魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
上 下
42 / 155
第二章 前編

第十四話

しおりを挟む
 

    ラーラは照れ笑いを浮かべた。

それはぎこちなく、緊張しているのが感じられた。

「貴女のことを誤解していました」

彼女はそう言って、再びベッドの上に座り込んだ。

「貴女とは腹を割ってお話ができそうなので、本当の姿でお話したくて」

そうは言ったが、彼女はしばらく黙ったまま、目を逸らし、その床に届かない足をぱたぱたさせていた。

「あの…」

彼女がやっと喋りだした。

「この姿を自分から見せるのは初めてなんです。ど、どうですか?」

私は気高い彼女に対して、正直に言って良いものかと、少し思案した末、率直な感想を述べた。

「かわいい、と思います」

しばし沈黙が続いた。その間、ラーラの顔が、まるで果実が熟す様にだんだんと赤らんでいくのが面白かった。

「かわいい、ですか。でしたら、良かったです」

「一つ、質問してもよろしいですか?」

「は、はい!?」

「ラーラさんは先程、偽りなくお話をしたいと仰りましたが、これだけ動揺されていてはお話できないのではないでしょうか?」

私がこう言うと、ラーラは目を閉じて深呼吸を繰り返した。

表情の変化を見るに、平常心を取り戻したようだった。

「失礼しました」

彼女は余裕ある笑みを浮かべる。

「貴女はご自身について色々と話してくれました。ですから、私も自分の話をしましょう」

「…お願いします」

彼女は語り始めた。

「私:ラーラは、数年前、このケンダル王国のドマ地方という所で産まれました。

父親は魔物で、私が生まれる前に討伐されましたが、詳細はわかりません。母親は普通の人間で、身分は高くなく、裕福ではありませんでしたが、私のことを大切に育ててくれました。

私には同世代の人間の友人もいました。彼らも魔物の血が流れる私にも別け隔てなく接してくれ、幸福でした。

…しかしある日のこと、王国の騎士団が町を通りかかりました。彼らは通りかかった住民に対し、突然剣を抜いて攻撃し始めました。…町が恐怖に支配され、住民がパニックに陥る中、『悪魔を匿う悪民に罰を』と叫びながら、彼らは虐殺を続けました。

…彼らは人を殺しながら笑っていました。そのうち我が家にも押し入り、私の母親を目の前で殺しました。私は、母親が作ってくれた時間を使って必死に逃げ、生き残りました。

…後で聞いた話によると、その街の住民は文字通り全滅し、騎士団は不祥事を働いたとされましたが、裁判の結果無罪となり、むしろ英雄視する人もいるそうです…」

彼女の顔からはいつの間にか笑みが消えていた。

彼女は静かに虚空を凝視し、ただ一言、ぽつり。

「まあ、よくある話です」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

処理中です...