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第二章 前編
第二十話
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翌朝、私達は少しばかり早めに起床し、手早く準備を済ませ、西へと向かった。
城壁を抜けて一時間ほど馬を走らせていると、辺りは殆ど畑ばかりになってきた。
木製の門が見えた所で馬を止めた。
「ここです」
ラーラは地図を片手に言った。
私達はすぐに村長のもとへ通された。
「よく来てくだすった」
”ここの”村長は物腰柔らかだった。
このような辺境の村にしては珍しく、私達には茶が出された。
「秘密のラーラ」は立場を考慮してか、断ったが、私はこの高級品を堪能させてもらった。
その間、相手は今回の事件について、柔らかな口調で内に秘めたる思いの丈を語ってくれた。
今回帰らぬ人となった村民二人のことを慮ると、意欲は轟々と沸き立ち、彼の話が終わりに「必ず解決します!」と意気揚々叫んでしまった。
私達は村の奥、森の中へと入っていった。
「まるで『勇者』でしたね。『魔王』じゃなくて」
彼女はフードを取り、にやけながら言った。
私は赤くなった顔をなるべく彼女から背け、「別にいいじゃないですか」と言って悪あがきをするほかなかった。
そんなこんなでしばらく歩いていると、前方に巨大な影が見えた。
私達は警戒を強めた。
「わかっていますね?」
ラーラは囁いた。
「私は後ろで見ています。貴女がこの数日間で得たものを見せてください」
私は頷き、一人敵に向かっていった。
そして、程よい距離で「火球」を両手に生成し、撃ち込んだ。
次の瞬間、「影」に着弾し、爆炎と衝撃波とが響いた。
だが、対象は沈黙せず、こちらの位置を突き止めると、凄まじい勢いで近付いてきた。
私は左手側に走り、比較的木々が少なく、広い場所に敵を誘導した。
日光が敵の全貌を映し出す。
背丈は三メートルほど。半透明な黒色の身体を持ち、下半身はなく、顔もなく、ただ大きな穴が真ん中に空いていて、頭には長い髪の毛を生やし、片手には魔法生成の刃こぼれして錆びた大剣を持つ。
死霊系「戦士霊」。
志半ばで死した戦士の魂が集合したモノ。霊は純粋な物理攻撃を無視するため、討伐は魔法使いの専業となる。
敵は剣を構えると、一瞬にして距離を詰めてきた。
私は指先から風を吹き出し、浮遊して後方へと逃げた。
「風」魔法の「風射」だ。
魔法を解除し、即座に「火球」をその腹部にぶち当てる。
直撃後、遠目からでも、その体色が薄くなったのを感じた。
思った以上に楽な「初仕事」だなと感じていた。
その時だった。
周辺から、敵へと、灰色の帯のようなものが集まってきた。
城壁を抜けて一時間ほど馬を走らせていると、辺りは殆ど畑ばかりになってきた。
木製の門が見えた所で馬を止めた。
「ここです」
ラーラは地図を片手に言った。
私達はすぐに村長のもとへ通された。
「よく来てくだすった」
”ここの”村長は物腰柔らかだった。
このような辺境の村にしては珍しく、私達には茶が出された。
「秘密のラーラ」は立場を考慮してか、断ったが、私はこの高級品を堪能させてもらった。
その間、相手は今回の事件について、柔らかな口調で内に秘めたる思いの丈を語ってくれた。
今回帰らぬ人となった村民二人のことを慮ると、意欲は轟々と沸き立ち、彼の話が終わりに「必ず解決します!」と意気揚々叫んでしまった。
私達は村の奥、森の中へと入っていった。
「まるで『勇者』でしたね。『魔王』じゃなくて」
彼女はフードを取り、にやけながら言った。
私は赤くなった顔をなるべく彼女から背け、「別にいいじゃないですか」と言って悪あがきをするほかなかった。
そんなこんなでしばらく歩いていると、前方に巨大な影が見えた。
私達は警戒を強めた。
「わかっていますね?」
ラーラは囁いた。
「私は後ろで見ています。貴女がこの数日間で得たものを見せてください」
私は頷き、一人敵に向かっていった。
そして、程よい距離で「火球」を両手に生成し、撃ち込んだ。
次の瞬間、「影」に着弾し、爆炎と衝撃波とが響いた。
だが、対象は沈黙せず、こちらの位置を突き止めると、凄まじい勢いで近付いてきた。
私は左手側に走り、比較的木々が少なく、広い場所に敵を誘導した。
日光が敵の全貌を映し出す。
背丈は三メートルほど。半透明な黒色の身体を持ち、下半身はなく、顔もなく、ただ大きな穴が真ん中に空いていて、頭には長い髪の毛を生やし、片手には魔法生成の刃こぼれして錆びた大剣を持つ。
死霊系「戦士霊」。
志半ばで死した戦士の魂が集合したモノ。霊は純粋な物理攻撃を無視するため、討伐は魔法使いの専業となる。
敵は剣を構えると、一瞬にして距離を詰めてきた。
私は指先から風を吹き出し、浮遊して後方へと逃げた。
「風」魔法の「風射」だ。
魔法を解除し、即座に「火球」をその腹部にぶち当てる。
直撃後、遠目からでも、その体色が薄くなったのを感じた。
思った以上に楽な「初仕事」だなと感じていた。
その時だった。
周辺から、敵へと、灰色の帯のようなものが集まってきた。
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