神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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第14章 家族の思い出

第195話 妹と女子大生

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 その後、大河から、たこ焼きを買ったあと、箸巻きやポテト、そのほかに飲み物などを買った三人は、空いていた脇道のベンチに腰掛けた。

 二人がけのベンチに、華を真ん中に、三人寄り添って座る。

「華、最後の食べていいよ」

 すると、最後に残ったたこ焼きを、飛鳥が華の口元に持ってきた、華はそれをパクッと口にした。

「ん、ありがとう」

「それより、兄貴、あんな友達がいたんだ」

 すると、蓮が飛鳥にポテトを差し出しながらそう言って、飛鳥はそれを一本手に取りながら、大河のことを思い出す。

「武市くん、アレさえなければ、いい人なんだけどね」

 さっきの会話を思い出し、飛鳥は苦笑いを浮かべた。まさか、また女装しなくてはならないなんて!
 もはや罰ゲームみたいなものだ。

「でも残念! 私、珍しく家族以外に助けられたから、一瞬、運命の人かと思っちゃったのに!」

「はぁ!? 運命って、武市くんと!? それだけは絶対やめて!?」

 華の言葉に、飛鳥が珍しく慌てふためく。

 勝手に人の妹と、どんなフラグ立ててるんだ。
 申し訳ないが、あの信者だけは認めたくない!

「大丈夫だよ、兄貴。華の好きなタイプは、隆臣さんだし、たぶん武市さんとは真逆のタイプだよ」

「うーん。それは、大丈夫なのか、大丈夫じゃないのか、イマイチ複雑な回答かな」

「ご馳走様でした~」

 すると、飛鳥が苦笑いを浮かべる隣で、華がパンと手を合わせた。そして、たぶ終わったトレイを、綺麗に纏めると

「はい、蓮! ゴミ宜しく♡」

「はぁ、なんで俺が!?」

「だって、私ひとりじゃない行かせてくれないし、飛鳥兄ぃが行ったら、絶対捕まるし」

「…………」

 捕まる──とは、言わずとも分かるだろう。兄のこの美貌に見せられた、お姉様方にだ。

「はぁ。わかったよ」

 すると、それを受けとった蓮は、境内の脇に設置された屑籠まで走っていった。
 そして残された華と飛鳥は、二人ベンチに腰掛け、のんびり雑談。

「ねぇ、飛鳥兄ぃ、花火って何時から?」

「えーと、9時」

「ふーん、今何時?」

「今は、8時すぎかな。あと、1時間くらいあるけど、どうする? 帰る?」

「はぁ!? せっかく来たんだし、花火見ていこうよ!」

 兄の腕にぎゅっと抱きつき、華が顔を近づけそう言うと、飛鳥はいつも通り「まー、そうだね」と、相槌を打った。すると

「ねー、あの人、かっこいい~」

 と、飛鳥を見つめヒソヒソと話す声が聞こえてきた。

 例のごとく、兄はよく目立つ。しかも、今日は浴衣姿。金髪で浴衣が似合うなんて、なかなかないのだが、なぜか似合ってしまうのが、この兄!
 きっと兄にかかれば、和洋折衷どんな服でも着こなしてしまうのだろう。

「ねぇ、写真、お願いしてみる?」

「えー、ダメだよ。だって、隣に彼女いるじゃん!」

((え? 彼女?))

 こそこそと聞こえて漏れてきた声。だが、その声に、飛鳥と華は、同時に首を傾げた。

「あ!? 私か!!」

 すると、やっとのこと、その彼女が、自分のことだと気づいたらしい、華は、抱きついていた兄から離れようと、手を離すが……

「いいよ、このままで」
「え?」

 だが、そんな華の手を掴んで、飛鳥が華を見つめた。

「こうしてた方が、ナンパ避けになるし」

「何それ!?」

 まさかのナンパ避け!?
 確かに、彼女が横にいる男を、わざわざナンパしてくる人はいないだろうが

「私、妹だよ。バレるに決まってるじゃん」

「大丈夫だよ。俺たち全然似てないし、兄妹には見えないよ」

「っ……」

 ──兄妹には見えない。
 その言葉に、なぜか胸の奥がズキリとなった。

 そんなの子供の頃から、言われてきたことだ。
 こうして腕でを組んでいたら、恋人同士に間違われてしまうほど、自分と兄は──似ても似つかない。

「神木くーん!!」
「……!」

 すると、またもや、黄色い声が聞こえてきて、華と飛鳥が、二人揃ってそちらをみれば、女子大生くらいの女の子たちが4人、わらわらと飛鳥の元に、駆け寄ってきた。

「こんばんは~! まさか神木くんに会えるなんて」

 どうやらその子達は、飛鳥が通う大学の学生だったようだった。飛鳥は、その見知った顔に、にこやかに挨拶を返す。

「みんな、こんばんは」

「神木くんの浴衣姿、素敵。ちょう似合ってる~」

「そうかな。ありがとう」

「ねえねぇ、今から、うちらと回らない?」

「え?」

 四人が、綺麗な浴衣姿で飛鳥に擦り寄ると、華は咄嗟に兄の隣から離れた。

 兄がモテるのは、何度と見てきた。
 ある意味、見慣れた光景だ。

 だけど、こうして女の子たちが擦り寄ってきても、兄は、いつも、その誘いを断って、家族との約束を優先させる。
 
「ゴメンね、今日は、妹たちと一緒だから」

 すると、案の定、兄は断って、華はその光景をただただ見つめた。
 
「妹たちって、双子の?」

「うん」

「もう高校生なんでしょ? うちらと回ったあと、また合流すればいいじゃん!」

「ちょ……っ」

 だが、女子たちは、しつこく誘ってきて、飛鳥は、表情を曇らせた。そして、そのタイミングで、今度は蓮が戻って来た。

「なにこれ。兄貴、結局捕まってるじゃん?」

 目の前の光景を見て、顔を青くする蓮。だが、蓮の問いかけに、華は一切答えることはなく。

「ねぇ、神木くん、一緒に回ろうよー」

「だから、一緒には回れないって」

「あの!」

 すると、思ったよりしつこい女の子たちを飛鳥がなだめる中、ずっと黙っていた華が急に声を上げた。

 いきなり、どうしたのか。飛鳥と蓮が華を見やれば、華は、とんでもない提案をしてきた。

「私たちなら、大丈夫です! だから、お兄ちゃん、その人達と回ってくれば!」

「は?」

「わー、いいの! ありがとう!」

「……いこう、蓮!」

「ちょ、華!?」

 蓮の腕を強引に引くと、華は、その場から駆け出した。そんな華の後ろ姿をみつめ、飛鳥は眉をひそめる。

(華のやつ、なんで……っ)


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