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第二章 前編
第十九話
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二日目、丘の上にて、ラーラは闇で作った黒い布「影織」を構え、私が次々に放つ大小様々な「火球」を受け止めていた。
魔法の出力強化の為に必要なのは、回数をこなすことらしい。
だが、「習うより慣れろ」ではない。
「火球」系統の生成、その原理を理解した上で反復練習に臨んでいるのだ。
原理を理解すれば、応用も自ずと可能になる。
三日目、私は師の命に従い、掌ではなく指先を起点として魔法を発動していた。
その成功を見て、彼女は私を称賛してくれ、私も彼女の指導に対する感謝を心底より告げた。
四日目、新たな魔法を二つ習得すると同時に、驚くべき事が起こった。
たった一度だけだが、「大火球」を放った時、それが「影織」を見事に打ち破ったのだ。
「この数日間でよくもここまで成長しましたね」
そう吐息混じりに言うラーラの黒フードの隙間には汗が光っていた。
これがどの感情に基づくのか、この時は特定できなかったが、その答えは図らずも翌日に明かされた。
五日目、試験時の頼れる相棒を腕に装着した彼女は、「怖いので」と言い、間を入れず「褒め言葉ですよ?」と付加した。
前日の新魔法二つと「火球」類を試した後、「光槍」を放った。
奇跡的に形を成したそれは、「影織」を破り、液体魔法の六割を消し去った。
「試験時よりずっと強くなっています。威力は申し分ないですから、コントロールを錬成しましょう」
彼女はそう言った。
フードの下では、きっと笑っていただろう。
六日目の夕方、到着直後の私達に、警備兵より伝言が手渡された。
どうやら、西方の農村に、強力な魔物が迫っているという。
専門家によると、これに対しては、物理攻撃よりも魔法が有効らしく、数も少なく、丁度二人の魔法使いで討伐するのが適している、という。
「ふふ、鴨が葱を背負ってやって来ましたね」
ラーラは楽しげに言った。
魔法の出力強化の為に必要なのは、回数をこなすことらしい。
だが、「習うより慣れろ」ではない。
「火球」系統の生成、その原理を理解した上で反復練習に臨んでいるのだ。
原理を理解すれば、応用も自ずと可能になる。
三日目、私は師の命に従い、掌ではなく指先を起点として魔法を発動していた。
その成功を見て、彼女は私を称賛してくれ、私も彼女の指導に対する感謝を心底より告げた。
四日目、新たな魔法を二つ習得すると同時に、驚くべき事が起こった。
たった一度だけだが、「大火球」を放った時、それが「影織」を見事に打ち破ったのだ。
「この数日間でよくもここまで成長しましたね」
そう吐息混じりに言うラーラの黒フードの隙間には汗が光っていた。
これがどの感情に基づくのか、この時は特定できなかったが、その答えは図らずも翌日に明かされた。
五日目、試験時の頼れる相棒を腕に装着した彼女は、「怖いので」と言い、間を入れず「褒め言葉ですよ?」と付加した。
前日の新魔法二つと「火球」類を試した後、「光槍」を放った。
奇跡的に形を成したそれは、「影織」を破り、液体魔法の六割を消し去った。
「試験時よりずっと強くなっています。威力は申し分ないですから、コントロールを錬成しましょう」
彼女はそう言った。
フードの下では、きっと笑っていただろう。
六日目の夕方、到着直後の私達に、警備兵より伝言が手渡された。
どうやら、西方の農村に、強力な魔物が迫っているという。
専門家によると、これに対しては、物理攻撃よりも魔法が有効らしく、数も少なく、丁度二人の魔法使いで討伐するのが適している、という。
「ふふ、鴨が葱を背負ってやって来ましたね」
ラーラは楽しげに言った。
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