魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第二十五話

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 二日目と三日目は北方にある魔物の巣窟に突撃した。

スパイクウルフという、針のように硬く尖った体毛と、赤く丸い目を持つ狼の群れに三人で挑んだ。

敵は動きが俊敏で、私の「火球」や「水矢」はことごとく空を切り、対して二人の剣技と魔法は寸分の狂いもなく敵を粉砕する。

挙句の果てに、ラーラの弾幕の隙間を抜けて飛び出してきた個体に殺されかけた。

バセリアのおかげで身体は傷一つなかったが、「中身」の方はそうもいかなかった。

不慣れな「劣等感」が心の深い所まで根を張り巡らせていたのだ。

 休憩時間、落ち込んでいる私の隣に、ラーラはすっとしゃがみこんだ。

「気にしているのですか? まだ貴女は若いし、訓練を始めて長くないのですから、そんなに気に病む必要はないですよ」

「若いって言ったって、貴女の方がまだちっちゃいじゃないですか」

これが八つ当たりなのは分かっていた。だが、止められなかったし、止めたいとも思わなかった。

暫しの沈黙の後に、ラーラは

「後で、私の部屋に寄ってください。良いものをあげます」

と囁いて立ち去った。

休憩時間にも関わらず、バセリアは力を持て余しているようで、素早く動き回りながら猛烈に素振りを繰り返していた。

だが、あるところで手を止め、「時間だ」と短く言った。

「はあ」

私も吐息をついて立ち上がり、気怠さを我慢して練習に向かっていった。

 練習後、ラーラの部屋を訪ねると、彼女は形に見覚えのある球体を渡してくれた。

「よく眠れる光を出す球です。魔力を吹き込んで使ってください」

一度芽生えた感情とは厄介なもので、その時は私は彼女に謝罪や感謝の心を示すことは出来なかった。

だが、球体が浮遊しながら発する柔らかな黄色の微光に誘われ、私はいつの間にかそのしがらみも夢の中に置いてきてしまった。

目覚めると、そこに球体は無かった。

 四日目、五日目では連携訓練が改めて行われた。

ラーラ様のおかげで雑念は消え去り、有意義な時間となった。

 そして六日目。

私とバセリアは、守護結界の腕輪をしっかりと装着し、覚悟を持って対峙した。


 

 


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