魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第三十七話 前編

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   グレアは静かに抜刀した。

唯一無二の親友を討った凶器である自身の魔法に対する嫌悪の為か、親友の敵に対する激しい憤怒の為か。

「があああああああ!!!!」

雄叫びを上げながら主人公は走り出す。

対するゼゼゾームは、その武器を持っていながら感情に振り回された無防備な姿に、一切の躊躇無く「殺光レミク」をぶっ放す。

だが直後、身体の複数箇所で同時に結界が展開されるのを目の当たりにした。

「...また驚かされたな」

「鞘」と「刀身」。

グレアの両手の中にある物は、二本共丹念に研磨された金属に特有の光沢を存分に見せていた。


   感傷的な夜、グレアは自室にて、師から賜った剣を切なさの籠った目で眺めていた。

バセリアの愛剣に特徴的なのは、鏡面と同じ程に澄み切った銀色の鞘だった。

弟子に己を重ねていた彼女は、職人に揃いの加工を依頼した。

結果、鞘の裏面にそれは施されたのだった。

それが音もなく反射した月の光は脳裏に焼き付いた。


「『光』属性を使うなら、反射を常に考えろ」

奇しくも宿敵とほぼ同じ台詞を吐き、二本の光の尾を残しながら彼女は走る。

ゼゼゾームがさらに一発放つ。

反射。

方向を変えて二発撃つ。

これも跳ね返して結界に当てる。

正面から一撃放つ。

グレアは剣を構えた。

だが途中でその弾道は大きく外れ、グレアの横をすり抜けた。

それは焦燥感から引き起こされた、敵の「失敗」だと思われた。

しかし次の瞬間、彼女の脇腹を、「帰ってきた」光線が抉る。

彼女は思わず足を止めた。

グレアは目もくれなかったが、後ろに「偽金」で出来た鏡が浮遊していた。

「発想は悪くない。だが…」

ゼゼゾームが言いながら「殺光」を放つ。

「やはり才能が足りないな」

グレアが歯を食いしばる。

そして、剣を振るって光線を跳ね返すと、再び走り出した。

「駿馬」も「雲歩」も使わず、地獄に向かってただ真っ直ぐに。

途中、迎え撃つのはやはり熱い光の雨。

今度は鏡による反射も頭に入れておかなければ。

防ぎきれなかった光線が右肩と左大腿を削り取った。

とうとう地面に臥す。

「お前の身体には『太陽』が宿っている」

約4m先、ゼゼゾームが見下ろす。

「私の知る上で二例目だ。色々と試してみたいものだが、放っておくと厄介だからな」

と、静かに杖を向ける。

その時、グレアは片手でゼゼゾームの方へ剣を放り投げた。

一瞬、視線が空中に誘導される。

その瞬間、グレアは「駿馬」を応用して右足だけを使って前方に跳び、敵の足元に落下した。

そして鞘の先端を鎧にチョンと触れさせる。

あまりにも弱く、あまりにも優しく、鎧は当然それを攻撃として認識せず、結界は開かなかった。

鞘の中を魔力が流れ、鎧の金属の中へと伝わり、鎧と装着者との僅かな隙間の中で光となって具現化する。

次の瞬間、「光槍グシャルボーレアス」が敵の身体を焼き尽く

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