神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第3章 お兄ちゃんの高校時代

第65話 お弁当と兄

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教室の入口から、にこやかに声をかけてきた飛鳥を見て、華と蓮は途端に表情をゆがめた。

((幻覚だ!!幻覚だと思いたい‼))

 そう心の中で叫ぶが、それは紛れもなく現実だった。
 あろうことか昼食時間という、クラスメイトが沢山いるこのタイミングで現れた兄!

 華と蓮は慌てて立ち上がると、バタバタと教室の入口まで駆けよった。

「なんでココにいるんだよ!部外者は立ち入り禁止だろ!?」
『部外者じゃないよ。卒業生だもん。それにちゃんと職員室にも挨拶してきたし』
「あーそうなんだ!ありがとう!私のお弁当のためにありがとう!!でも、今すぐUターンしようか、お願いだから!!」
『え、なにそれ?』

 へらへらと笑う兄に対し「今すぐ帰れ!」と言わんばかりに双子は教室の入口から廊下まで兄を押しやる。だが

「ねぇ、あれ誰?」
「すっごいイケメン」
「なんか、芸能人みたーい」
「なになに、神木たちの知り合い?」

 背後から聞こえてくる、ざわめき。

 言わずもがな。教室内は既に『突然現れた、とてつもなく美形なお兄さん』の話題で持ち切りだった!

 ヤバイ!これはヤバい!
   その瞬間、双子はダラダラと滝のような汗をかき始めた。

 もし、これが"自分たちの兄"だと知られたら、もう終わりだ!!
 間違いなく、普通の高校生活は送れなくなる!!

「ほら、もう用事はすんだでしょ!?早く帰」
「お、神木じゃないか!」

 するとそこに、今度は懐かしそうに声をかける人物が現れた。
 黒のジャージに身を包み、生徒名簿を手にした30代くらいの男の先生だ。

『あ、藤さんだ。久しぶり~』

 すると、その先生を見て、飛鳥がヒラヒラと手を振ると、"藤さん"こと"藤本先生"は、久しぶりに会った教え子に驚きつつも満面の笑みで近寄ってくる。

「神木、お前相変わらずだな~。いやー高2のバレンタインの時にした例の校内放送、今でも忘れられないわー」
『あはは。その節はどーも。あの時は副会長もしてたから、俺一人じゃ、どうにもできなくて』

 懐かしそうに話を弾ませる兄と藤本先生。だがその話を聞いて、蓮は呆気に取られた。

(え!?今、って言った!?やっぱ、コイツだった!まぎれもなくうちの兄貴だった‼)

 先程女子が話していた三年前の副会長。
 それが自分の兄だと確信すると、蓮は雷に撃たれたかのような衝撃をうけた。

「え?副会長なんてしてたの?」

 すると、それを聞いた華がキョトンと首を傾げる。

『うん、高二から高三の──って、あれ?言ってなかったっけ?』
「聞いてないよー!」
「てか、なんで副なの?兄貴、どうみても会長顔だろ」
『会長顔って何?』
「あっはっは!当時の神木は凄かったんだぞ~投票数も断トツ1位(他薦)で、普通に行けば神木が会長になるはずだったのに嫌だっていうからさ。その時2位だったやつ(自薦)が会長して、コイツは副会長におさまったんだよ」
「いたたまれないよ、当時の会長!!?」
「でもその年は盛り上がったぞ。意外と神木、女房役うまかったから、会長のことも、上手くサポートしてたし」
「え? この人、サポート役できんの??地味な役割こなせんの?」
「滞りなくな。神木、要領良かったもんな~!」
『あはは。藤さん、それ誉めすぎ』

 いや、知ってた。なんでも、そつなくこなせるお兄様だってことは知ってた。

 けど、おかげで、俺たちがどんなに頑張っても、霞むんだよね!?


「それより、神木。今日はなにしに来たんだ?」

 すると、懐かしさに浸り終えた藤本先生が、兄に疑問の言葉を投げ掛けた。
 飛鳥は、その言葉に当初の目的を思い出すと、手にした包みを見せつけながら、にこりと笑う。

『妹に、弁当を届けにね?』
「……妹?」

 藤本先生が首を傾げる。すると飛鳥は華と蓮に視線を流すと

『コイツら、なんだ。これから3年間よろしくね?』

 と、笑顔で紹介した。

「えー!!!!あれ、神木君たちのお兄さんなの!!?」
「きゃーうそー!!!」

(終わった)
(私たちの普通の高校生活……)

 もはや、もうどうすることも出来まいと、華と蓮は再び顔を見合わせると、今後の高校生活の行く末を案じながら、兄の恐ろしさを改めて痛感するのであった。


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