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24話 ロリ魔王、魔皇の授業を受ける。

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夏休みが終わり、オメガを討ち滅ぼして
平和な世界となった魔界ダークネスト

日々の大半の時間は惰眠を貪り
たまに万屋の依頼や喫茶店の手伝いをして
退屈を紛らわすことを頑張りながら、平凡な日常を過ごしていた。




あの騒動から私が始祖の魔王ではないかと気づくのかと思っていたが
何事も起きずにもう一週間が経過していた。

オメガの演説もなんだったんだ……あいつ……レベルにまで
話題性が無くなってきており皆がもはや忘れかけているし

魔獣の襲撃にあった地域より遠い場所の魔族は
この騒動のことさえも知らなかったらしい。






そして、エクシア・リペア・アミュレット先生が

「えーっと……みなさ~ん!
今から重大なお知らせがあります~!

ゼロちゃんやシャルロットちゃんも起きてくださ~い!」

「んあ?」

「………うにゅ…………な~に……?」


「な…なななななんとーーー!
始祖の魔王が転生し復活したという噂は
皆さんご存知と思われますがなんとその件で

死霊の魔皇デッドキング・ネクロ・ネクロムノーム様が
こちらにいらしてくださって
なんとなんと!二日後に特別授業の講師として
この学院に来てくれることとなったのです~!」

なにやら、生徒達がざわつきはじめたな?

デッドキング・ネクロ・ネクロムノームか……

たしか、配下のひとりにネクロムという名前の悪魔がいたな。

あいつ、今はそんな名前になってるのか……
たしか、ジャンヌとアリスにとっては
血筋的には真祖となる悪魔だったか……?



「えっ!?ネクロム様がくるのっ!!!」

「……………ん…………。」

「ふーん?で、そいつは誰なのだ?
生徒達の反応からして、随分と大物っぽいが?」


「…………私達……ネクロノームの始祖………。」











そして、数日後…………………

私達が教室に入ると知らない間に席替えでもあったのか
自席の右隣にいつもと違う顔があった。



「おはよう」

先に登校していたモルお姉ちゃんは
当たり前のような表情を浮かべ、モルちゃんがそう挨拶してきた。



「あれ……モルちゃんの席ってそこだったっけ?」



「先生に言って変えてもらったのよ。
班員同士で固まってた方が楽でしょ?」


あ~確かに!なにかと移動する手間は省けていいね。

私は席に座り、隣にいたジャンヌに声をかけた。



「おはようジャンヌ」



「……おはよう……」


いつも通りの淡々とした声でジャンヌは挨拶する。



「そういえば、夏休みの間に聞こうとしてたけどずっと忘れていたわ。
シャルロット、わたしの班員だった三十人くらいいた
あの人たちはどうしたの?」



「どうしたというと………?」



「わたしがあなたの班に入ったから
一緒に班に入ろうとした人がいたはずだわ」



確かに、何人かには声をかけられたな。



「ああ~そういえばそんな奴らがいたな~忘れてた。
全員断ったわ」



「はあっーー!?なんでよ?」



なんでと言われてましてもな。



「仲間にしたい気分じゃなかった……それだけ。」



モルドレッドは唖然とする。



「特に困らないだろうしいいでしょ~?
私とお前たちがいれば、それでいいじゃん?」






「班別対抗試験はそれでいいかもしれないけど
クラス対抗試験は五人以上、学年別対抗試験は七人以上いないと参加できないのよ?」


へえ~?。そんな決まりがあったのかー

というか、対抗試験ってそんなに色々あったんだ?


爆睡してて何も聞いてなかったな~

いくらわたしでも参加できなければ勝てないからそれは困る。


えーと、班員は
わたし、モル、ゼロ、ティナ、ジャンヌ、アリス、ローザ、ネムリン……

うん、数はギリギリ足りてるな。


「まあ、もう人数足りてるしどうでもよくない?」


「アナタ……相変わらずね。」


呆れたようにモルドレッドは言った。



ちょうど授業開始の鐘が鳴り、ドアが開く。
エクシア先生が入ってきた。

その後ろに、まるで誰もが死神と聞いて思い浮かべるような
黒の法服とボロボロの黒い外套を纏い、
死神の権能を宿した大剣と大鎌を両手に
大鎌を杖のように使いツカツカとしながらゆっくりと歩き
髑髏の瞳となる部分には
青白い炎と深緑色の炎が灯っており、オッドアイだ。
王冠のようにも見える帽子を被った神話の悪魔がいる。
外見は完全に骸骨種の悪魔だ。



確か、わたしの配下のうちの一人
死神にして不死の悪魔ネクロムは死霊術とか暗殺とか
そういうのを得意としていた気がするが

死霊術と魔力量と魔導の腕は確かだったが
反面、戦闘能力は大して高くなかったはずだが

この時代基準では相当な力と地位があるんだろう。
普段は騒がしい生徒たちも
ネクロムが姿を現した途端に静まり返った。


いや、これは奴から発せられる魔力にもよるか。
ネクロムの強大すぎる死神の魔力にあてられて
知らず知らず畏怖してしまっているわけだ。



「この前お話しした通り、本日は
死霊魔帝皇デッドキング・ネクロ・ネクロムノーム様による
恐らく、二度とは聞けない魔導の深淵に迫る授業になりますから
心して聞いてくださいね~!特に………」



