2 / 4
・第二話「承夢」
しおりを挟む
いつからか、私は列車の来ない錆びた線路の横を歩いていた。カンカンの日差し、高く雲一つ無い青空。蝉の鳴く声。夏だ。暑い。
線路の左右には、木造の壁、赤い瓦屋根の古い民家が沢山だ。
左手のほうが民家の数は多く、遠くを見れば丘になっている。
右手のほうが民家の数は少なく、その向こうには海岸線が見えた。
先は果ても無く、後ろも果ても無い。
あっ、と、そして私は気づいた。
大変だ。服を着るのを忘れてきた。私は今、裸だ!
恥ずかしい!慌てて身を隠そうとした。使えるのは鞄しかなかった。とりあえず、隠さなければいけない所は隠せた。
これで何とか誤魔化せればいいのだが。常識的に考えて誤魔化せる筈がないだろう、とは、何故か思わなかった。
大慌てで、しかし恥ずかしくてちょこまかと小股で歩く。暑くて人通りがないのが幸いだ。
行く手に、線路に覆い被さるような構造の、表面の白いペンキが古くなってひび割れ剥がれかけた、やはり赤い屋根を持つ放棄された駅舎があった。
慌てて中に入って隠れる。ふう、危ないところだった。
細長い駅舎の中を歩きながら、硝子窓の外を見た。
ひいっ!?
思わず私は叫んでいた。そこには化け物がいたのだ。黒い瞳孔のある黄色い単眼、緑の毛、赤い鱗、ひび割れた褐色の肌。昔何かのTV番組に出てきた丸い体型のクリーチャーに似ているようなそれに何かが混ざったような何かを、蛇のように長く引き伸ばしたような巨大怪獣。
だがテレビの中にいるのではない、薄い硝子の窓越しだ。凄く近く、凄く大きい。海から這い出してきた。
ばぎばぎばぎ!と、駅舎が壊される中、壊れていく駅舎の中を必死に歩いた。ああああああ!と、叫びながら。鞄が手放せなかったから、走れなかった。
追い付かれ、怪物と目があった。
もうダメだ。
「COCKADOOOLEDOOOOO!!!」
そう高く叫びながら、怪獣の横面に女が飛びかかり、鳥の骨を組み合わせて作った大きな鎌で殴り飛ばした。虹色の髪と目を持つ、時計を纏う女。そうとしか言えない人だった。その人は言った。ドリムリーパーというのだと、夢だから何故か分かった。
「いいから裸で走りなさいっ!!」
「はっはいっ!!」
叫んで答えた瞬間目が覚めた。昨日、色々と面子に関してくよくよと悩んでいたのが、なんだかすっきりした気分だった。
線路の左右には、木造の壁、赤い瓦屋根の古い民家が沢山だ。
左手のほうが民家の数は多く、遠くを見れば丘になっている。
右手のほうが民家の数は少なく、その向こうには海岸線が見えた。
先は果ても無く、後ろも果ても無い。
あっ、と、そして私は気づいた。
大変だ。服を着るのを忘れてきた。私は今、裸だ!
恥ずかしい!慌てて身を隠そうとした。使えるのは鞄しかなかった。とりあえず、隠さなければいけない所は隠せた。
これで何とか誤魔化せればいいのだが。常識的に考えて誤魔化せる筈がないだろう、とは、何故か思わなかった。
大慌てで、しかし恥ずかしくてちょこまかと小股で歩く。暑くて人通りがないのが幸いだ。
行く手に、線路に覆い被さるような構造の、表面の白いペンキが古くなってひび割れ剥がれかけた、やはり赤い屋根を持つ放棄された駅舎があった。
慌てて中に入って隠れる。ふう、危ないところだった。
細長い駅舎の中を歩きながら、硝子窓の外を見た。
ひいっ!?
思わず私は叫んでいた。そこには化け物がいたのだ。黒い瞳孔のある黄色い単眼、緑の毛、赤い鱗、ひび割れた褐色の肌。昔何かのTV番組に出てきた丸い体型のクリーチャーに似ているようなそれに何かが混ざったような何かを、蛇のように長く引き伸ばしたような巨大怪獣。
だがテレビの中にいるのではない、薄い硝子の窓越しだ。凄く近く、凄く大きい。海から這い出してきた。
ばぎばぎばぎ!と、駅舎が壊される中、壊れていく駅舎の中を必死に歩いた。ああああああ!と、叫びながら。鞄が手放せなかったから、走れなかった。
追い付かれ、怪物と目があった。
もうダメだ。
「COCKADOOOLEDOOOOO!!!」
そう高く叫びながら、怪獣の横面に女が飛びかかり、鳥の骨を組み合わせて作った大きな鎌で殴り飛ばした。虹色の髪と目を持つ、時計を纏う女。そうとしか言えない人だった。その人は言った。ドリムリーパーというのだと、夢だから何故か分かった。
「いいから裸で走りなさいっ!!」
「はっはいっ!!」
叫んで答えた瞬間目が覚めた。昨日、色々と面子に関してくよくよと悩んでいたのが、なんだかすっきりした気分だった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

親切なミザリー
みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。
ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。
ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。
こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。
‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。
※不定期更新です。

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です
渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。
愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。
そんな生活に耐えかねたマーガレットは…
結末は見方によって色々系だと思います。
なろうにも同じものを掲載しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる