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第二章 前編
第二十七話
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率直に言うと、「秘密のラーラ」と「疾風のバセリア」、達人二人のビッグマッチは味気ないものになった。
最初は黒い光線「闇針」を張り巡らせ、相手を翻弄したラーラだったが、一度被弾するや否や防戦一方になってしまい、じわじわと追い詰められて、そのまま敗北したのだ。
「おい!」
バセリアの呼びかけは怒声にも似た響きだった。
「途中から手を抜いたな!? どうしてだ!?」
私も彼女の見解に共感せざるを得なかった。
あれは魔法近衛兵「秘密のラーラ」の全て、あるいはその半分でさえない。
「いえ…」
だが対するラーラは、ごく冷静に、いかにも自信なさげな自分を演出していた。
「私は未熟者ですから、一度貴女に勢いを崩されて以来、立て直せなかったのです。貴女の実力に屈服したのです。ご自身を誇りに思ってください」
典型的な甘い言葉の数々であったが、バセリアはものの見事に操られ、頬の緩みを隠せていなかった。
彼女は上機嫌で馬に飛び乗った。
私がラーラに一連の行動の動機を問うと、彼女は、フードを邪魔そうにしながら、「あとで話します」と耳打ちした。
私は夕食後、ラーラの部屋にやって来た。
彼女はいつものリラックスした装いであったが、何か物々しい雰囲気を漂わせていた。
「『魔王』が『魔王』足り得るのに必要なものは、何だと思いますか?」
彼女は出し抜けに問いかけてきた。
その意図を測りかね、私は思考を一周させた後、あえて第一に浮かんだ物をぶつけてみることにした。
「名声…いや、悪名、ですかね?」
「お見事です」
彼女は「血盟の夜」と同じギラついた目をしていた。
「私は城の図書館で調べました。後に『魔王』と呼ばれることになったとある魔物は、南方ジャイザン王国のゴルク県を壊滅させたことで、初めて脅威とみなされました。先例に倣い、私達も『悪名』を手にしなければなりません」
「…どうするつもりですか?」
ようやく話の輪郭が見えてきた。
「王に喧嘩を売るんです。まずはその配下たちの首を世界に晒す必要があります。だとしたら…決まっているじゃないですか」
ラーラは白く鋭い歯を剥き出して笑った。
「まずは、このジャサーを滅ぼしますよ」
最初は黒い光線「闇針」を張り巡らせ、相手を翻弄したラーラだったが、一度被弾するや否や防戦一方になってしまい、じわじわと追い詰められて、そのまま敗北したのだ。
「おい!」
バセリアの呼びかけは怒声にも似た響きだった。
「途中から手を抜いたな!? どうしてだ!?」
私も彼女の見解に共感せざるを得なかった。
あれは魔法近衛兵「秘密のラーラ」の全て、あるいはその半分でさえない。
「いえ…」
だが対するラーラは、ごく冷静に、いかにも自信なさげな自分を演出していた。
「私は未熟者ですから、一度貴女に勢いを崩されて以来、立て直せなかったのです。貴女の実力に屈服したのです。ご自身を誇りに思ってください」
典型的な甘い言葉の数々であったが、バセリアはものの見事に操られ、頬の緩みを隠せていなかった。
彼女は上機嫌で馬に飛び乗った。
私がラーラに一連の行動の動機を問うと、彼女は、フードを邪魔そうにしながら、「あとで話します」と耳打ちした。
私は夕食後、ラーラの部屋にやって来た。
彼女はいつものリラックスした装いであったが、何か物々しい雰囲気を漂わせていた。
「『魔王』が『魔王』足り得るのに必要なものは、何だと思いますか?」
彼女は出し抜けに問いかけてきた。
その意図を測りかね、私は思考を一周させた後、あえて第一に浮かんだ物をぶつけてみることにした。
「名声…いや、悪名、ですかね?」
「お見事です」
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「…どうするつもりですか?」
ようやく話の輪郭が見えてきた。
「王に喧嘩を売るんです。まずはその配下たちの首を世界に晒す必要があります。だとしたら…決まっているじゃないですか」
ラーラは白く鋭い歯を剥き出して笑った。
「まずは、このジャサーを滅ぼしますよ」
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