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新世界創世編 不思議な少女との邂逅
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ここは現在より先の時間軸。
未来とも呼べるし現在とも言える。
そんな未来でも、朝というものは不変なもので
目覚まし時計はジリリリリリとけたたましい音を鳴らし
窓から差し込む陽だまりに照らされて
幸せな夢の世界から現実に戻される二人の少女。
仲良く抱き合っている二人の少女は目を覚ます。
モルドレッドは目を覚ますと
まず、ジリリリリリと五月蝿く鳴っている目覚まし時計を止め
お腹を出しながら寝言を言っている寝相が悪い妹
シャルロットの体を揺さぶる。
「シャルロットォ起きて~…朝よ~」
寝起きで頭と舌が回らないまま妹を揺さぶるが
シャルロットは一向に起きる気配がない。
「もう…しょうがないんだから…」
「こうなったら…」
モルドレッドはシャルロットのお腹をくすぐることにした。
「あは…あはははは!」
「もう…お姉ちゃんくすぐったいよ~」
「シャルロットがなかなか起きないからでしょ」
「あはは~」
根室から出て階段を下り、一階のリビングに入ると
そこにいたのは、朝食を作っている
エプロン姿の白銀の少女
ルミナス・メモティック・フォールンナイトであった。
「おはよ、ルミナ」
「おはよう~ルミナたん」
「おはようございます
シャルロットさんとお姉ちゃん」
ルミナが作っているのは
目玉焼きとカリカリのベーコンが合わさった料理
ベーコンエッグという物だ。
香ばしい香りが食欲を唆る。
「お~今日も美味しそうだね~」
「ルミナの料理は毎日食べても飽きないわ
いつもありがとう。」
「あ…ありがとう…ございます…」
褒められたルミナは照れくさそうにしながら顔を真っ赤に染める。
テーブルには、先客として二人の少女が既に存在している。
頬を膨らませているのは
真紅の魔王と同格の戦闘能力を生まれ持ち
ルミナの究極の消滅魔法さえも破壊する。
世界の全てを破壊する禁忌と呼ばれている力を宿し
その禁断の力の暴走を危惧したシャルロットが
己の精神世界に4900000年間幽閉し続け
シャルロットの心の闇と彼女の秘めたる凶暴性や狂気
破壊の神としての人格がシャルロットから分離し誕生した
幼い悪魔のような金髪の美少女
デスルイン・レガリア・ジエンド
そして妹を神様として狂信的に崇拝している
桃色の少女ローザ・ネクロ・ハートネットが座っている。
「ちょっとローザ、なんでアンタがここにいるのよ?」
「フフフ…私の事は気にしないでください。
かわいい妹と同類と妹をたぶらかした猫さんの様子を見に来ただけですので」
「猫って私のことっ!?」
「いえいえ、冗談ですよ、冗談。」
「シャル姉おっそーい!早く食べようよ~」
「それじゃ、いただきま~す!」
「まーす!」
シャルロットは大きな口を開けて
目玉焼きを一口で食べる。
「おいし~やっぱルミナの作るごはんは絶品やな~」
「シャルロット食べながら喋らないの。
何か今こっちに飛んできちゃったわ。」
ローザはシャルロットを見ながら小さく
「かわいい」とホソッと呟いた。
「いや~それにしても、昨日の光ってなんだったんだろうね~」
「確かに三人で頭を同時にぶつけた瞬間
凄い光が出てきた気がするわね。」
前日、三人はふとした拍子に三人の魔力が重なり合ったことを思い出す。
戦闘中にふざけてロケットのように飛んで
頭突きを繰り出していたシャルロットと
二人の頭を同時にぶつかるという事故を起こしていた。
その際に三人は気が付かなかったが
三人の魔力が同時に衝突した事により
膨大な魔力による時空の壁が歪み、小規模な災害を引き起こしていた。
規格外にしてイレギュラーとも言える事故が起こり
三人の力の一部が分離してしまった。
そして、行方を失った魔力は光となり霧散した
かのように思われたが三人の魔力が合わさった結果
この世界に存在し得ない存在が誕生した。
それを知ることになるのは、過去の世界の自分達だと言うことを今はまだ知らない。
朝食を食べ終えた二人は喫茶店を見上げる。
「いや~随分と大きくなったね~このお店も」
「まさかケーキ系のメニューに力を入れた結果
それが大人気になって
