神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜

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第7章 お姉ちゃんと美少女

第90話 お兄ちゃんと休日

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 5月も下旬に差しかかった、休日の朝。

 目を覚ました飛鳥は、布団からのそりと起き上がると、眠い目を擦りながら小さくあくびをする。

 視線を流し、室内を見渡せば、カーテンの隙間からは、キラキラと朝日が差し込んできていた。

 いつもより遅い起床。

 最近になり、休日は華が朝御飯を作るようになった。だからか、このところ休日は起床が遅い。

(なんか、慣れないな……)

 ベッドの上で、髪をかきあげながら呆然と思考を巡らせる。

 今までは、毎日一番に起きて、洗濯や朝食の準備をしていた。だからかこうして微睡む時間は、飛鳥にとっては、ある意味貴重だ。

 だが、長年の習慣もあってか、結局いつもの時間には目が覚め、二度寝するはめになる。

(やっぱり、二度寝するのはよくないなー。起きれないや……)

 ベッドから抜け出すと、飛鳥は目を覚ますため、カーテンを開けた。

 日の光が入り室内が明るくなると、外の空気を吸おうと、窓をあける。

 春の風がそよそよと吹き込むと、それは同時に飛鳥の長い髪を揺らし、優しい風が頬をかすめた。

 空を見あげれば、そこには、澄みわたるような青空が広がってた。


 ◇◇◇


「おはよう~飛鳥兄ぃ! 今日もいい天気だね~」

 その後、飛鳥が顔を洗いリビングに向かうと、外のベランダから華の声が聞こえてきた。

 どうやら華は洗濯物を干しているようで、朝日を浴びながら、濡れた服を一枚手に取り、ハンガーに通していた。

 飛鳥は、そんな華に気づくと、リビングを移動し、掃き出し窓から華の方へと顔を覗かせる。

「朝食は?」

「もう、できてるよ! 二人ともまだ起きてこないから、先に洗濯物を干そうと思って」

 華も蓮も、最近になり、よく飛鳥の手伝いをしてくれるようになった。

 そのなかでも洗濯は、今では華が毎日するようになり、こうして華が洗濯物を干す姿も、大分見慣れ始めてきたのだが……

「やる気になってるのはいいけど、無理して飛ばすとバテるぞ?」

「なにそれ、別に無理してないし! それに私だって、いつまでも……その、飛鳥兄ぃに……洗濯もの、干してもらうのも、ね?」

「…………」

 自分の可愛らしいワンピースのシワを伸ばしながらも、わずかに頬を赤らめた華。

 それを見て、華がなにが言いたいのかを何となく察した飛鳥は、ふむと目を細める。

「別に、妹の下着みても、なんの感情も湧かないから」

「なっ!? 別にそういう心配してないし!!」

「大体、今まで、ずっと俺に任せてたくせに、なに今更、 恥ずかしがってんの?」

「だ、だって、私も、もう高校生だし! それに、下着を見られるのは、やっぱり、恥ずかしいかなって……っ」

 そういって、顔を赤くして、兄から視線をそらす華。まー華も"お年ごろ"と、いうことなのだろう。

 だが、少し前までは、平然と兄に洗濯させていたくせに、本当に今更の話である。

「なに? 勝負下着でも用意してんの?」

「きゃぁぁぁ、なんてこと聞いてくんの!?」

「えー、だってそういいことなんじゃないの? 俺に見られちゃ困るような"恥ずかしい下着"があるの?」

「あるわけないでしょ!? 勝負下着とかないし! 勝負する相手もいないし! ていうか、この前、好きな人いないっていったよね!?」

「朝から、なんて話してんの?」

「あー、蓮おはよ♪」

 ベランダで何やら恥ずかしい話をしている兄と姉の声を聞いて、リビングに顔を出した蓮が怪訝な顔をうかべると、飛鳥は、寝ぼけ眼な蓮に、にこやかに挨拶をする。

「華が、勝負下着見られたくないから、俺に洗濯物干されたくないんだって」

「そんな下着、もってても使わないじゃん。 てか、もう少し胸デカくなってから考えろよ」

「ちょっとぉぉ! デリカシーどこに捨ててきた!? ほんっとに私、そんなんじゃないからッ!!」

 顔を真っ赤にして、涙まじりになる華。

 大人になるとか言いながらも、少しからかわれたくらいで、こんなにも可愛らしい反応をするのだ。

 飛鳥は、真っ赤になった妹をみて、どこか楽しそうな笑みを浮かべると、続けて華の頭を撫でてきた。

「ごめんごめん、華みたいな"お子様"にはまだ早かったね?」

「……っ」

 なんだ、この子供扱い!?

「ッお子様じゃないし!」

「ハイハイ。じゃお子様じゃない華ちゃん。 俺と蓮の下着も、宜しくね~♪」

「ちょっとぉぉ!! 本当、デリカシー今すぐ買ってこい!!」

 そういって、また華をからかうと、飛鳥はリビングを出ていった。

「っ~~~、もう最低!」

 華が、の後ろ姿を見つめて声を荒らげる。すると、それを見た蓮は

「ガキ」

「な!?」

「そんくらいで動揺しすぎ。今のどこが、大人なんだよ」

「ヒドイ、二人してからかって!」

 ムッとした表情をした華は、手にした洗濯物をきつく握りしめると、また顔を赤くする。今度は悔しそうに。

「無理して背伸びしても、キツいだけだろ」

「っ……別に無理なんてしてない。いつまでも、甘えてられないし……それに私、飛鳥兄ぃには、幸せになってほしいもん……!」

 いつになったら
 一人前だと認めてくれるのだろう。

 どれだけ頑張れば
 兄を安心させてあげられるのだろう。

 自分たちのために、がんばってきてくれた分、犠牲にしてきた分、兄にはしっかり『幸せ』になってほしい。

 だからこそ、早く自立して、兄がいなくても大丈夫だって、安心させてあげたいのに──

「あ、もしかして……勝負下着買えば、大人に近づける!?」

「物理的方法に走るな。兄貴、泣くぞ」

 なんとも的はずれな発言。

 だが、そんな発言がでてくるうちは、華が大人になることはないだろう……と、蓮は少しだけ安心したのだった。


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