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0.前提としての魔法紀元世界航空史
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魔法が発見されたことを人類歴史の紀元とするこの魔法紀元世界の空は、古来魔王のものであった。
ドラゴンやワイバーン、グリフォンやヒポグリフ、ハーピーや翼あるデーモンたちが支配する空間が空であった。
それ故に魔類(魔の類い、生まれながらにして超常の力を見えざる手足のように操れるエネルギーたる魔力と知性を持つ様々な魔族や魔獣の総称。知恵無き獣は魔力を行使出来ず、魔物並の強さを魔力行使無しで持つ動物を怪物と呼ぶ)の国家である魔王国は、歴史において常に最大の覇権国家で有り続けてきた。
人類(人の類いの総称。代表して他の種族の間を埋める程に地に満ちた事でそう呼ばれる間人他、森人、山人、獣人、小人の五類。それぞれ魔族と比べれば短い寿命や低い身体能力を持ち魔力を有しない知的生命体の総称)諸国は、魔王国に貢納するものとしてのみ存在を認められ、その覇権の下に屈し続けて、寧ろ人類国家同士が争いあうよう魔王国に管理されてきた。
生まれながらの魔力を持たない人類であったが、やがて文明を発展させ、自然界にある魔力を多く含むものを媒介に【魔力を使う方法】即ち魔法を開発する事に成功する。
最初は自然界にある、魔力を行使出来ないが魔力のエネルギーを有している動植物……先の怪物の中に特にそういう種が多かった……を狩ったり家畜・作物化する事で魔力を得て、その魔力をもって魔法を行使・研鑽し研究を進める事で、魔宝石や魔金属等の一定の魔力を蓄積する鉱物、魔炭や魔油といった燃焼させる事でその場限り消費可能な魔力を発生させる鉱物を発見していく事で人類は魔法文明を進歩させて、じわじわと魔類に追いつこうとしていった。
それでも長く、空は魔王の領域であった。
そこに決定的な変化をもたらしたのが、豆馬を狩る小人族の中の騎馬民族である草原小人の中で草原虎をトーテムとして崇める猛虎族の変わり者、“空見の”フィエと、後世“翼の魔女”“空に入りたる者”と讃えられる間人の魔女リリィ・エンターであった。
“空見の”フィエが見出した理屈そのものは、応用という意味ではそう大したものでは無かった。彼は要するに、雲や草原禿鷲をぼんやり見ている中で上昇気流や気温と天気の関係を感じとり、上昇気流や気温を使って浮かぶ手段、即ち凧と気球を発明したのだ。
当初人類はこれを使って言わば空中に馬防柵や砦を築くようにする事で魔類の制空権に対抗しようとして阻害気球をつくって魔王空軍に対抗したが、やはり機動力の差はいかんともしがたく敗れた。
しかし、“空見の”フィエの発見が基礎理論としてとんでもない価値を持っている事に気づき、そこから真理を見出した者が現れた。それこそがリリィ・エンターであった。
彼女は草原禿鷲が上昇気流を捉えて飛ぶ【凧の原理】を調べ、大半の鳥は上昇気流による【凧の原理】ではなく自分で羽ばたいて飛んでいる事に着目。そこから【翼の原理】を見出し……そして気づき叫んだのである。
「魔類達、どう考えても翼だけじゃ飛べないじゃない!」
そう、ドラゴンの翼もグリフォンの翼もデーモンの翼も、鳥の翼や蝙蝠の皮膜は昆虫の羽と比べればどう考えても体の目方に対して小さすぎる。魔力を持たない動物と違って、【翼の原理】だけで飛んでいないのだ。
魔類自体、自分達は翼を羽ばたかせる事で飛んでいると思っていたのだが、翼を動かす事で無意識に魔力を同時に動かして飛んでいたのだ。
これは、基本的に魔力の後追いをしていた魔法が、魔力を魔類より深く理解した瞬間であった。
ここから、人類の逆襲が始まる。
それまで当たり前とされていた事象の解明、どこまでが自然でどこまでが魔力魔法の領域なのか。
それを峻別し、厳密にする事で魔法研究は長足の進歩を遂げた。魔力の解析も行われ、それが更に魔法の進歩をもたらした。
人類国家群と魔王国との間に軍拡抗争と、その結果としての幾度かの戦争があり……
そして遂に、二度の大戦が起こった。
そこにおいて活躍したものが二つある。一つは、新式魔法の成果たる無敵の魔法強化人間、その無謀な程のハイリスクと低成功度の強化を受ける度胸を讃えて【勇者】と呼ばれた超人戦士。
そしてもう一つが、飛行船、箒、絨毯、魔法天馬、魔獣馴致法、人造魔獣、弾道兵、人工島、飛行人形、羽鎧等……様々な形で人類国家群が花開かせた航空戦力だった。
魔法紀元界の歴史上初めて、人類が制空権を奪われなかったのだ。
陸を勇者が支える中、制空権こそ魔王軍を打倒すると航空戦力は日進月歩し、ついには逆に制空権を奪取するに至った。
その結果、第一次魔法大戦で人類諸国群は独立を達成。
第二次魔法大戦で、遂に魔王を打倒。