エクシア先生はわたしとゼロの方をじっと見る。



「シャルロットちゃんとゼロちゃんは気をつけてくださいねっ!?
ネクロム様の機嫌を損ねたら……首が飛ぶかもしれないのでっ……!
くれぐれも……くれぐれも………!!!
授業中に居眠りしたり、失礼のないようにお願いしますね!」


まったく、わざわざ釘を刺してくるとは。

まさかこの私がそこまで礼儀知らずだと
でも思っているのだろうか?



「あははっ!心配するな。エクシア先生
言われてなくても、それぐらいはわかっている」

「……………うにゅ……今日だけは……
かんばって…耐えるので…………大丈夫………です。」


「なら、いいのですが……」



やれやれ、なにを心配しているのやら。

ああ、ついでだ。とりあえず、挨拶をしておくか。


シャルロットとゼロは同時にすっと立ち上がった。



「よう、ネクロム、久しぶりだな!
随分と老けておっさんになったように見えるな?」

「…………はじめまして………ホネおじさん…??」


「アババババババババ…………!!!?」

エクシア先生は顎が外れそうなぐらいに口を開き
驚愕といった表情、震えながら驚きをあらわにした。



「あああ、あ……あぁぁ…………あばばばば……

シャルロット・レガリアちゃんっ!?
クオン・レイちゃんっ!!!??
ホネおじさんっっっ!?

あなたたち、ネクロム様になんという気安い口の利き方をしてるんですか~!!??
魔皇様にそんな言い方したら………めっ!なんですよーー!?」


ひそひそと黒服の生徒たちの話し声が聞こえる。



「……やばい……やばいぞ、あいつら、今度こそ確実に死んだ……」



「ああ、さすがに死霊魔帝皇様にまで魔王ぶるのはやりすぎだろ……」

「ていうか、ネクロム様が怒ったら、俺たちの命まで危ないんじゃ……」


「ちょ、勘弁してくれよ、自称魔王……」



雑音は気にせず、私はネクロムに魔眼を働かせる。

確かに見覚えのある魔力を感じる。

私の配下の一人のネクロムと同一人物に違いないだろう。
ほぼ、ではあるが。
当時とは違いなにやら変化している変な箇所を複数見つけたが
特に気にすることではないであろう。



「あっ、ネクロム様。
も、申し訳ございませんでしたっ!
シャルロット・レガリアは
ただちに補習という形でこの授業から除名にいたしますのでっ……
なので……私の生徒を殺さないでください!!」



「うむ………よい……」



ここまで無口だったネクロムが口を開いた。



「久しぶりだと……言ったな……?」



ネクロムが私に視線を向ける。



「二千年ぶりだが……覚えていないか?」



「二千年………?ああっ。なるほど。どうりで」



合点がいったように、ネクロムがうなずく。



「残念ながら、我は二千年前の記憶を失ってしまった。
覚えているのはただ一つ、我が主、始祖の魔王のことのみだ」



「ならば、わたしのことを覚えているはずなんだが?」

「…………うゆ…………………。」


「……そなたらは、始祖に縁のある者か?」



ふむふむ。なるほど……なるほど?

始祖の魔王のことは覚えている。
だが、始祖本人であるわたしが何者かはわからない。

つまり、始祖の魔王をわたしではない
他の誰かだと信じているわけか?

まさか……二千年、年を取って単純にボケているわけではあるまいな?




なるほど、あの違和感を感じたおかしな箇所
あれは……オメガによって記憶改竄か洗脳でもされたか…
もしくは………そもそもネクロムの時間を巻き戻し
私と出会う前まで時を巻き戻し
私と出会ったこと自体を無くしたか………?
とにかく、今のネクロムに感じる違和感には
オメガが関与していたのは間違いないであろう。



記憶を失ったことが関係しているのかもしれないが

妙だな。学院のトップは魔皇。
仮にネクロムが本当に記憶を忘れていたとしても
その他の魔皇全員も記憶を忘れていなければ
それはありえないはずである、さすがに偶然ではあるまい。

