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【第2部】第1章 高校生と新生活
第54話 飛鳥と大河
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「ちょっと神木君! 橘、アイツ神木君のなんなんですか!? 俺が神木くんに会いに行こうとすると、いつも阻んでくるですよ~ボディガードですか?用心棒かなんかですか!?」
「へー。それで、その優秀なボディーガードは、今どこでなにやってんの?『仕事しろ』って言っといて」
この問題児から、飛鳥を2年間遠ざけてくれていた隆臣には、正直感謝しかない。
だが、あの日以来、彼は時折、飛鳥の目の前に現れるようになった。隆臣が飛鳥のボディーガードだとするならば、今の現状を考えれば、もう正直、役立たずでしかない。
「橘は今、教授のところにいってますよ。で、俺は今まさに帰ろうとしていたら、神木くんを見つけたんで、神様が俺にチャンスを与えてくれたんだと思って走ってきました。全力で!!」
「神様、なにやってんの? 俺のこと嫌いなのかな? 今すぐクレームいれたい」
「またまたー。そんなこといっても俺はへこたれませんよー」
「ほんと、散々毒かれてんのに、よく耐えられるね? 幻滅したりしないの?」
「何言ってるんですか! 神木くんみたいな美人が毒吐くからこそ、それがよりスパイスになって、更に引き立つんじゃないですか!?」
(ダメだコイツ。なに言っても響かない。究極のメンタル持ってるよ)
意気揚々と話しかけてくる大河を前にし、飛鳥は顔をひきつらせた。
そう、大河は飛鳥がどんなに罵声を浴びせても、全くへこたれないのだ。むしろ、それすらも喜んでいるようで、まさに暖簾に腕押し状態…
だからこそ、さすがの飛鳥も、彼のことは未だに苦手だった。
「ねーあの人、ハーフなのかな? カッコイイ」
「多分、先輩だよね? 名前聞いてみる?」
すると、おそらく1年だろう。飛鳥を見て、小声ではなす声が2人のもとに届いた。
「しかし神木くん、相変わらず目立ちますね~1年の間でもすぐに広まっちゃいそう」
「……」
勿論その声は、大河にも届いたようで、ヒソヒソと話ながら、こちらを見つめている女の子達をみて、感心し声をあげる。
「でも、神木くんのファンが増えるのは、俺としては嬉しいですけどね! ファンクラブあったら、ぜひ入りたい!!」
「ないよ、そんなもん」
「いやいや、本人の知らないところで、意外とあるかもしれせんよ~」
「……ねぇ、ファンとかいうけどさ。君も俺の『外見』が気に入って、そんなこといってるの?」
飛鳥は、少し不機嫌な声色で言葉を放った。
この容姿のせいか、今までにもファンだと名乗る人や、自分を好きだと告白してくる人はそれなりにいた。
だが、そのほとんどが、自分の「容姿」しか見ていないように感じて、あまり、良い気分にはならなかった。
贅沢な悩みなのかもしれない。
だが、容姿ばかりを誉められ、好かれるというのは『自分にはそれしかない』と、改めて言われているような気がして…
心の奥に蓋をして、閉じ込めていたはずの、あの幼い頃の記憶が、また、小さく小さく音をたてながら、自分を蝕んでいくように感じた。
「神木くん、それはちょっと勘違いしてます」
「え?」
だが、そんな飛鳥の問いに、大河は珍しく真面目な顔をし、まっすぐに飛鳥を見つめ返してきた。
大河のその姿は、いつものチャラついた様子は一切なく、普段と違う彼の雰囲気に、飛鳥は言葉をつまらせる。
「この前話した高校の文化祭の時の話ですけど……神木くんその時、女の子に声をかけたの覚えてますか?」
「へー。それで、その優秀なボディーガードは、今どこでなにやってんの?『仕事しろ』って言っといて」
この問題児から、飛鳥を2年間遠ざけてくれていた隆臣には、正直感謝しかない。
だが、あの日以来、彼は時折、飛鳥の目の前に現れるようになった。隆臣が飛鳥のボディーガードだとするならば、今の現状を考えれば、もう正直、役立たずでしかない。
「橘は今、教授のところにいってますよ。で、俺は今まさに帰ろうとしていたら、神木くんを見つけたんで、神様が俺にチャンスを与えてくれたんだと思って走ってきました。全力で!!」
「神様、なにやってんの? 俺のこと嫌いなのかな? 今すぐクレームいれたい」
「またまたー。そんなこといっても俺はへこたれませんよー」
「ほんと、散々毒かれてんのに、よく耐えられるね? 幻滅したりしないの?」
「何言ってるんですか! 神木くんみたいな美人が毒吐くからこそ、それがよりスパイスになって、更に引き立つんじゃないですか!?」
(ダメだコイツ。なに言っても響かない。究極のメンタル持ってるよ)
意気揚々と話しかけてくる大河を前にし、飛鳥は顔をひきつらせた。
そう、大河は飛鳥がどんなに罵声を浴びせても、全くへこたれないのだ。むしろ、それすらも喜んでいるようで、まさに暖簾に腕押し状態…
だからこそ、さすがの飛鳥も、彼のことは未だに苦手だった。
「ねーあの人、ハーフなのかな? カッコイイ」
「多分、先輩だよね? 名前聞いてみる?」
すると、おそらく1年だろう。飛鳥を見て、小声ではなす声が2人のもとに届いた。
「しかし神木くん、相変わらず目立ちますね~1年の間でもすぐに広まっちゃいそう」
「……」
勿論その声は、大河にも届いたようで、ヒソヒソと話ながら、こちらを見つめている女の子達をみて、感心し声をあげる。
「でも、神木くんのファンが増えるのは、俺としては嬉しいですけどね! ファンクラブあったら、ぜひ入りたい!!」
「ないよ、そんなもん」
「いやいや、本人の知らないところで、意外とあるかもしれせんよ~」
「……ねぇ、ファンとかいうけどさ。君も俺の『外見』が気に入って、そんなこといってるの?」
飛鳥は、少し不機嫌な声色で言葉を放った。
この容姿のせいか、今までにもファンだと名乗る人や、自分を好きだと告白してくる人はそれなりにいた。
だが、そのほとんどが、自分の「容姿」しか見ていないように感じて、あまり、良い気分にはならなかった。
贅沢な悩みなのかもしれない。
だが、容姿ばかりを誉められ、好かれるというのは『自分にはそれしかない』と、改めて言われているような気がして…
心の奥に蓋をして、閉じ込めていたはずの、あの幼い頃の記憶が、また、小さく小さく音をたてながら、自分を蝕んでいくように感じた。
「神木くん、それはちょっと勘違いしてます」
「え?」
だが、そんな飛鳥の問いに、大河は珍しく真面目な顔をし、まっすぐに飛鳥を見つめ返してきた。
大河のその姿は、いつものチャラついた様子は一切なく、普段と違う彼の雰囲気に、飛鳥は言葉をつまらせる。
「この前話した高校の文化祭の時の話ですけど……神木くんその時、女の子に声をかけたの覚えてますか?」
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