魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第三十話

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 暁方、鶏が鳴くよりも早く、二駒は山道を進んでいた。

やや古い資料によると、「キリカナム教団」は本堂に集合し、早朝五時~七時にかけて祈りを捧げるという。

検証の結果、それに頼ることに決めたという訳だ。

 山頂に、薄暗い中、遠目でも認識可能な程に強烈な白色をした背の高いゴシック建築の教会がそびえ立っていた。

「行くぞ」

私達は馬を目的地から少し離れた所に繋げておき、入口まで歩いていった。

やはり祈祷に出向いているのか、門番は不在だったので、ラーラの魔法で扉を消し飛ばし、忍び足で侵入した。

 やはり外観に違わず天井は高く、内装の全てが白色と黒色で揃えられていた。

ほとんどが魔力を吸収する素材のようだ。その建造目的次第では、私達は嵌められたことになるだろう。

そんな心配もよそに、これまで人の気配も無しに、入口から30m程進んで、道が左右と正面の三本に別れる所まで辿り着いた。

そんな時だった。

突然、その左右の廊下から、武装した大量の敵が飛び出してきた。

「来たぞ!」

バセリアは抜刀し、ラーラと私は両手に魔力を集める。

「グレア、お前、血は平気か? ちょっと我慢しろ」

バセリアはそう言うと、突風を吹かせながら右の群衆に突撃していった。

左から来た連中は即座に列を成し、一斉に「火球パシア」を飛ばしてきた。

ラーラの「黒壁バラゴーゾン」。

目の前に闇が広がり、攻撃を全て吸収する。

「グレア様、練習通りにいきますよ」

「はい!」

「黒壁」が消滅し、敵の姿を視界に捉えた。

私は「光槍グシャルボーレアス」を発動し、そのまま腕ごと水平方向に振り回した。

鉄甲を被った敵の胴体は切断され、下半身と上半身は泣き別れになった。

まるで幼少期、無垢故に小動物をいたぶって遊ぶような感覚で、そこに特別な感情が付き纏うことも無かった。

奥からたった三人で構成される第二軍が出現し、それぞれ「水矢シャルロー」やら「火球パシア」やら「電撃ラミラ」やらを放ってきた。

これをラーラが先程と同様に対応すると、一人が「風射フォリム」で「壁」の隙間へ移動、一人が私達の頭上に岩石を生成し、一人が「大火球ビシア」の生成を開始した。

少なくとも、さっきの連中よりはよくやるようだ。

私は「風射使い」の顔面に「火球」を間に合わせて殺害すると、「大火球使い」に向かって「黒壁」の上を飛び越えるよう「水矢」を放ち、自由落下の力も借りて命中させた。

空中の岩を消し、ラーラは「黒壁」を解除した。

見えた。

攻撃は命中したものの、「大火球」の生成を阻害することは叶わなかったようだ。

凄まじい熱とともに満を持して迫り来る。

私達は各々回避行動を取った。

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