あの小さかったお店がこんなに大きくなるなんて
何が起こるか予想出来ないものね。」
「ローザちゃんの教祖様直伝の宣伝効果もありそうだけどね。」
「それでも、ここまで凄いお店に成長出来ちゃったのは
やっぱり、ルミナが作るケーキが美味しいからよね~」
「だね~」
今日で週のはじめから働き続けて五日目
今日を乗り切るとお店は二日間お休み期間に入る。
昨日は特にお客さんが多かったので
ルミナは足りなくなった材料の買い出しに
ルインは部屋に引き籠もってゴロゴロしており
ペルちゃんは虚弱体質を治す方法を探す為に
喫茶店を手伝うことに。
そして我が愛弟子のティナは日課のランニング中
ローザちゃんは出会った頃から続けている殺し屋のお仕事で
暗殺対象を今日も元気に暗殺してます。
捕まえてきた悪い人達を拷問をしながら
殺した大量の死体の処理したりと今日も精を出している。
モルドレッドとシャルロットはお店を任されている。
ここの喫茶店の店員の制服は
白いフリルが付いている可愛らしいメイド服風の衣装だ。
「う~!ルミナちゃんもローザちゃんもおっそーい!」
「早く帰ってこないとお腹が空いて誘惑に負けて
商品のプリンをつまみぐいしそうになる~!」
「やめんかっ!」
「あぴゃっす!?」
ショーケースに入れられたプリンやケーキを見ながら
よだれを垂らしていたシャルロットの頭に
モルドレッドのツッコミの手刀を入れられた。
二人でじゃれ合っていると、鈴が鳴り
二組のお客さんが入ってきた。
「うわ~かわいいお店~!」
「ほんとだね~」
モルドレッドは一組のお客さんを窓際のテーブルに案内しながら
シャルロットはショーケースの商品がほしい
もう一組のお客さんの注文を受けつける。
シャルロットはニコニコとしたスマイルを作り
見た目の可愛らしさと愛らしさを振り撒く。
「期間限定スペシャルプリン二つと
ティラミスココアケーキ二つで2470円になります。」
「店員さん可愛すぎる~!」
「かわいいー!」
「さっきの子も可愛かったけどあの白い子も可愛いな~」
「ほんと、このお店って癒やされるよね~」
金髪の小柄な悪魔的な狂気系幼女のルインと
片目が隠れている白髪の虚弱体質な幼女のペルちゃんは
その可愛らしい容姿にお客さんに大人気な存在なのだ。
このお店を訪れるお客さんは、女性客が8割なのだが
美少女店員を目当てに来る輩もいるが
純粋にここのスイーツやコーヒーを目当てにやってくる方も多く
意外と男性客の数も多かったりする。
モルドレッドは窓際のお客さんにご注文のケーキを持っていく
モルドレッドは、何も無いところで躓いてしまうが
事前にこうなることを察していたシャルロットに支えられる。
シャルロットはドジっ子な姉である
モルドレッドを日夜、影から支えている。
そしていつものように吐血しているペルちゃん
ペルちゃんは慌てて床に飛び散った血を拭いているが
濡れた床で足を滑らせて両足を骨折する。
「イタタ…また足の骨が砕けちゃった」
「うっぷ……」
転んだ衝撃でまた盛大に吐血してしまった。
まあ、いつものようにすぐに治るから大丈夫だろう。
お客さんの数が徐々に減り、誰も居なくなるまで働き続けて
ルミナとローザが用事を終えて帰ってきたことで
後のことは暫く二人に任せて
モルドレッドとシャルロットは休憩することにした。
そして、四人でお店を回していると
気がついたら閉店時間となっており、空が夕焼けで赤く染まっている。
「はあ…はあ…つ…疲れた……」
「お…お母さん達が新婚旅行から帰ってくるまでの辛抱よ…!」
「うへえ……」
「フフフ…よく頑張りましたねシャルロットちゃん」
ローザがシャルロットの頭を撫でていると
「あっ!」
その時、ルミナが何かを思い出したような声を出した。
「す…すみません、皆さん…
今日のお料理に使う肝心の調味料を買ってくるのを忘れてました。」
「しょーがないなぁ、ドジっ子ルミナたんに代わって
ワタシちゃんが買ってくるよ。
今日の夕飯は焼き肉だから、そのタレでしょ?」
「あ、はいそうです。ほんとすみません」
「それじゃ、行ってくるわ!」
シャルロットは駆け出した。
近道となる路地裏を抜けて
屋根の上を走り、跳び、目的地まで最短距離で現着した。
焼肉には欠かせない調味料や
帰りに買食いする用のお菓子を買い終えると