人類諸国は念願の独立を果たし。その結果、人類社会は……一時の平和の後、皮肉にも自分達人類国家同士による争いの危機に直面する事となった。
ドラゴンやワイバーン、グリフォンやヒポグリフ、ハーピーや翼あるデーモンたちが支配する空間が空であった。
それ故に魔類(魔の類い、生まれながらにして超常の力を見えざる手足のように操れるエネルギーたる魔力と知性を持つ様々な魔族や魔獣の総称。知恵無き獣は魔力を行使出来ず、魔物並の強さを魔力行使無しで持つ動物を怪物と呼ぶ)の国家である魔王国は、歴史において常に最大の覇権国家で有り続けてきた。
人類(人の類いの総称。代表して他の種族の間を埋める程に地に満ちた事でそう呼ばれる間人他、森人、山人、獣人、小人の五類。それぞれ魔族と比べれば短い寿命や低い身体能力を持ち魔力を有しない知的生命体の総称)諸国は、魔王国に貢納するものとしてのみ存在を認められ、その覇権の下に屈し続けて、寧ろ人類国家同士が争いあうよう魔王国に管理されてきた。
生まれながらの魔力を持たない人類であったが、やがて文明を発展させ、自然界にある魔力を多く含むものを媒介に【魔力を使う方法】即ち魔法を開発する事に成功する。
最初は自然界にある、魔力を行使出来ないが魔力のエネルギーを有している動植物……先の怪物の中に特にそういう種が多かった……を狩ったり家畜・作物化する事で魔力を得て、その魔力をもって魔法を行使・研鑽し研究を進める事で、魔宝石や魔金属等の一定の魔力を蓄積する鉱物、魔炭や魔油といった燃焼させる事でその場限り消費可能な魔力を発生させる鉱物を発見していく事で人類は魔法文明を進歩させて、じわじわと魔類に追いつこうとしていった。
それでも長く、空は魔王の領域であった。
そこに決定的な変化をもたらしたのが、豆馬を狩る小人族の中の騎馬民族である草原小人の中で草原虎をトーテムとして崇める猛虎族の変わり者、“空見の”フィエと、後世“翼の魔女”“空に入りたる者”と讃えられる間人の魔女リリィ・エンターであった。
“空見の”フィエが見出した理屈そのものは、応用という意味ではそう大したものでは無かった。彼は要するに、雲や草原禿鷲をぼんやり見ている中で上昇気流や気温と天気の関係を感じとり、上昇気流や気温を使って浮かぶ手段、即ち凧と気球を発明したのだ。
当初人類はこれを使って言わば空中に馬防柵や砦を築くようにする事で魔類の制空権に対抗しようとして阻害気球をつくって魔王空軍に対抗したが、やはり機動力の差はいかんともしがたく敗れた。
しかし、“空見の”フィエの発見が基礎理論としてとんでもない価値を持っている事に気づき、そこから真理を見出した者が現れた。それこそがリリィ・エンターであった。
彼女は草原禿鷲が上昇気流を捉えて飛ぶ【凧の原理】を調べ、大半の鳥は上昇気流による【凧の原理】ではなく自分で羽ばたいて飛んでいる事に着目。そこから【翼の原理】を見出し……そして気づき叫んだのである。
「魔類達、どう考えても翼だけじゃ飛べないじゃない!」
そう、ドラゴンの翼もグリフォンの翼もデーモンの翼も、鳥の翼や蝙蝠の皮膜は昆虫の羽と比べればどう考えても体の目方に対して小さすぎる。魔力を持たない動物と違って、【翼の原理】だけで飛んでいないのだ。
魔類自体、自分達は翼を羽ばたかせる事で飛んでいると思っていたのだが、翼を動かす事で無意識に魔力を同時に動かして飛んでいたのだ。
これは、基本的に魔力の後追いをしていた魔法が、魔力を魔類より深く理解した瞬間であった。
ここから、人類の逆襲が始まる。
それまで当たり前とされていた事象の解明、どこまでが自然でどこまでが魔力魔法の領域なのか。
それを峻別し、厳密にする事で魔法研究は長足の進歩を遂げた。魔力の解析も行われ、それが更に魔法の進歩をもたらした。
人類国家群と魔王国との間に軍拡抗争と、その結果としての幾度かの戦争があり……
そして遂に、二度の大戦が起こった。
そこにおいて活躍したものが二つある。一つは、新式魔法の成果たる無敵の魔法強化人間、その無謀な程のハイリスクと低成功度の強化を受ける度胸を讃えて【勇者】と呼ばれた超人戦士。
そしてもう一つが、飛行船、箒、絨毯、魔法天馬、魔獣馴致法、人造魔獣、弾道兵、人工島、飛行人形、羽鎧等……様々な形で人類国家群が花開かせた航空戦力だった。
魔法紀元界の歴史上初めて、人類が制空権を奪われなかったのだ。
陸を勇者が支える中、制空権こそ魔王軍を打倒すると航空戦力は日進月歩し、ついには逆に制空権を奪取するに至った。
その結果、第一次魔法大戦で人類諸国群は独立を達成。
第二次魔法大戦で、遂に魔王を打倒。
人類諸国は念願の独立を果たし。その結果、人類社会は……一時の平和の後、皮肉にも自分達人類国家同士による争いの危機に直面する事となった。
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