬かせた。
「え、いえ、私はただ、エレナちゃんを送り届けに来ただけで……っ」
「そういうなよ。せっかくエレナが作ってくれたんだし」
「そうだよ、お姉ちゃん! 私、お姉ちゃんにも食べて欲しい!」
「……っ」
金髪の兄妹から、食べていけと説得され、あかりは困り果てる。だが、エレナのこの目を見れば、流石にNOとは言えず……
「あ、じゃぁ……お邪魔しても?」
「いいよ。どうぞ、あがって」
伺うあかりを見て、飛鳥がにっこり笑って答えれば、エレナは、その横で、嬉しそうに笑った。
◇
◇
◇
「あー、あかりさんだ!」
そして、その後、三人がリビングに行けば、あかりが来たのが見えて、華がパタパタと駆け寄ってきた。
なんだかんだと華は、あれからよくあかりとスーパーで会うらしく、こちらは、こちらで酷くあかりに懐いていた。
「あかりさん。どうしたんですか!?」
「俺が誘ったんだよ。エレナが、あかりの家でケーキ作って来てくれたから、みんなで食べようと思って」
「え!? ケーキ!?」
飛鳥の言葉に、華がケーキの袋を受け取り、驚きの声をあげる。
「ウソ、エレナちゃん。一体なんのケーキを!?」
「えと、ガトーショコラだよ」
「ガトーショコラって……凄いよ、エレナちゃん! 小四でガトーショコラ作るなんて、天才なの!?」
「え!? ち、違うよ! あかりお姉ちゃんの教え方がよかったからだよ!」
「そんなことないよ! 私、飛鳥兄ぃに教わっても全然上手く出来なかったもん! それとも、飛鳥兄ぃの教え方が悪いのかな!」
「は? なんだって?」
華の発言に、にこやかな飛鳥が、鋭くつっこむ。まさか、自分の教え方のせいにされるなんて!?
「なんで、俺のせいになるんだよ」
「ていうか、片や小4でガトーショコラ作る妹と、片や高1で、兄にクッキー作らせる妹……同じ妹とは思えないよね」
「蓮、そこ比べてやるな」
そして、その横で、蓮がぽつりと呟けば、飛鳥が苦笑いをうかべた。
まさに、さっきまで兄にクッキーを作らせていた華とは雲泥の差だ。だが、ここは比べるべきではない!
なぜなら、華だって、昔にくらべたら大分、料理が上手になってきたから!
「あれ、あかりちゃんだ?」
すると、そのタイミングで、今度は、父の侑斗が欠伸をしながら、リビングにやってきた。
昨夜から朝にかけて、仕事をしていた侑斗は、昼過ぎから蓮の部屋で仮眠をとっていた。
「こんにちは、お邪魔してます」
侑斗がリビングに入るなり、あかりが丁寧にお辞儀をする。すると、それを見て侑斗は
「いらっしゃい。正月ぶりだねー」
「はい」
「お父さん! 今日、エレナちゃんが、私たちのためにガトーショコラ作ってきてくれたの! みんなで一緒に食べよう!」
「なんだと、ガトーショコラ!? 凄いな、エレナちゃん!」
「えへへ……ありがとう」
侑斗が褒めれば、エレナは更に頬を緩ませ、幸せそうな顔をした。
「あ、そうだ。あかりちゃんは、今日は、用事とかあったりするの?」
すると、侑斗は、またあかりに語りかけ
「いえ、特には」
「そうか。なら、今日は、うちで夕飯を食べていきなさい」
「え?」
「あ、それいいね! じゃぁ、ケーキは食後のデザートにする?」
「え、ちょっと待って華ちゃん! いくらなんでもそこまでは……っ」
「えー、いいじゃないですか~。みんなで食べた方が賑やかでいいし!」
「でも……」
詰め寄る華に、あかりが申し訳なさそうに、飛鳥を見つめた。本当に、エレナを送り届けるだけのつもりだったのかもしれない。だが、みんなの意見には飛鳥も賛成で
「用事がないなら、食べていけば」
「そうですか……あの、じゃぁ、よろしくお願いします。あと、なにかお手伝いできることがあれば、言ってください!」
「そんなの気にしなくていいよ。あかりちゃんは、お客様なんだし、飛鳥と話でもしてて」
「そうですよ! 二人でゆっくりしてて下さいね!」
すると、あかりは華に背中を押され、飛鳥の前にたたされた。再び目が合えば、なんだか少しだけ気恥ずかしくなってくる。
(あかりがうちにいるって、なんだか、変な感じだな……)
前にあかりが家に来た時は、まるで隠すように部屋の中に押し込んだ。だけど、今こうして、家族にうけいれられているあかりをみたら、素直に嬉しくなった。だが、あかりは
