上 下
10 / 13

・惑星開拓&スポーツ&VR~P-1グランプリ! ~

しおりを挟む
 P-1パイオニアワン! それは人類のロマン! 

 P-1パイオニアワン! それは人類が再び得た開拓地フロンティア、野望の花道である! 

 VOOOO! BUOO、VUOOOO!! 

 荒々しい赤茶けた岩石質の大地の大気を、多くのマシンの鼓動が震わせる。

 此処は惑星P-1パイオニアワン、人類が初めて得た植民惑星。

 無数の深い谷間と高い山、そして間欠泉めいた突発的な激流。しばしば吹き荒れる強烈極まりない砂嵐とそれが生む流砂、雷雲を更に凶悪にしたEMPを放つ電磁嵐、そして飛行性のものも陸生・水棲のものもいる、炭素と金属が融合した荒々しく強靭で巨大で狂暴な原生生物達。

 故にこの星を駆けるのはP1マシンと呼ばれるこの星を開拓する為に作られた専門の有人操縦人型機械だ。

 車両? 駄目だ。数キロメ-トル進む間に岩のクレバスめいた無数の裂け目があり、泳げそうなほど目の細かい流砂河があり、断崖絶壁か急勾配落石だらけの山があるんだぞ? しかも谷には無数のオベリスクめいた石柱が巨人が観光する鍾乳洞めいてにょきにょき生えてやがる。

 航空機? 一日に一度は砂嵐や電磁嵐が吹く。電磁嵐のEMPに対抗するシ-ルドは不可能ではないが思い。そんな重いEMPシ-ルドと現住生物バ-ドならぬベムストライクどころか積極的に噛みつきにくるそいつらへの防御を施した上で更に風のない間だけ飛ぶ、そんな限られた飛行可能時間と防御手段に食われて限られた積載量の為に、このクソ凹凸惑星の表面をのっぺりと整地・舗装して飛行場を作る? ナンセンスだ。垂直離着陸可能な回転翼機ヘリコプタ-は気象に対して軟弱ナイ-ヴ過ぎるし、ついでに言えば無人機ドロ-ンの類いもEMPを考えればヤバい。

 船舶? 海が無く、川が間欠泉みたいに時-現れては消える上に流れる川底はこの荒々しい星に相応しい障害物だらけで、流れている間は洪水以外の何者でもない激流の勢いと大河の水量と氷海めいた無数の漂流物を持つ環境で? 

 この荒々しい星を開拓するには、跳び移る事もよじ登る事も這い回る事も伏せ隠れる事も殴り合う事も泳ぐ事も機体の中から出ずに採掘や採取を行う事も出来るマシンこそが求められる。

 更に勿論人類は争い合う存在でもある。例え他星を開拓しようと相も変わらず。電磁嵐に耐えるだけでなく他所の勢力に勝手に乗っ取られないようにするには、ハッキング技術も発達している以上最終的に人間も操作に噛ませるのが一番堅牢という事になる。コンピュータはハッキングできても人間の脳はハッキングできない、座禅ずる達磨大師じみた地球最後のブラックボックスだからだ。

 そして争いは必定とはいえ、果ても際限も交戦規定も無く争っては新天地を台無しにする事もまた必然。まして文明の肥大の結果、金勘定と欲望と娯楽と快楽の充足とが、諸々を圧倒するようになればこそ尚更だ。

 故にこそ、今此処に無数のP1マシンが揃い作動音を響かせている。資源豊富なこの星の開拓権を奪い合う為に。

 であるが故の手段として、娯楽を兼ね、かつ平和的な争いとして効率的に惑星開拓を実現し優秀適切な開拓者を選別するに、P-1パイオニアワンをより効率的に開拓する能力を有する事を証明する為に競い合う……

 即ち、P-1マシンによる、現住生物や相互との闘争を含むあらゆる障害を乗り越えて踏破する能力を競うレースによる勝負が行なわれるのである! 

 操縦担当のメインパイロットと、電子戦・整備・作戦判断担当のサブパイロット、そしてその他諸々を行いサブパイロットに電子的に防御される機体AIという三重知性構造とこの時代の人類技術の限界から人間の五倍程10メ-トル前後のサイズを____基本的__#__#に共通とするが、それ以外は物理的・電子的な頑丈さと機動性と戦闘力と整備性をそれぞれの理想のバランスで両立せんと千差万別の姿をしたP1マシン達が居並ぶ。

 彼等は皆人類文明の様-な企業等のこの惑星の開拓権を争う団体の代表達。ひしめき合って、それら団体の利益調整会議であるP1開拓連合委員会のレースか石の合図を待つ。それは物理的にだけではなく電子的にも。

 即ちこの空間に重なるように存在するP1開拓連合委員会の施設と開拓済の拠点や機体同士のネットワ-クが構築する電脳空間において、機体の各部居を司るプログラムの集合体であるが故に電脳空間上でも電子戦を行うサブパイロットの認識を補助する為に意識に投影されるイメージ立体映像のなかで個々のP1マシン実体とそっくり同じ姿に構築された各機体のプログラムもまた並び、それぞれの機体のAIを宿す防御プログラムを攻略せんとレース開始と同時に争い合う事になる。

 沿岸アメリカ・リベラリズム都市国家同盟帰属企業共同体の、四足歩行モードと二足歩行モードを切り替え可能な洗練され生物的なデザインのダイナミックドッグは新鋭と称えられる。

 GAGUゼネラルアメリカコーポユニオンが誇るP1マシンの上に更にパワードスーツめいた動力付強化装甲を装着したPPFFパワードP1フロンティアファイターもまた負けては居ない如何にも攻防走揃った強そうな赤と金の装甲が艶光る高級機。

 特殊な機体制御システムを採用し電子戦防御力において最強にして機体高速制御に高い能力を揺すると噂される中華人民公司の無名無命ウーミンウーミンは当然の優勝候補。漆黒にして無貌の均整の取れた彫像というべき姿は静かな威圧感。

 NECO新欧州文明企業連合猫騎兵カッツェカヴァリエは精密な構造とプログラミングで燃費と柔軟性に優れるこれも有力候補。

 そして帝政新々興財閥オプリチニキ・オルガリヒのPTK67も、簡素堅実な基本構造故に頑健堅固重装甲の徹底的タフネスを誇る名機体。

 他にも駱駝人間めいた長い手足と首に加え360度回転する腰を特徴とする王家財団のジャンジャヴィード・ザンブ-ラキ、最も小型で耐気候性に能力を割り振った丸っこい機体が特徴なガンガーグループのヴァーハナ3、そしてライムグリーンに銀・濃紺をあしらった塗装の流麗な機体、東亜太平洋諸島企業連合の未来隼ミクハヤブサ、他幾つもの機体が並ぶ中。

 フライングを見過ごさない信号アイカメラとフラッグアームを持つ監視ユニットが立ち上がり、目を光らせ腕を掲げ……さあ、レースが始まる! 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

鋼月の軌跡

チョコレ
SF
月が目覚め、地球が揺れる─廃機で挑む熱狂のロボットバトル! 未知の鉱物ルナリウムがもたらした月面開発とムーンギアバトル。廃棄された機体を修復した少年が、謎の少女ルナと出会い、世界を揺るがす戦いへと挑む近未来SFロボットアクション!

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

処理中です...