4 / 4
・最終話「結夢」
しおりを挟む
夢は眠るのだろうか。ドリムリーパーは眠るのだろうか。
ドリムリーパーは、その問いにそうだと答えるわ。
ではドリムリーパーは、どんな夢を見るのだろうか。
私ドリムリーパーは、その問いに秘密を答えるわ。
私が見るのは、夜眠って見る夢ではない。生きている人間が思い描く夢、希望、空想、願い、祈りの夢。
色々な人間の描く夢を、私は見るのよ。
人間で言う悪夢のように、醜悪な妄想の夢を見る事もある。
物語の夢を見る事もある。それもまた、人が見たいと願う夢だからだ。良い物語の夢は大好きだ。
あり得た可能性の夢を見る事もある。知的遊戯の楽しみも、何故こうならなかったという悲しみも。
死の眠りにつく一瞬の夢も。
そして夢の無い眠りをする事もあるし、死と同じ眠りをする事もある。私はそこから目覚める。私は夢だからあやふやなの。夢は、眠りは、死は、あやふやで不可思議なものなのよ。私は夢かもしれないし、元人間だった夢かもしれないし、死者の夢かもしれないし、生者の夢かもしれないし、これから生まれる者が見る夢かもしれない。
そう言って、時に私は死の眠りにつく人を夢の世界に連れてゆく。別の夢へ、また別の夢へ、そのまた別の夢へ。
何度繰り返しても尚、夢を必要とせずぐっすりと眠れない人を、新しい目覚めに連れてゆく。
それがどういう形の目覚めか。その先に天国があるのか、それが輪廻転生と人が呼び習わす何かなのか、それともそれとは全く別で、人は同じ生を昨日眠った時の覚えていない夢のように忘れながら何度も同じ事を繰り返しているのか、あるいは、全ての人が、いずれ科学の果てにその存在を蘇らせられるのか。
それは、分からないわ。私は夢の事しか知らないのだから。夢から目覚めた先のことは分からないのだから。
それでも私は、人を夢から送り出すの。目覚めを齎す者でもあるドリムリーパーとして。
ただ。
眠りを不安に思う人。眠れない人。死の眠りを恐れる人よ。
そういう人がこの物語を読んでいたら、私はこう言うわ。そういう人が、この物語を読んでいれば、私は幸いだと思うわ。
夢と眠りの不思議は可能性なのだと思ってほしい。だから、眠る事を恐れないで。
ドリムリーパーは、その問いにそうだと答えるわ。
ではドリムリーパーは、どんな夢を見るのだろうか。
私ドリムリーパーは、その問いに秘密を答えるわ。
私が見るのは、夜眠って見る夢ではない。生きている人間が思い描く夢、希望、空想、願い、祈りの夢。
色々な人間の描く夢を、私は見るのよ。
人間で言う悪夢のように、醜悪な妄想の夢を見る事もある。
物語の夢を見る事もある。それもまた、人が見たいと願う夢だからだ。良い物語の夢は大好きだ。
あり得た可能性の夢を見る事もある。知的遊戯の楽しみも、何故こうならなかったという悲しみも。
死の眠りにつく一瞬の夢も。
そして夢の無い眠りをする事もあるし、死と同じ眠りをする事もある。私はそこから目覚める。私は夢だからあやふやなの。夢は、眠りは、死は、あやふやで不可思議なものなのよ。私は夢かもしれないし、元人間だった夢かもしれないし、死者の夢かもしれないし、生者の夢かもしれないし、これから生まれる者が見る夢かもしれない。
そう言って、時に私は死の眠りにつく人を夢の世界に連れてゆく。別の夢へ、また別の夢へ、そのまた別の夢へ。
何度繰り返しても尚、夢を必要とせずぐっすりと眠れない人を、新しい目覚めに連れてゆく。
それがどういう形の目覚めか。その先に天国があるのか、それが輪廻転生と人が呼び習わす何かなのか、それともそれとは全く別で、人は同じ生を昨日眠った時の覚えていない夢のように忘れながら何度も同じ事を繰り返しているのか、あるいは、全ての人が、いずれ科学の果てにその存在を蘇らせられるのか。
それは、分からないわ。私は夢の事しか知らないのだから。夢から目覚めた先のことは分からないのだから。
それでも私は、人を夢から送り出すの。目覚めを齎す者でもあるドリムリーパーとして。
ただ。
眠りを不安に思う人。眠れない人。死の眠りを恐れる人よ。
そういう人がこの物語を読んでいたら、私はこう言うわ。そういう人が、この物語を読んでいれば、私は幸いだと思うわ。
夢と眠りの不思議は可能性なのだと思ってほしい。だから、眠る事を恐れないで。
0
お気に入りに追加
4
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説


骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。


王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
物語やキャラクターの設定が面白いです
構成もすごくこっていて私には到底書けません(笑)
夢の世界、ハチャメチャな感じがとてもよかったです
ご評価有難う御座います。
夢特有の奇想天外さを出そうと、実際に見た夢や聞いた人の夢を参考に作り上げました。
それを面白くできていたのであれば嬉しいです!
裸のまま走ったり、怪物が出てきたり、ラブクラフトが夢について書いたら、こんな感じになるんですかね?
裸走りと怪物他、一部の夢の内容については、作者が見た夢や、他者から聞いた夢の話等を織り込んだりしたりもしております。
幻想的を目指していましたので、ラブクラフトというイメージが出てくるのであれば、幻想的になっているかな、と少しうれしくなります。
オチが小粒だけどきいてますね!
夢だけではないもうひとつのテーマ、という感じで、大事に描写してみました。