魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第十話

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   地面が裂け、氷の塊が突き出した。

幾つもの棘が私を貫こうとする。

私は咄嗟の判断で、攻撃に使おうとしていた「火球パシア」を真下に向けて放ち、爆風を使って空中に高く吹き飛んだ。

目の前に結界が展開される。

相手の攻撃からは免れたが、「火球」による反動を攻撃と捉えた腕輪が、結界を生成してしまったようだ。

「そう来ましたか」

「秘密のラーラ」は掌上に黒い球状の物体を生成し、私を目掛け正確に射出した。

「でも空中で出来ることは限られますよ」

攻撃が直撃し叩き落とされた。結界は二箇所に同時展開されている。

「くっ…」

砂まみれになった腕輪を見ると、硝子内の「液体魔力」量は三分の一を切っていた。

相手は恐らくその一割も消耗していないだろう。

このままでは敗北だ。


他の試験に於いて、合格を確信出来るほどの手応えは到底感じられなかった。

それに、実力を証明する機会というのは今日で最後なのだ。

そして、魔法こそが私の一番の能力。

魔法が「最終」にして「大本命」なのだ。

「大本命」で勝てなければ、挽回出来なければ、決して閣下に認めては貰えないだろう。

これまでの人生、生来より纏わりつく数々に負け続けてきた。

取り戻すなら今、この瞬間だ。

なら、勝利の為に醜く足掻こう。


砂を掴みながら立ち上がる。

「…目が変わりましたね」

敵は両手に氷で出来た円盤を生成した。

その縁は鋭利な刃になっている。

「土壇場で何を見せてくださるのでーー」

私は敵の顔を目掛け、砂を投げつけた。

微細な砂粒を腕輪は「攻撃と認識」しなかった。

フードの隙間からもいくらか入り込んだようで、敵は魔法を中断し、苦しげに顔を抑えた。

隙を見て先程の「凍棘レーセシャンガ」の後ろに滑り込み、身を潜める。

ここに来て、あの忌まわしい夜の記憶を、少しずつだが取り戻してきた。

砂粒のように小さく集束させ、大海の水よりも大質量を流し込む…

超高密度の魔力は、掌の上で白く眩しく発光した。

「…そこですね」

予想通り黒い球が飛んで来るのが氷越しに見えた。

その瞬間、私は不服の一撃を放つ。

掌から純白の光線が伸び、氷を突き破り、そのまま敵の方に向かっていく。

風吹きフード閃き、敵の顔は白く照らされた。

薄紫色のつぶらな瞳は大きく見開かれていた。

光線が命中。

刹那、辺り一帯が真っ白になった。

視界が開けた時、敵は煙と結界とに包まれながら地面を転げ回った。

私はもう一度光線を放った。

だが焦り過ぎたようで、途中でバラけ、惜しくも直撃には至らなかった。

敵の光線も発射される。

今度のそれはぐにゃりと湾曲し、氷を突き抜け、逃げる私を追い続ける。

私は意識をそちらに集中させ、本体の動向を見ていなかった。

「秘密のラーラ」は目の前に居た。

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