さっきまで夕焼けで明るかったのにもう暗くなってしまっていた。
帰り道の途中にある公園を通ると
ベンチにポツンと一人で座っている幼い女の子がいた。
髪色は淡い薄緑色で可愛らしい猫耳を生やしている
瞳が月の光のように綺麗な黄緑色をした
神秘的な雰囲気さえ感じる不思議な少女だ。
シャルロットは、何故かこの少女に運命的な物を感じてしまい
その不思議な雰囲気をした少女に話しかけることにした。
「ねえ君、こんな所でどうしたの?」
「………」
少女は不思議そうに首を傾けるだけで応えない。
「お母さんとかお父さんはいる?」
「………?」
「あっ、お家どこか分かるかな~?」
…やべえ、無言無表情で何も分からねえ
あっ、お腹空いてるかもしれないし、さっき買ったお菓子をあげよう。
「ほら、これあげる、美味しいよ。」
「……?」
少女はお菓子を見つめているような、気がする。
「えっと…それじゃ、また来るね。バイバイ」
「…………」
少女はシャルロットの背中をジッと見つめている気がした。
「たっだいまー!」
シャルロットが裏口から帰ると、後ろから気配を感じ、振り返る。
「え?」
シャルロットは驚愕といった表情を浮かべる。
そこには、公園で出会った少女がいたのだ。
「あらららら?!ついてきちゃった…」
「もう~勝手についてきちゃったらダメだよ~
お母さんとかが心配してるだろうし」
「おかあ…さん…?」
少女はキョトンといった表情で首をかじける。
「もしかして…君…家族がいないの…?」
少女は不思議な顔をしながら頷く。
「…そっか」
「あら?もう帰ってきてたのね?」
「あわわわ…た…ただいまお姉ちゃん!」
咄嗟に少女を扉の影に隠す。
「どうしたの凄い汗だけどっ!?」
「あはは、こここれは走ってきたからだよ~」
「もう、そんなに楽しみにしてたの焼き肉?」
「うんっ!そうだよっ!」
「そうね、皆も焼き肉によだれを垂らして
シャルロットを待っていたんだから
早く制服を着替えて来なさいよ?」
「は…はーーい!」
「ふぅ…」
シャルロットは少女の肩を掴むと
「いい?私がなんとかするからちゃんとついてきてね?」
「………うん」
シャルロットは二階の部屋に素早く到着し
扉を開けようとしたその瞬間、扉が開いた。
「ヘアっ!?」
「るるる…ルミナちゃん、何故こんなところに!?」
「あっ…えっと…その…」
「モルドレッドさんのお洋服を拝借…ゴホン
洗濯機に持っていく所ですが、どこかおかしかったでしょうか?」
「そ…そーだよね~なんにもおかしい所はないわな~
あはははは!」
ここは目を背けて、肯定しなければ、アカン、殺られる気がする。
そのままルミナはそそくさと一階のリビングに行く。
「あっ、やっべえぞ」
「あれ?会わない…?あの子どこいった?」
皆に気づかれないように探すが見つからない
少女が見つからないまま
シャルロットは焼き肉を食べることになった。
(あの子…どこにいったんだろう…?)
あの子を見ていると何故か胸がざわつく。
説明が出来ないはじめての感覚だ。
恋とか一目惚れに似ているような気がするのだが
あの子の事が気になってしまい
焼き肉と山盛りの白米という最強コンビを前にしても
普段より箸が進まない、気がする。
爆速で箸を動かしながら
山のように盛られた白米と大量の肉を食べ終えると
シャルロットは颯爽と二階に駆け出して消えていく。
「ごちそうさまっ!」
「シャルロット…?」
「今のシャルロットさん…何かが可笑しいですね。」
二階の自室に戻ると、自分のベットに座っている
あの少女がいた。
シャルロットはあの少女を見た瞬間
何故か、少女を抱きしめたくなる衝動に駆られ
気がついたら少女を抱きしめていた。
「よ、よかった~!無事だった~
急にいなくなるからびっくりしたじゃんか~」
「……?」
ぐう…と少女のお腹の虫が泣いた。
「……おなか、すいた。」
「ああ、そうだよね、お腹空いたよね。
えっと~なにかあったかな~?
あっ、実はお店のケーキとかプリンを持ってきたんだけど食べる?」
少女はプリンに顔を近づけると無表情ながら喜んだ顔をしている気がした。
「……おいしそう。 」
「…食べさせてあげようか?」
シャルロットがスプーンでプリンを掬い
少女にプリンを食べさせてやる。
「……おいしい」
「そっか、よかった。」
「あっ、お菓子だけじゃ喉が乾くよね?
