博元裕央巨大ロボット作品アイディア短編集

博元 裕央

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・メタフィクション~機械兵士ガンエース・オメガ~

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 オレが、ナガレ・トキノが、目覚めたその日の事を今も覚えている。この場合の目覚めたってのは、文字通りの意味で眠りから覚めたって意味でも、もっと些細な比喩的な意味で世界の見方が変わったとかでもない。

 そして……この、人間の十倍もある人型機械兵器MWマシンウォリアーが地球と言わず宇宙と言わず闊歩し、一つの戦争が終わればまた別の戦争が始まる世界の歴史の中でちょくちょく現れるようになった超能力者ニューエンジェルの力に目覚めた、のとも違う。

 これはそんなもんじゃない。もっと怖ろしいものだ。

(本当じゃない、本当じゃない、架空の事さ)

 何度そう思い込もうとしても、それは己を本当だと真実だと主張しながら脳髄に染み込んでくる。

 フィード・フィアークラフトもバロウ・ドガもセイン・ダンもこの人類暦世界に名だたるエースパイロットや独裁者達も、こんな怖ろしい力を得て、こんな怖ろしい事を知る破目になった事は無い筈だ。

 勿論これが妄想で、俺が単に狂って締まったんなら、それでいい。これが唯の妄想なら、俺には何の力も無いということなのだから、この妄想にしたがって考えた結果の暴挙をしても、俺が無残に死ぬだけで終わるだろう。

 こんな事は妄想のほうがいい。妄想のほうがいいんだ。

 俺達のこの人類暦世界が、MWマシンウォリアーの中でも特に高性能な機体に時代も陣営も超えて名づけられる名前である歴代の〈ガンエース〉と呼ばれる機体を主役としたSF戦争物語だなんて。

 この世界に戦乱が絶えず、何度も何度も新しいガンエースが生まれ、ガンエースが戦いを終わらせ、今度こそ平和になるかと思ったらまた新しい戦争が始まる、それが全て、作品シリーズが大好評で熱狂的なファンがいるから何度も何度も新作が新シリーズが作られてそのせいで戦争が終わらないからだなんて。英雄も独裁者も天才も武人も全てが娯楽の為の消費の対象で、だからMWマシンウォリアーが存在するだなんて。

 信じたくないそんな認識が、確かにそうだという確信と共に止まらず何処からか流れ込んでくる。

 俺のこの認識は、人類暦世界で一般的な超能力である新天使ニューエンジェルを超えた第四の壁の向こう側を認識する超・超能力なのか?それとも、妄想なのか。

 ここから先何が起こるか分かる。新しい物語にどんな設定が、どんな筋書きが、どんなキャラクターがいるのか、どんな展開が起きるのかが分かる。

 妄想であってほしい。もう耐えられない。妄想である事を実証できるなら死んでもいいし、妄想でないならばやっぱり、これを何とか出来るなら死んでもいい。

 そして今、俺は新たなガンエースのコックピットにいる。俺が妄想ではないかと必死に疑っていたこの第四の壁を越えたメタ知識の通りに。妄想では無かった。運命の台本は俺を導いた。ガンエース・オメガ。Ωオメガの左右に伸びる部分を更に鋭く尖らせたような特徴的な角、白を基調色としながらもこれまでのガンエースとデザインが被らないよう奇を衒った結果、人体模型めいたフレームの上に拘束服を被せたような異形の機体に。コクピットの起動中のディスプレイに一瞬、赤い癖毛以外にはこれと言った特徴のない程々にバランスの取れた少年という俺の姿が映った。如何にも主人公らしく、オレが今決めた願いには如何にも頼りない。

 だけど、やるしかない。

 俺はあらゆる非道を為そう。あらゆる戦いを不完全燃焼にする為に。あらゆる掟を破ろう。あらゆる劇的な展開を潰す為に。あらゆる絆を否定しよう、あらゆるキャラクター人気を粉砕する為に。あらゆる敵を一方的に打倒しよう、あらゆるMWマシンウォリアーの人気を粉砕する為に。

 もう沢山だ。例え新シリーズの打ち切りがこの世界の終わりを意味しようとも、これ以上の悲劇の連続が続くなら終わらせたほうがいい。

 俺はこの物語を、機械兵士ガンエースシリーズを終わらせる。

 そのために、あらゆる機械兵士ガンエースファンがシリーズを見限る程の……最悪最低のガンエースになってやる。
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