魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第二十三話

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   三日間の東進を終え、私達は帰城した。

色々と職務を済ませた後、私はラーラの部屋を訪れた。

「グレア様ですか?」

ドアの向こうから、警戒を含んだ声が聞こえた。

普段はただ柔らかく「どうぞ」とだけ言ってくれるのだが、何かあったのだろうか。

…いや、私の帰還の報が上手く伝わっていなかったのだろう。ラーラに寂しい思いをさせた「あの日」のように私の不器用さが原因であろう。

「はい。…失礼します」

私は入室しようとした。だが扉は一向に開こうとしなかった。

「あれ」

注意深く観察すると、知らぬ間に鍵付きになっている。

私は困惑し、思案に暮れて、硬直してしまった。

その間に内側から解錠し、ラーラは申し訳なさそうな表情を隙間から覗かせた。


「この一週間、本当にお疲れ様でした。座ってください」

私達はベッドの上に座って、報告会を始めた。

まずは私からだ。

クリロン城の周辺地域や城下町、城内の様相について、

クリロン地方の対外関係について、文化的差異について、推定戦力について…等など、メモ・記憶している限りで出来るだけ詳細に語るよう努めた。

「あと一つ、不思議な事があったんです」

私は初日に覚えた違和感について話した。

「城には高齢な人が多かったんです」

屋台の店主から料理店の経営者、道をゆく人に至るまで、少なくとも還暦は迎えていそうな老人の姿がとにかく多く散見された。

「なるほど…。興味深いですね」

彼女は小さな顎に小さな指を当てながら呟いた。

「食生活や発展の度合い、そもそも母数が多いという線も考えられなくはないですが、貴女の報告を聞く限り、原因は別にあると考えるのが自然でしょう。何か、他に感じた事はありませんでしたか?」

「そうですね…」

私は脳内とメモ帳の隅々まで目を光らせた。

そういえば。

「強いて言えば、空気が澄んでいて健康に良さそうでした」

「それかもしれません。疫病が流行りにくいとか。…でも逆に、ジャサー城内に疾病が蔓延り易く、高齢者が少なく、ジャサーが異常であると考えることも出来ます」

結局、考察の果てに結論は出ず、原因の特定は保留とした。

    今度はラーラが話を始めた。

「いい報せと悪い報せがあります。どっちから聞きたいですか?」

「『いい報せ』で」

「この一週間の目標が全て達成出来ました」

「ってことは!」

「はい。『教団魔法』全習得と、『結界魔法』『催眠魔法』の解析・再現に成功しました」

「おお!」

私は心の底から彼女を称え、拍手を送った。

ラーラ担当の最後の「教団魔法」はどんなに不利な状況に陥ったとしても、瞬時に形勢逆転出来る革命的な一手である。

もはや、「計画」は間近だろう。

「やりましたね!」

「そうですね。ですが…」

彼女は言葉に詰まった。

緊張が伝わり、私も催促出来なかった。

遂に口を開く。

「『計画』は叶わないかもしれません」

「…え?」

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