魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第二十五話

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    その後約一ヶ月間、私達は怯えながらも変わらぬ様子を演出し続けたが、結局、直接的に制裁が下ることは無かった。

ただし、ラーラに対してのみ、セインが積極的に接触してくるようになった。

恐らく、幸い、というべきか反逆的であるのは、或いは「洗脳」体制から逸脱したのはラーラだけだと思われているのだ。

「補助兵」と「近衛兵」の「配役」交換はこれ以降は水の泡になったかもしれないが、ラーラとの対比によって私が過剰なまでに潔白とされるているという副産物を利用しない手はない。

改められた「計画」は私主体で秘密裏に進められていった。


    ある朝、庭にて、私とバセリアは木剣を構えて対峙していた。

風が遠くの木々を揺らし、私達の髪をからかい、壁にぶつかって音を立てる。

そして、一瞬にして無音になる。

私は地面を蹴って飛び出し、「駿馬」の勢いのまま剣を振り下ろす。

相手はそれを受け止めながら一歩横に出る。このままではすれ違い様に斬られる。

私は直ぐさま剣を引っ込め、「雲歩」で後退して相手の間合いから僅かに外れる。

相手は追撃せず様子を見ている。

私は一呼吸置いた後、再度接近して「隼斬り」を何度も繰り出す。横に力強く薙ぎ払う技法「草薙」も織り交ぜるが、相手は後ろに下がりながら刀身を巧みに操って全て防御する。

攻撃に全集中力を注ぐことは時には必要だが、ムキになっては反撃に対応できない。

私は一旦半歩下がって突き・防御どちらも可能になるよう剣をいつもより寝かせて構えた。

すると、相手は「一歩だけ」「駿馬」を使い、その勢いのまま突きを繰り出した。

衝撃が剣から伝わり、身体中を走り抜ける。

私は敢えて踏ん張らず脱力して、姿勢を維持したまま後方へと滑った。

相手は今度は「雲歩」で接近し、「隼斬り」を二度続けて繰り出した。

どちらも防いだが、攻撃が重すぎて身体のバランスが崩れつつあり、必要以上に力んでもいる。

相手はこれを狙っていたのだろう。

「草薙」の構えが見えた時、私は辛うじて対応出来たと思ったが、途中で切り上げに変化し、気付いた時には鼻先に剣がくっ付いていた。

「勝負あり、だ」


私達は草の上に腰を下ろした。

「よくやったな」

「そうでしょうか?」

「ああ」

バセリアは大きく頷き、嬉しそうに笑った。

「こんな短い期間で、よくこんなに強くなった。まだ一流には程遠いが、そこら辺のごろつき程度じゃ、もう全くお前の相手にはならない」

「それは、喜んでいいのやら」

「ああ、喜べ。お前は魔法使いだろう。でも剣だけでも自分の身を守る事が出来るんだ。武術の目的は『護身』だ。だからもう十分だ」

ああそうだ、と彼女はふと立ち上がり、どこかへと走っていった。

数分後、戻って来た彼女の手には太陽の意匠が施された剣があった。

「これは?」

から愛弟子お前に贈り物だ。『蒼風流』では、一人前になった弟子に、師匠から剣を贈るんだ。…お前に似合うと思うんだが、どうだ?」

私は胸が一杯になった。

初めてバセリアの戦う姿を見た時、率直に言って、格好良いと思った。

初めてバセリアと話した時、朴訥な人だと思った。

初めてバセリアに指導して貰った時、私は傷ついた。しかし、それが彼女なりの誠実な向き合い方だと後に知った。

教団との戦いで、彼女はほぼ相討ちの形でも勝利し、苦い経験から尋常ならざる努力を積んだ。

不器用だが心優しく、華麗に戦い、自らに妥協を許さない…そんな人に認められたのだ。

「ありがとうございます…!!」

私は剣を受け取ると、彼女を抱き締めた。

「ははっ!」

バセリアは私の頭を不器用だが優しく撫でながら、豪快に笑った。

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