「あの、神木さんと話すことなんて……」
「ん? なにそれ。俺とは話したくないってこと?」
「そ、そんなことはないですが! 改めて話と言われると」
「まぁ、無理に話さなくてもいいし、ゆっくりしてればいいよ。帰りも、俺が送っていくし」
「え? それは、さすがに」
「でも、夕飯食べて、ケーキまで食べたら、帰り遅くなるだろ?」
「そうですけど、大丈夫です!一人で帰れます!」
「そこは素直に『ありがとう』でいいんじゃないの?」
「っ……でも、そこまでしてもらうのは」
「いいよ。むしろ送らせて。女の子が一人で夜道を歩くものじゃないし」
そう言って、また飛鳥が笑えば、あかりはしばらく考えたあと
「わかりました……では、お言葉に甘えて……っ」
明日は──バレンタイン。
これは、そんなバレンタイン前日の夜のお話です。
「え?」
突然、現れたあかりに、飛鳥は瞠目する。
だが、あかりの隣にエレナがいるのを見て、すぐさま察したらしい。飛鳥は、再びあかりをみつめると
「もしかして、送ってきてくれたの?」
「はい。もう、暗くなってきたので」
時刻は、夕方5時前。
真冬のこの季節、世間はもう薄暗い。
飛鳥は、エレナを心配し、ここまで送り届けてくれたのだと理解すると、今度はエレナを見つめた。
「エレナ、あかりの家にいってたんだ。友達の家っていってたから、てっきり同級生かと……」
さっき「迎えに行こうか」と連絡した飛鳥。だが、まさか、それがあかりの家だったとは。すると、エレナは少しだけ頬を赤らめながら、手にした袋を差し出してきた。
「あの……実は、これを作っていて」
「?」
さしだされたのは、可愛いピンクの紙袋だった。
そして、それを受け取れば、中にはケーキの箱が入っていた。
「え、ケーキ作ってきたの!?」
「う、うん。私、飛鳥さんたちにすごくお世話になったから、なにかお礼をしたいと思って、あかりお姉ちゃんに作り方を教わって、自分でつくったの」
「自分で!?」
なんて、いじらしい! お世話になったお礼に、わざわざケーキを作ってきてくれるなんて!
「エレナちゃん、お菓子作りすごく上手でしたよ。初めてとは思えないくらい、手際もよくて」
すると、今度は、あかりがそう言って、飛鳥は、思いのほか感動してしまった。
「そっか、ありがとうエレナ。ケーキ作れるなんて凄いな。早速、みんなで食べようか。あかりも、どうぞ」
「え?」
瞬間、飛鳥がエレナの頭を撫でながら、そういえば、あかりは驚き、目を瞬かせた。
「え、いえ、私はただ、エレナちゃんを送り届けに来ただけで……っ」
「そういうなよ。せっかくエレナが作ってくれたんだし」
「そうだよ、お姉ちゃん! 私、お姉ちゃんにも食べて欲しい!」
「……っ」
金髪の兄妹から、食べていけと説得され、あかりは困り果てる。だが、エレナのこの目を見れば、流石にNOとは言えず……
「あ、じゃぁ……お邪魔しても?」
「いいよ。どうぞ、あがって」
伺うあかりを見て、飛鳥がにっこり笑って答えれば、エレナは、その横で、嬉しそうに笑った。
◇
◇
◇
「あー、あかりさんだ!」
そして、その後、三人がリビングに行けば、あかりが来たのが見えて、華がパタパタと駆け寄ってきた。
なんだかんだと華は、あれからよくあかりとスーパーで会うらしく、こちらは、こちらで酷くあかりに懐いていた。
「あかりさん。どうしたんですか!?」
「俺が誘ったんだよ。エレナが、あかりの家でケーキ作って来てくれたから、みんなで食べようと思って」
「え!? ケーキ!?」
飛鳥の言葉に、華がケーキの袋を受け取り、驚きの声をあげる。
「ウソ、エレナちゃん。一体なんのケーキを!?」
「えと、ガトーショコラだよ」
「ガトーショコラって……凄いよ、エレナちゃん! 小四でガトーショコラ作るなんて、天才なの!?」
「え!? ち、違うよ! あかりお姉ちゃんの教え方がよかったからだよ!」
「そんなことないよ! 私、飛鳥兄ぃに教わっても全然上手く出来なかったもん! それとも、飛鳥兄ぃの教え方が悪いのかな!」
「は? なんだって?」
華の発言に、にこやかな飛鳥が、鋭くつっこむ。まさか、自分の教え方のせいにされるなんて!?
