神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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第13章 双子と遊園地

第183話 苛立ちと順番待ち

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「結構、並んでるね~」

 その後、お化け屋敷についた四人は、さっきのドタバタなど、まるで嘘のように、いつもの穏やかな雰囲気に戻っていた。

「ねー、私と葉月が先に入るから、蓮と榊君はあとから来てね!」

 すると、丸っと気を取り直した華が、蓮と航太にはなしかければ、さすがに哀れに思ったのか、葉月が助け船をだしてきた。

「ねぇ、華。四人で一緒に入るってのはダメなの?」

「え? 四人で?」

「だってさ。何も二組に分かれなくても、四人で一緒に入るという選択肢も」

「それは、嫌!!」

「え!?」

 だが、華は、その提案を真っ向から拒絶して

「嫌って、なんで!?」

「だってー、蓮が悲鳴あげたら、私まで怖くなっちゃうもん。だから、蓮とは入りたくない!」

「お前、悲鳴なんてあげるかよ!? てか、意気込んでたくせに、めちゃくちゃ人任せだな!!」

 はっきり拒否る華に、叫ぶ蓮。

 そして、その人任せの人選に選ばれてしまった航太くんは、ただ傍観していた。とはいえ、元から蓮と、二人で入るつもりで来ているので、なんてこともないのだが……だが、人任せなどと言われ、華は少し申し訳なく思ったらしい

「あの、榊くん、ごめんね。もしかして、嫌だった?」

「いや、大丈夫。別に嫌じゃねーよ。なんなら、蓮がおびえてる所、動画に撮っとこうか?」

「なにそれ、おもしろそう!!」

「おもしろくねーよ!」

「次の方、どうぞ~」

 すると、どうやら順番が回ってきたらしい。

 店員に案内され、華と葉月が手を振りながら、お化け屋敷の中に入っていくと、外で二人っきりになった蓮と航太は、一瞬静まりかえったあと

「で? お前は、なに怒ってんだよ」

「別に、怒ってないよ」

「いや、怒ってんだろ! めちゃくちゃ機嫌悪りーじゃん!」

 さっき、華が航太に抱きついてから、心なしか機嫌が悪くなった蓮。それを見て、航太がバツが悪そうな顔で問いかけた。

 いくら間違えられたとは言え、蓮は航太の気持ちを知っていた。しかも、あまり良くは思われてないのなら、仕方ないことかもしれない。

「ゴメン、悪かったって」

「別に、あれは華が悪いんだから、榊のせいじゃないよ」

 だが、実際に腹が立っているのは確かだった。

 あの時、華が航太の腕を組んだ瞬間。心の奥底で、微かにだが、黒い感情を抱いてしまった。

 まだ、どこかで『今』にしがみついてる。

 変わりたくないと、変わらないでいてほしいと、そんなことを、願ってる自分がいる。

(最低だな……俺)

 ほんの一瞬の事なのに、いつか華も、俺や兄ではなく、ほかの男と腕を組んで、歩き出す日が来るのかと思うと、無性に寂しくなった。

 いつかそんな日がくるって、わかってたはずなのに、望んでいたことのはずなのに

 それが、リアルに近づくと、とたんに怖くなる。

 もし、俺たち、兄妹弟の中の「誰か」が「家族以上に大切に思う人」を作ってしまったら、俺たちの関係は、どうなってしまうのだろう。

 誰かを好きになって、その人と結婚して、新しい家族を作る。

 そんな当たり前のことを、当たり前の「家族の未来の幸せ」を「嫌だ」と思ってしまった自分に──腹がたつ。

 いつか変わってしまう関係性。
 変わらなくてはならない、家族の形。

 はっきりと変わるための「最初の一歩」を踏み出すのは、一体、誰なんだろう。

 華か、俺か、それとも

 兄貴か───?





「はーい。次の方どうぞ~」

 瞬間、お化け屋敷の店員が放ったその言葉に、蓮はハッとする。

 そうだった!
 今は、そんなこと考えてる場合ではなかった!!

「ほら、行くぞ蓮」

 すると、順番が回ってきたため、航太が蓮に声をかけた。しかし、蓮は──

「ちょっと待って! まだ準備ができてない(心の)!! とりあえず、もう一回最後尾に並び直そう!」

「いや、もう諦めろよ」

 案外、往生際の悪い蓮。果たして、蓮はホラー恐怖症を克服することが出来るのか!?
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