なにか飲みたい物はない?持ってくるよ。」
「……ミルク」
「ミルクか…マズイな、今切らしてるんだよなぁ」
「………何がマズイ?」
「んあっ?そりゃあ…って」
「のわああああああ!?びっくりした」
背後に音も無く立っていた
この少女と同じくらい背が小さく幼く見える
灰と銀の髪に地獄の業火のような赤黒い瞳の少女の名は、久遠零
彼女に見つかってしまっては、隠し事等出来るはずもなく
この少女のことを話してみることにした。
「……なるほど、大体分かった。」
「…それで、お姉ちゃんは
どうして隠れてこっそりペットを飼うような行動をしたの?」
「いえ、だってさ、こういうのって大体断られそうじゃん。」
「確かにアニメや漫画とかだと最初は断わられる展開が多いが…」
「とりあえず、彼女を私達の仲間に加えるのは
お前に決定権があるのだから、お前の好きにすればいいと思うが
迷い人かそれとも、捨て子かは分からないが
この少女のことは、ローザに任せた方がいいだろうな。」
「確かに、無口な子だけど
ローザなら、なんとか出来る気がする。」
「…というわけで、この子のことをよろしく頼むよ」
「…しょうがないですねえ」
「わあ~とっても可愛らしい子ですねえ」
ローザは少女の顔を覗き込むと
少女はシャルロットの影に隠れてしまった。
ローザは異能の力で彼女の心を覗き込むが
何も無いのだ。
真っ白なキャンパス、エンプティーホワイト
情報が無く、空白しか存在しない空っぽな魂
形が曖昧になっている不安定な魂と意志が
太陽の光を反射させて輝く月のように周囲の情報を取り込んで
徐々に形を作っているような感覚。
「うーん…はじめてですよ。
心を読んでこんな不思議な感覚になる子は。
ですが、安心してください、良い子なのは確かですから
この子のことはひとまずは私に任せてください。」
ローザは、久遠零やその他のメンバーが住んでいる
現代日本の方に存在する
第一拠点である一軒家に少女を連れてきた。
少女は異界の様子に目に映る物全てを警戒してしまい
久遠零にじっと見つめられていたのだが
視線を嫌がって物陰に隠れてしまう。
「うむ、これはなかなか…」
「獣人の女の子ですか可愛いですね~プギャッ!?」
ティナが可愛がろうと近づくがネコパンチを食らってしまう。
三人で少女の面倒を数日見ることにした。
「その前に、まずは洗って綺麗な服に着替えさせましょう。」
ローザは少女をお風呂場に連れてきた。
ローザは少女の服を脱がせるが
少女は何をされても無反応でされるがまま
一糸纏わぬ姿にされてしまう。
「それじゃ、シャンプーして綺麗にしましょうね~」
湯船に浸からせる前に
シャンプーして体の汚れを取ろうと
シャワーを少女に向けようとするが
その瞬間、少女が強い反応を示した。
四足歩行のような体制を取り、猫のような声を出して威嚇している。
「シャー!!」
「あら、シャワーは苦手でしたか?
でも、最初は苦手でもそのうち慣れますから。」
「ニャーッッ!!!!!?????」
髪を濡らした後、しっかりシャンプーで洗い
体も泡々にした生地が柔らかいタオルで念入りに綺麗にしていく。
猫の尻尾も優しく撫でるように洗い
洗い終わったら、少女を湯船に浸からせて、体を芯から温める。
そして、少女にパジャマを着せる。
シャルロットが幼い頃に着ていた物だが
それでも少しサイズが大きくダボダボだ。
少女はシャルロットの匂いが気に入ったようで
色んな人のパジャマの中から
このパジャマの匂いを嗅いですぐにこのパジャマに決めたのだ。
「ああ…かわいい…なんて素晴らしいのでしょう…」
可愛らしさに悶ているローザが
少女に視線を移すとベットで既に眠っていた。
「あらら、もう眠っちゃいましたか。」
「きっとはじめての場所で疲れちゃったんでしょう。」
「それでは、おやすみなさい。」
……シャルロットはあの少女のことが気になって眠れずにいた。
「……あの子、大丈夫かな?」
「心配いらないんじゃない?」
「そうかな…そうだといいんだけど」
「……あの子、もう寝たかな?」
「…そんなにあの子のことが心配?」
「うん…向こうの家でも良い子にしてると良いんだけどね」
「大丈夫よ、きっとあっちの皆とも仲良くしてるわよ。
それに、数日向こうで預かるだけなんだし
すぐに会えるわよ。」
「そう…だよね。」