どうやら、いつの間にか魔皇とやらは全員
主亡き今も、オメガ………ドラ息子の傀儡にされているようだ。




「確かに、そなたの魔力には懐かしさを感じる」


「そうか?」


「ああ、二千年前の知り合いであったことは間違いないであろう」


会話だけではわからないな。


「それで……シャルロットと言ったか……?我になにか用か?」


「なに、用というほどのことでもないのだけど
ホネおじいちゃんがボケて忘れているのなら
思い出させてやろうと思ってな?」



生徒たちや先生、モルにアリスとジャンヌが
心配そうに見守る中
わたしと久遠零はまっすぐネクロムのもとへ歩いていく。



そして、おもむろに二人でその髑髏の顔面を鷲掴みにした。

その瞬間、教室中がパニックに陥った。



「ちょっ、ちょ、ちょちょちょ、シャルロットちゃんっっ!!?ゼロちゃんっっっ!?!?!?」



「やっちまったっ! あいつら、やっちまったぞーーーーーっ!!」


後ろでぎゃーぎゃーと騒がしい生徒たちの言葉が響く中、
わたしは手の平に魔力を集めながら創世の力を発動させようとする。



「思い出せ。骸骨野郎……自らの主を。
本物の主の名はシャルロット・レガリア……だっ!」


創世の力によりネクロムの記憶を辿り
どんな遠い過去の記憶をも無理矢理思い出させる。


だが、予想通り、まるで手応えがなかった。



「……無駄だ。この頭に記憶は残っておらぬ。
思い出せぬのではない。消えたのだ。
完全に失われたものは、戻せないのである……。」



「……………ならば、これはどうだ?」

久遠零は多重魔法陣を展開し、
時を司る神の魔法を行使し
尊厳な祝福の鐘の音を教室に響き渡らせながら
シャルロットの創世の力を複製し何重にも重ねがけした。

シャルロット・レガリアの半身である
久遠零はシャルロットと同時に魔力を使うことにより
お互いの魔力が共鳴する。

そして、シャルロットが覚えている限りの
ネクロムの記憶を創造し流し込み強制的に思い出させる。


「……これは……なにをしているのだ……?
我の頭に記憶が……映像が入り込んでくる……??」



「貴様の頭から記憶が完全に消え去っているのなら
局所的に時間を遡り、二千年前の貴様の記憶を創世の魔法で造り
無理矢理にでも引っ張り出すだけのことよっ。」



「……馬鹿な……! 時間を遡るだと……?
時をも超越する大魔法が存在するというのか……!?」

二千年前のネクロムの記憶と
魔王アルビオンを起源として
それを遡ることで時間を逆行する時間操作を成立させた。

ネクロムの頭には、二千年前の体験が走馬燈のように流れただろう。



「……確かに我は記憶を二千年遡った……」



だが、なかった。



二千年前にも、ネクロムの頭には魔王アルビオンの記憶はなかった。

無論、零が引っ張り出した記憶はネクロムの頭に流れるのみで
私はその内容を視ることは出来なかったけど

それでも名前ぐらいはわかるものなのだが
零に聞いたが、ネクロムの記憶の中には
どこを探しても魔王アルビオンの名はなかったらしい。



代わりに何度も記憶に表れたのは
魔王ティアナ・オメガ・ヘルティアロードという存在のみだった。



「なぜ、記憶が戻らぬ?」



「………………ホネおじさんの記憶は
二千年前に遡って綺麗に消されたということだ。
いつの時点でかはわからないが」



簡単に言えば、オメガの
【ジ・エンド・ワールド・リバース】によって過去が改竄された。
ネクロムの頭には、初めから魔王アルビオンの記憶がなかったことにされたのだ。


やれやれ、死してなお、厄介な相手だな。

さすがのわたしも二千年前に起きたことにまでは手が出せないからな。
やりやがるなドラ息子。


「なるほど。しかし、礼を言おう、シャルロットとやら。
それがわかっただけでも収穫だ。
我に敵対する何者かがいるということだからな」

残念だけど、ネクロム、その敵対する何者かは………
そいつはとっくにわたしがぶっ潰してるんだよね。



「まあ、なに、気にするな。それより、はよ授業を始めてくれ
わたしらは貴様の授業の眠気に耐えなければならないんだ。」

「……………んむ………。」

私達は席に戻っていくと、生徒たちがひそひそと話す。



「ど、どういうことっ……!?」



「わからないけど、魔帝皇にいきなりつかみかかって
なんか知らないけどお礼を言われてたみたいだぞっ……!!」



「なんで掴みかかったら、お礼を言われるのっ……!?
まさか……ネクロム様は実はロリコンかドMでしたのっっっ!?」



「どういうことっ……!?」


「ていうか、ネクロム様にお礼されるって、どんだけよぉっ……!?」



「あいつ……本当に問題児なのかっ……!?」



「……すげぇえっ……!!全然わけわからないけど
凄すぎてなにも言えねえっ……!」



椅子を引き、座る。隣のジャンヌが言った。



「……無事でよかったゆ……」



反対側から、モルドレッドが言う。


「あなたたちって、相変わらず信じられないことをするわよね~」



やれやれ、相変わらず騒がしいのだ。

それからというもの、ネクロムの授業が始まっていくが

案の定、わたしとゼロは眠気に耐えられるはずがなく。
ゼロは静かな寝息をたてながら
わたしはグゴー……といびきをかきながら、眠ってしまっていた。

エクシア先生や生徒達が顔面蒼白になったのは言うまでもないであろう。



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