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清々した。
僕は、カール 十五歳。さっきまで王太子だったけれど、今はただのカールだ。
僕の母は庶民の出で、父の国王が誘拐するようにして、後宮へ入れた。
どこのゼウスだ。
無論、家筋血筋も申し分のない王妃様は別にいる。
要するに、僕の母は愛妾なわけだ。それなのに、王妃様には娘しかいなかったため、無神経(溺愛?盲目?)な王のために、生まれてすぐに僕は王太子と宣言された。
それからは、想像されるのも容易い嫌がらせの嵐。
どこのヘラだ。
そんなこんなで、僕の母は僕が十になるかならないかのうちに命を落とし、気落ちした父王はそれからみるみる体調を崩した。
またそのことから、父王は僕を次期王にすることに執着し、僕は愛妾の残した遺児として無理やり王太子に乗っけられていたのだが、それも今日で終わり、廃嫡と相成った。
原因は、明日、臣下に嫁ぐ三つ年上の異母姉のせいだ。
昨日、僕を呼び出して、『最後の思い出に』なんてスカートをまくり上げるから、僕はおそれおののいて逃げ出そうとしたら、無理やり服を引っぺがされて、それでも無理だと抵抗したら、異母弟がやってきて姉を襲った暴漢として捕縛された。
異母姉もまさか自分から迫ったとは言いだせず、なのか、はなからそういう策略だったのか知らないけれど、僕をかばうことはなかった。
否定したところで、証言は二対一で僕の多数決負けになるとわかっていたから、無駄な抵抗はしなかった。父王はすでに城内で力を失っていたこともあった。
そもそも、王太子など荷が重いと思っていたので、これ幸いというのが本音だ。
後ろ楯がないから父王が亡くなれば暗殺必至だし、しかも、国家の財政は火の車だ。
僕も少し政務を見て立て直しを頑張っているが、なかなか難しい。
異母姉だって、あんな暴挙に出たのは、人身売買のような政略結婚が嫌だったからに違いない。
彼女からは小さい頃から冷たくされていたから、好意とは考えられなかった。
父王は、チョコレートの髪、アーモンドの瞳なんて溺愛していた母譲りの姿も、異母姉にかかれば泥水色だそうだから。
そんなわけで、無事、僕は廃嫡の上、母の実家に戻されることになった。
当然、後釜に王太子になったのは、一つ年下の腹違いの異母弟。異母姉は残念ながら、この騒ぎでも婚約解消されなかった。
まぁなんだ。色々がんばれよ……。
僕は、最低限の荷物と手切れ金を渡されて、母の実家へ戻る。
母上の形見の指輪だけは、父上の温情で与えられたので大満足だ。
母の家にはすでに祖母しかいないのだが、待っていてくれるとは思えない。
なんせ、祖母はこの国で、古森の魔女と呼ばれているのだ。
でも、本当はただの薬草師。この国には、魔女なんかいない。
僕は、カール 十五歳。さっきまで王太子だったけれど、今はただのカールだ。
僕の母は庶民の出で、父の国王が誘拐するようにして、後宮へ入れた。
どこのゼウスだ。
無論、家筋血筋も申し分のない王妃様は別にいる。
要するに、僕の母は愛妾なわけだ。それなのに、王妃様には娘しかいなかったため、無神経(溺愛?盲目?)な王のために、生まれてすぐに僕は王太子と宣言された。
それからは、想像されるのも容易い嫌がらせの嵐。
どこのヘラだ。
そんなこんなで、僕の母は僕が十になるかならないかのうちに命を落とし、気落ちした父王はそれからみるみる体調を崩した。
またそのことから、父王は僕を次期王にすることに執着し、僕は愛妾の残した遺児として無理やり王太子に乗っけられていたのだが、それも今日で終わり、廃嫡と相成った。
原因は、明日、臣下に嫁ぐ三つ年上の異母姉のせいだ。
昨日、僕を呼び出して、『最後の思い出に』なんてスカートをまくり上げるから、僕はおそれおののいて逃げ出そうとしたら、無理やり服を引っぺがされて、それでも無理だと抵抗したら、異母弟がやってきて姉を襲った暴漢として捕縛された。
異母姉もまさか自分から迫ったとは言いだせず、なのか、はなからそういう策略だったのか知らないけれど、僕をかばうことはなかった。
否定したところで、証言は二対一で僕の多数決負けになるとわかっていたから、無駄な抵抗はしなかった。父王はすでに城内で力を失っていたこともあった。
そもそも、王太子など荷が重いと思っていたので、これ幸いというのが本音だ。
後ろ楯がないから父王が亡くなれば暗殺必至だし、しかも、国家の財政は火の車だ。
僕も少し政務を見て立て直しを頑張っているが、なかなか難しい。
異母姉だって、あんな暴挙に出たのは、人身売買のような政略結婚が嫌だったからに違いない。
彼女からは小さい頃から冷たくされていたから、好意とは考えられなかった。
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そんなわけで、無事、僕は廃嫡の上、母の実家に戻されることになった。
当然、後釜に王太子になったのは、一つ年下の腹違いの異母弟。異母姉は残念ながら、この騒ぎでも婚約解消されなかった。
まぁなんだ。色々がんばれよ……。
僕は、最低限の荷物と手切れ金を渡されて、母の実家へ戻る。
母上の形見の指輪だけは、父上の温情で与えられたので大満足だ。
母の家にはすでに祖母しかいないのだが、待っていてくれるとは思えない。
なんせ、祖母はこの国で、古森の魔女と呼ばれているのだ。
でも、本当はただの薬草師。この国には、魔女なんかいない。
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