「おやすみ、お姉ちゃん」
「おやすみ、シャルロット」
名前も分からない、親がいるのかさえ分からない
そんな不思議な少女との出会いが
世界に大きな変革をもたらすことになるとは
この時、誰も予想出来なかったのでした。
未来とも呼べるし現在とも言える。
そんな未来でも、朝というものは不変なもので
目覚まし時計はジリリリリリとけたたましい音を鳴らし
窓から差し込む陽だまりに照らされて
幸せな夢の世界から現実に戻される二人の少女。
仲良く抱き合っている二人の少女は目を覚ます。
モルドレッドは目を覚ますと
まず、ジリリリリリと五月蝿く鳴っている目覚まし時計を止め
お腹を出しながら寝言を言っている寝相が悪い妹
シャルロットの体を揺さぶる。
「シャルロットォ起きて~…朝よ~」
寝起きで頭と舌が回らないまま妹を揺さぶるが
シャルロットは一向に起きる気配がない。
「もう…しょうがないんだから…」
「こうなったら…」
モルドレッドはシャルロットのお腹をくすぐることにした。
「あは…あはははは!」
「もう…お姉ちゃんくすぐったいよ~」
「シャルロットがなかなか起きないからでしょ」
「あはは~」
根室から出て階段を下り、一階のリビングに入ると
そこにいたのは、朝食を作っている
エプロン姿の白銀の少女
ルミナス・メモティック・フォールンナイトであった。
「おはよ、ルミナ」
「おはよう~ルミナたん」
「おはようございます
シャルロットさんとお姉ちゃん」
ルミナが作っているのは
目玉焼きとカリカリのベーコンが合わさった料理
ベーコンエッグという物だ。
香ばしい香りが食欲を唆る。
「お~今日も美味しそうだね~」
「ルミナの料理は毎日食べても飽きないわ
いつもありがとう。」
「あ…ありがとう…ございます…」
褒められたルミナは照れくさそうにしながら顔を真っ赤に染める。
テーブルには、先客として二人の少女が既に存在している。
頬を膨らませているのは
真紅の魔王と同格の戦闘能力を生まれ持ち
ルミナの究極の消滅魔法さえも破壊する。
世界の全てを破壊する禁忌と呼ばれている力を宿し
その禁断の力の暴走を危惧したシャルロットが
己の精神世界に4900000年間幽閉し続け
シャルロットの心の闇と彼女の秘めたる凶暴性や狂気
破壊の神としての人格がシャルロットから分離し誕生した
幼い悪魔のような金髪の美少女
デスルイン・レガリア・ジエンド
そして妹を神様として狂信的に崇拝している
桃色の少女ローザ・ネクロ・ハートネットが座っている。
「ちょっとローザ、なんでアンタがここにいるのよ?」
「フフフ…私の事は気にしないでください。
かわいい妹と同類と妹をたぶらかした猫さんの様子を見に来ただけですので」
「猫って私のことっ!?」
「いえいえ、冗談ですよ、冗談。」
「シャル姉おっそーい!早く食べようよ~」
「それじゃ、いただきま~す!」
「まーす!」
シャルロットは大きな口を開けて
目玉焼きを一口で食べる。
「おいし~やっぱルミナの作るごはんは絶品やな~」
「シャルロット食べながら喋らないの。
何か今こっちに飛んできちゃったわ。」
ローザはシャルロットを見ながら小さく
「かわいい」とホソッと呟いた。
「いや~それにしても、昨日の光ってなんだったんだろうね~」
「確かに三人で頭を同時にぶつけた瞬間
凄い光が出てきた気がするわね。」
前日、三人はふとした拍子に三人の魔力が重なり合ったことを思い出す。
戦闘中にふざけてロケットのように飛んで
頭突きを繰り出していたシャルロットと
二人の頭を同時にぶつかるという事故を起こしていた。
その際に三人は気が付かなかったが
三人の魔力が同時に衝突した事により
膨大な魔力による時空の壁が歪み、小規模な災害を引き起こしていた。
規格外にしてイレギュラーとも言える事故が起こり
三人の力の一部が分離してしまった。
そして、行方を失った魔力は光となり霧散した
かのように思われたが三人の魔力が合わさった結果
この世界に存在し得ない存在が誕生した。
それを知ることになるのは、過去の世界の自分達だと言うことを今はまだ知らない。
朝食を食べ終えた二人は喫茶店を見上げる。
「いや~随分と大きくなったね~このお店も」
「まさかケーキ系のメニューに力を入れた結果
それが大人気になって
あの小さかったお店がこんなに大きくなるなんて