「なんで、俺のせいになるんだよ」
「ていうか、片や小4でガトーショコラ作る妹と、片や高1で、兄にクッキー作らせる妹……同じ妹とは思えないよね」
「蓮、そこ比べてやるな」
そして、その横で、蓮がぽつりと呟けば、飛鳥が苦笑いをうかべた。
まさに、さっきまで兄にクッキーを作らせていた華とは雲泥の差だ。だが、ここは比べるべきではない!
なぜなら、華だって、昔にくらべたら大分、料理が上手になってきたから!
「あれ、あかりちゃんだ?」
すると、そのタイミングで、今度は、父の侑斗が欠伸をしながら、リビングにやってきた。
昨夜から朝にかけて、仕事をしていた侑斗は、昼過ぎから蓮の部屋で仮眠をとっていた。
「こんにちは、お邪魔してます」
侑斗がリビングに入るなり、あかりが丁寧にお辞儀をする。すると、それを見て侑斗は
「いらっしゃい。正月ぶりだねー」
「はい」
「お父さん! 今日、エレナちゃんが、私たちのためにガトーショコラ作ってきてくれたの! みんなで一緒に食べよう!」
「なんだと、ガトーショコラ!? 凄いな、エレナちゃん!」
「えへへ……ありがとう」
侑斗が褒めれば、エレナは更に頬を緩ませ、幸せそうな顔をした。
「あ、そうだ。あかりちゃんは、今日は、用事とかあったりするの?」
すると、侑斗は、またあかりに語りかけ
「いえ、特には」
「そうか。なら、今日は、うちで夕飯を食べていきなさい」
「え?」
「あ、それいいね! じゃぁ、ケーキは食後のデザートにする?」
「え、ちょっと待って華ちゃん! いくらなんでもそこまでは……っ」
「えー、いいじゃないですか~。みんなで食べた方が賑やかでいいし!」
「でも……」
詰め寄る華に、あかりが申し訳なさそうに、飛鳥を見つめた。本当に、エレナを送り届けるだけのつもりだったのかもしれない。だが、みんなの意見には飛鳥も賛成で
「用事がないなら、食べていけば」
「そうですか……あの、じゃぁ、よろしくお願いします。あと、なにかお手伝いできることがあれば、言ってください!」
「そんなの気にしなくていいよ。あかりちゃんは、お客様なんだし、飛鳥と話でもしてて」
「そうですよ! 二人でゆっくりしてて下さいね!」
すると、あかりは華に背中を押され、飛鳥の前にたたされた。再び目が合えば、なんだか少しだけ気恥ずかしくなってくる。
(あかりがうちにいるって、なんだか、変な感じだな……)
前にあかりが家に来た時は、まるで隠すように部屋の中に押し込んだ。だけど、今こうして、家族にうけいれられているあかりをみたら、素直に嬉しくなった。だが、あかりは
「あの、神木さんと話すことなんて……」
「ん? なにそれ。俺とは話したくないってこと?」
「そ、そんなことはないですが! 改めて話と言われると」
「まぁ、無理に話さなくてもいいし、ゆっくりしてればいいよ。帰りも、俺が送っていくし」
「え? それは、さすがに」
「でも、夕飯食べて、ケーキまで食べたら、帰り遅くなるだろ?」
「そうですけど、大丈夫です!一人で帰れます!」
「そこは素直に『ありがとう』でいいんじゃないの?」
「っ……でも、そこまでしてもらうのは」
「いいよ。むしろ送らせて。女の子が一人で夜道を歩くものじゃないし」
そう言って、また飛鳥が笑えば、あかりはしばらく考えたあと
「わかりました……では、お言葉に甘えて……っ」
明日は──バレンタイン。
これは、そんなバレンタイン前日の夜のお話です。
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