神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第2章 絶世の美女

第60話 大学帰りと喫茶店

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「神木くん! 今度俺に料理、教えてください!」

 大学帰りの平日の午後。

 隆臣の母が経営する喫茶店のいつもの席で、飛鳥の横を陣取った大河たいがが、意気揚々と声をあげた。

 少し耳障りなその声を聞き、飛鳥は手にしたコーヒーカップを口元に運ぶと、一口飲んだあと、ピシャリと否定の言葉を放つ。

「嫌だよ、めんどくさい」

「えーいいじゃないですかー。実は俺、一人暮らし始めてからマジで食べるもの片寄って! バイト先のコンビニ弁当ばかりじゃ、身体壊しちゃいますよ!」

「もう三年目なんでしょ? それに料理本ならいくらでもあるし、お金使いたくないなら図書館にいけば?」
 
「冷たい!? 先日の微笑みはどこいったんですか!!?」

「それ、きっと幻」

「あぁぁ! そんな神木くんも素敵だぁぁぁ!」

 飛鳥の歯に衣を着せぬ発言に、大河が頭を抱えながら歓喜の声をあげる。

 すると、向かいの席でその掛け合いを見つめていた隆臣たかおみが、少し前までの二人を思い返し、首をかしげる。

「お前ら、いつの間に仲良くなったんだ?」

 大河は相変わらずなのだが、飛鳥はほんの少し前まで大河に苦手意識を抱いていた。

 だが、今の様子を見る限り、先日まで警戒心丸出しだったあのトゲトゲした雰囲気は和らぎ、今では、こうして隣に同席することまで許していた。

「おお!? やっぱり仲良く見える!!」

「お前が仕事サボるからだろ…役立たず」

「なんで俺が役立たず!?」

 ボソリと呟いた飛鳥の言葉に、隆臣がたまらず声を荒らげた。

 仕事を引き受けた覚えもなければ、サボった覚えもない。

 だが、飛鳥の雰囲気からして少なからず大河にも気を許せるようになったのだろう。

 そう、推測した隆臣は「珍しいな…」といわんばかりに、飛鳥に再び問いかける。

「しかし、どういう風のふきまわしだ?」
「……」

 隆臣の言葉に飛鳥は一瞬動きや止めると、手にしていたコーヒーのカップを再び受け皿に戻す。

「……確かに隆ちゃんの言う通り、悪いやつではなかったよ。だから──もうこうなったらトコトンしてやろうかな、とか思って」

「おい大河、目覚ませ。こいつマジで悪魔だぞ」

 なにやらしおらしい声を放ったかと思えば、まるで悪魔のような言葉が聞こえてきた。だが、肝心の大河はというと

「なに言ってんだよ、橘!! 悪魔の裏にしっかり天使もいるんだよ! 俺は知ってる! 全部ひっくるめてそれが神木くんだから! むしろ利用されたい‼」

「お前ほんとブレないな。どうしたら、そう言う発想になるんだ」
 
 大河を飛鳥の毒牙にかけないようにと忠告した言葉、なんの意味もなく撃沈した。

 盲目的に飛鳥を崇拝しているであろう大河に、飛鳥は再び眉を顰めると

「ねぇ、隆ちゃん。武市くんさ、どんなに突き放そうとしても 全く折れないんだけど、一体どんなメンタルしてんの?」

苦笑いでそういうと、隆臣が呆れた口調で飛鳥を流しみる。

「まぁ、昔から大河はプラス思考の塊みたいはやつだからな」

「プラス思考? あープラスドライバーで頭のネジ締めてあげれば治るのかな?」

「…………お前がもう限界なのは、よくわかったよ。だが、残念だが大河のネジはもう抜けてると思う」

「あ、そうだ! せっかく男が三人揃ってるんだし!なんか盛り上がる話しよーよ♪」

 すると、そんな2人の会話を割って、再びが大河が話し始める。

「そうだなーせっかくだし……」

顎に手を当てふむと考え込む。すると

「あ!! 二人の好きな女の子のタイプ聞きたい!」
「なにそれ!!?」
「中学生か お前は!!?」

 閃いたとばかりにキラッキラの笑顔を向ける大河に、飛鳥と隆臣は困惑するような視線を向ける。

 日頃、飛鳥と隆臣の二人だけなら、こんな馬鹿な話はしない。

 普段ではありえないその場の雰囲気に、二人は思わず視線をあわせると、どうやら我にかえったのか

「飛鳥、無視していいぞ」
「うん……もとから聞く気ない」

と、大河の提案を一蹴する。

「ちょ、ちょっとちょっと! 付き合いわるーい!! 男ならメジャーな話題じゃん!」

「じゃぁ、一人でやってろ」

「よし。俺の好みのタイプは~やっぱり髪が長くて笑顔が可愛くて、包み込んでくれるような優しい感じの女の子かな! で、巨乳ならなお良し!!」

「……ちょっと隆ちゃん、マジで一人で始めたんだけど」

「あぁ、まさかこーくるとはな。俺も今ビックリしてる」

「ビックリしてるじゃないだろ。友達なら、ちゃんと舵とれよ」

「無理言うな。誰のせいで大河がこうなったと思ってるんだ。大体、飛鳥一人でも手に余るのに、厄介者二人とか胃に穴があきそうだ」

「はぁ? なんで俺まで、こいつと同じ部類にされてんの?」

「同じだよ。俺にとってはな!」

 ニッコリと黒い笑顔で威圧するも、ここ10年で慣れてしまったのか、隆臣にはあまり効果がなかった。

 だが、不機嫌そうに口論を繰り返す飛鳥と隆臣を見て、大河が慌てて仲裁にはいる。

「ちょ、橘も神木君も喧嘩しないで!? あまり騒ぐと他のお客さんの迷惑になるだろ!」

「「ちょっと待て、なんで俺達が悪い感じになってんの!!?」」

 事の発端はお前だろ!!と、再び意志疎通すると、飛鳥と隆臣は同時に声をあげた。

 隆臣だけでなく、飛鳥さえも振り回すこの武市ワールド。もはや、恐ろしいくらいである。



「あ! そうだ神木くん!」
「?」

 話が一段落したかと思えば、大河がまた話し始めた。

 身を乗り出し、少しだけ距離が近づく。

「もし、俺がさっき言ったみたいな感じの女の子がいたら、是非紹介してください!!」

「え?」

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