何が起こるか予想出来ないものね。」
「ローザちゃんの教祖様直伝の宣伝効果もありそうだけどね。」
「それでも、ここまで凄いお店に成長出来ちゃったのは
やっぱり、ルミナが作るケーキが美味しいからよね~」
「だね~」
今日で週のはじめから働き続けて五日目
今日を乗り切るとお店は二日間お休み期間に入る。
昨日は特にお客さんが多かったので
ルミナは足りなくなった材料の買い出しに
ルインは部屋に引き籠もってゴロゴロしており
ペルちゃんは虚弱体質を治す方法を探す為に
喫茶店を手伝うことに。
そして我が愛弟子のティナは日課のランニング中
ローザちゃんは出会った頃から続けている殺し屋のお仕事で
暗殺対象を今日も元気に暗殺してます。
捕まえてきた悪い人達を拷問をしながら
殺した大量の死体の処理したりと今日も精を出している。
モルドレッドとシャルロットはお店を任されている。
ここの喫茶店の店員の制服は
白いフリルが付いている可愛らしいメイド服風の衣装だ。
「う~!ルミナちゃんもローザちゃんもおっそーい!」
「早く帰ってこないとお腹が空いて誘惑に負けて
商品のプリンをつまみぐいしそうになる~!」
「やめんかっ!」
「あぴゃっす!?」
ショーケースに入れられたプリンやケーキを見ながら
よだれを垂らしていたシャルロットの頭に
モルドレッドのツッコミの手刀を入れられた。
二人でじゃれ合っていると、鈴が鳴り
二組のお客さんが入ってきた。
「うわ~かわいいお店~!」
「ほんとだね~」
モルドレッドは一組のお客さんを窓際のテーブルに案内しながら
シャルロットはショーケースの商品がほしい
もう一組のお客さんの注文を受けつける。
シャルロットはニコニコとしたスマイルを作り
見た目の可愛らしさと愛らしさを振り撒く。
「期間限定スペシャルプリン二つと
ティラミスココアケーキ二つで2470円になります。」
「店員さん可愛すぎる~!」
「かわいいー!」
「さっきの子も可愛かったけどあの白い子も可愛いな~」
「ほんと、このお店って癒やされるよね~」
金髪の小柄な悪魔的な狂気系幼女のルインと
片目が隠れている白髪の虚弱体質な幼女のペルちゃんは
その可愛らしい容姿にお客さんに大人気な存在なのだ。
このお店を訪れるお客さんは、女性客が8割なのだが
美少女店員を目当てに来る輩もいるが
純粋にここのスイーツやコーヒーを目当てにやってくる方も多く
意外と男性客の数も多かったりする。
モルドレッドは窓際のお客さんにご注文のケーキを持っていく
モルドレッドは、何も無いところで躓いてしまうが
事前にこうなることを察していたシャルロットに支えられる。
シャルロットはドジっ子な姉である
モルドレッドを日夜、影から支えている。
そしていつものように吐血しているペルちゃん
ペルちゃんは慌てて床に飛び散った血を拭いているが
濡れた床で足を滑らせて両足を骨折する。
「イタタ…また足の骨が砕けちゃった」
「うっぷ……」
転んだ衝撃でまた盛大に吐血してしまった。
まあ、いつものようにすぐに治るから大丈夫だろう。
お客さんの数が徐々に減り、誰も居なくなるまで働き続けて
ルミナとローザが用事を終えて帰ってきたことで
後のことは暫く二人に任せて
モルドレッドとシャルロットは休憩することにした。
そして、四人でお店を回していると
気がついたら閉店時間となっており、空が夕焼けで赤く染まっている。
「はあ…はあ…つ…疲れた……」
「お…お母さん達が新婚旅行から帰ってくるまでの辛抱よ…!」
「うへえ……」
「フフフ…よく頑張りましたねシャルロットちゃん」
ローザがシャルロットの頭を撫でていると
「あっ!」
その時、ルミナが何かを思い出したような声を出した。
「す…すみません、皆さん…
今日のお料理に使う肝心の調味料を買ってくるのを忘れてました。」
「しょーがないなぁ、ドジっ子ルミナたんに代わって
ワタシちゃんが買ってくるよ。
今日の夕飯は焼き肉だから、そのタレでしょ?」
「あ、はいそうです。ほんとすみません」
「それじゃ、行ってくるわ!」
シャルロットは駆け出した。
近道となる路地裏を抜けて
屋根の上を走り、跳び、目的地まで最短距離で現着した。
焼肉には欠かせない調味料や
帰りに買食いする用のお菓子を買い終えると
さっきまで夕焼けで明るかったのにもう暗くなってしまっていた。
