魔王メーカー

壱元

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第二章 後編

第二十一話

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「グレアさんには夢って、ありますか?」

「夢…」

そんな言葉には当てはめてみた事はなかった。

だが、そうだ、きっと私はその「夢」を抱いているはずだろう。

誰よりも異端で尊大な夢を。

「私は、貧困や不幸みたいな自分の力では抗い切れない運命に喘いでいる人達、その人達を救いたいな」

「…いいですね。何だか強くそう志しているようですが、どうしてそう思うのですか?」

「私自身がそうだったから」

「…」

彼はいかにもばつが悪そうな顔をした。その目の中には哀れみが溶けていた。

「尊敬」とは正反対の、「格下」に向ける自分勝手な感情…

「ごめんなさい」

「いや、構いませんよ。それより貴方の夢を教えてください」

「分かりました」

彼は自らの夢について、初めは遠慮がちに、だが中盤からは声高々と語ってくれた。

彼は下級貴族の出身だが、両親や学校教師に精神的・物質的に助けられ、努力の末に若くして要職に就くことが出来たという。

「だから、みんなに恩返しがしたいんです。みんなが『クオーテを産んで良かった。今までクオーテに施してやって良かった』って思えるように」

「ふーん…」

経験した人生が違いすぎる

クオーテはある程度は私の思想に共感や理解を示すことが出来るだろう。だが、最も根本的な部分は水と油である。

しかしながら、彼は謙虚で親切で、独自の「哲学」を持っている。

彼の思想構造を知りたいと思った私は一つ問いを投げかけてみることにした。

「仮に、ですよ?   その恩人達も豊かな方々なようですが、その豊かさが数え切れない程の恵まれない人々から奪い取った物によって成り立っているとしたら、貴方はそれでも彼らを認められるのですか?」

「…貴女らしい質問ですね。そうですね…もしそうだとしても、僕はその事を知り得ないし、知り得たとして、皆のお世話になった事は事実ですから、それとこれとは別々に考えて、ただ僕が僕の立場からすべきことをするだけです」

「なるほど。いいですね」

興味深い。

彼からは一つ学ばせてもらった。

仮に戦場で再度相まみえたとしたら話は別だが、彼を否定したいとは思わない。

夕方、私は城門でクオーテと別れを交わした。

明日からはジャサーへ帰る旅が始まる。


ラーラはどうしているだろうか?


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