帰り道の途中にある公園を通ると
ベンチにポツンと一人で座っている幼い女の子がいた。
髪色は淡い薄緑色で可愛らしい猫耳を生やしている
瞳が月の光のように綺麗な黄緑色をした
神秘的な雰囲気さえ感じる不思議な少女だ。
シャルロットは、何故かこの少女に運命的な物を感じてしまい
その不思議な雰囲気をした少女に話しかけることにした。
「ねえ君、こんな所でどうしたの?」
「………」
少女は不思議そうに首を傾けるだけで応えない。
「お母さんとかお父さんはいる?」
「………?」
「あっ、お家どこか分かるかな~?」
…やべえ、無言無表情で何も分からねえ
あっ、お腹空いてるかもしれないし、さっき買ったお菓子をあげよう。
「ほら、これあげる、美味しいよ。」
「……?」
少女はお菓子を見つめているような、気がする。
「えっと…それじゃ、また来るね。バイバイ」
「…………」
少女はシャルロットの背中をジッと見つめている気がした。
「たっだいまー!」
シャルロットが裏口から帰ると、後ろから気配を感じ、振り返る。
「え?」
シャルロットは驚愕といった表情を浮かべる。
そこには、公園で出会った少女がいたのだ。
「あらららら?!ついてきちゃった…」
「もう~勝手についてきちゃったらダメだよ~
お母さんとかが心配してるだろうし」
「おかあ…さん…?」
少女はキョトンといった表情で首をかじける。
「もしかして…君…家族がいないの…?」
少女は不思議な顔をしながら頷く。
「…そっか」
「あら?もう帰ってきてたのね?」
「あわわわ…た…ただいまお姉ちゃん!」
咄嗟に少女を扉の影に隠す。
「どうしたの凄い汗だけどっ!?」
「あはは、こここれは走ってきたからだよ~」
「もう、そんなに楽しみにしてたの焼き肉?」
「うんっ!そうだよっ!」
「そうね、皆も焼き肉によだれを垂らして
シャルロットを待っていたんだから
早く制服を着替えて来なさいよ?」
「は…はーーい!」
「ふぅ…」
シャルロットは少女の肩を掴むと
「いい?私がなんとかするからちゃんとついてきてね?」
「………うん」
シャルロットは二階の部屋に素早く到着し
扉を開けようとしたその瞬間、扉が開いた。
「ヘアっ!?」
「るるる…ルミナちゃん、何故こんなところに!?」
「あっ…えっと…その…」
「モルドレッドさんのお洋服を拝借…ゴホン
洗濯機に持っていく所ですが、どこかおかしかったでしょうか?」
「そ…そーだよね~なんにもおかしい所はないわな~
あはははは!」
ここは目を背けて、肯定しなければ、アカン、殺られる気がする。
そのままルミナはそそくさと一階のリビングに行く。
「あっ、やっべえぞ」
「あれ?会わない…?あの子どこいった?」
皆に気づかれないように探すが見つからない
少女が見つからないまま
シャルロットは焼き肉を食べることになった。
(あの子…どこにいったんだろう…?)
あの子を見ていると何故か胸がざわつく。
説明が出来ないはじめての感覚だ。
恋とか一目惚れに似ているような気がするのだが
あの子の事が気になってしまい
焼き肉と山盛りの白米という最強コンビを前にしても
普段より箸が進まない、気がする。
爆速で箸を動かしながら
山のように盛られた白米と大量の肉を食べ終えると
シャルロットは颯爽と二階に駆け出して消えていく。
「ごちそうさまっ!」
「シャルロット…?」
「今のシャルロットさん…何かが可笑しいですね。」
二階の自室に戻ると、自分のベットに座っている
あの少女がいた。
シャルロットはあの少女を見た瞬間
何故か、少女を抱きしめたくなる衝動に駆られ
気がついたら少女を抱きしめていた。
「よ、よかった~!無事だった~
急にいなくなるからびっくりしたじゃんか~」
「……?」
ぐう…と少女のお腹の虫が泣いた。
「……おなか、すいた。」
「ああ、そうだよね、お腹空いたよね。
えっと~なにかあったかな~?
あっ、実はお店のケーキとかプリンを持ってきたんだけど食べる?」
少女はプリンに顔を近づけると無表情ながら喜んだ顔をしている気がした。
「……おいしそう。 」
「…食べさせてあげようか?」
シャルロットがスプーンでプリンを掬い
少女にプリンを食べさせてやる。
「……おいしい」
「そっか、よかった。」
「あっ、お菓子だけじゃ喉が乾くよね?
なにか飲みたい物はない?持ってくるよ。」
「……ミルク」
「ミルクか…マズイな、今切らしてるんだよなぁ」
「………何がマズイ?」
「んあっ?そりゃあ…って」
「のわああああああ!?びっくりした」
背後に音も無く立っていた
この少女と同じくらい背が小さく幼く見える
灰と銀の髪に地獄の業火のような赤黒い瞳の少女の名は、久遠零
彼女に見つかってしまっては、隠し事等出来るはずもなく
この少女のことを話してみることにした。
「……なるほど、大体分かった。」
「…それで、お姉ちゃんは
どうして隠れてこっそりペットを飼うような行動をしたの?」
「いえ、だってさ、こういうのって大体断られそうじゃん。」
「確かにアニメや漫画とかだと最初は断わられる展開が多いが…」
「とりあえず、彼女を私達の仲間に加えるのは
お前に決定権があるのだから、お前の好きにすればいいと思うが
迷い人かそれとも、捨て子かは分からないが
この少女のことは、ローザに任せた方がいいだろうな。」
「確かに、無口な子だけど
ローザなら、なんとか出来る気がする。」
「…というわけで、この子のことをよろしく頼むよ」
「…しょうがないですねえ」
「わあ~とっても可愛らしい子ですねえ」
ローザは少女の顔を覗き込むと
少女はシャルロットの影に隠れてしまった。
ローザは異能の力で彼女の心を覗き込むが
何も無いのだ。
真っ白なキャンパス、エンプティーホワイト
情報が無く、空白しか存在しない空っぽな魂
形が曖昧になっている不安定な魂と意志が
太陽の光を反射させて輝く月のように周囲の情報を取り込んで
徐々に形を作っているような感覚。
「うーん…はじめてですよ。
心を読んでこんな不思議な感覚になる子は。
ですが、安心してください、良い子なのは確かですから
この子のことはひとまずは私に任せてください。」
ローザは、久遠零やその他のメンバーが住んでいる
現代日本の方に存在する
第一拠点である一軒家に少女を連れてきた。
少女は異界の様子に目に映る物全てを警戒してしまい
久遠零にじっと見つめられていたのだが
視線を嫌がって物陰に隠れてしまう。
「うむ、これはなかなか…」
「獣人の女の子ですか可愛いですね~プギャッ!?」
ティナが可愛がろうと近づくがネコパンチを食らってしまう。
三人で少女の面倒を数日見ることにした。
「その前に、まずは洗って綺麗な服に着替えさせましょう。」
ローザは少女をお風呂場に連れてきた。
ローザは少女の服を脱がせるが
少女は何をされても無反応でされるがまま
一糸纏わぬ姿にされてしまう。
「それじゃ、シャンプーして綺麗にしましょうね~」
湯船に浸からせる前に
シャンプーして体の汚れを取ろうと
シャワーを少女に向けようとするが
その瞬間、少女が強い反応を示した。
四足歩行のような体制を取り、猫のような声を出して威嚇している。
「シャー!!」
「あら、シャワーは苦手でしたか?
でも、最初は苦手でもそのうち慣れますから。」
「ニャーッッ!!!!!?????」
髪を濡らした後、しっかりシャンプーで洗い
体も泡々にした生地が柔らかいタオルで念入りに綺麗にしていく。
猫の尻尾も優しく撫でるように洗い
洗い終わったら、少女を湯船に浸からせて、体を芯から温める。
そして、少女にパジャマを着せる。
シャルロットが幼い頃に着ていた物だが
それでも少しサイズが大きくダボダボだ。
少女はシャルロットの匂いが気に入ったようで
色んな人のパジャマの中から
このパジャマの匂いを嗅いですぐにこのパジャマに決めたのだ。
「ああ…かわいい…なんて素晴らしいのでしょう…」
可愛らしさに悶ているローザが
少女に視線を移すとベットで既に眠っていた。
「あらら、もう眠っちゃいましたか。」
「きっとはじめての場所で疲れちゃったんでしょう。」
「それでは、おやすみなさい。」
……シャルロットはあの少女のことが気になって眠れずにいた。
「……あの子、大丈夫かな?」
「心配いらないんじゃない?」
「そうかな…そうだといいんだけど」
「……あの子、もう寝たかな?」
「…そんなにあの子のことが心配?」
「うん…向こうの家でも良い子にしてると良いんだけどね」
「大丈夫よ、きっとあっちの皆とも仲良くしてるわよ。
それに、数日向こうで預かるだけなんだし
すぐに会えるわよ。」
「そう…だよね。」
「おやすみ、お姉ちゃん」
「おやすみ、シャルロット」
名前も分からない、親がいるのかさえ分からない
そんな不思議な少女との出会いが
世界に大きな変革をもたらすことになるとは
この時、誰も予想出来なかったのでした。
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