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第二章 前編
第九話
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「…その意気に応じて、すぐに始めたい所ですが、その前に、解釈の齟齬があるといけませんから、ルールを改めて説明致します。『腕輪』はお付けでいらっしゃいますね?」
「はい」
私は右腕を差し出した。手首に、全体が銀色で、中央のガラス部には青色の液体の入った腕輪をしっかり装備している。
出発時に与えられた物だ。
「確認できました。次は貴女が私の腕輪の有無を確認して下さい」
彼女も腕を見せた。
黒い手袋の上から腕輪をしっかりと装備してある。
「はい、確認しました」
「ありがとうございます。この腕輪は持ち主が『攻撃と認識されるもの』を受けると、内部の『液体魔力』を用いて結界を生じ、無効化します。どちらかの『液体魔力』が尽きた時点で試験終了と致します。では、お好きなタイミングで開始してください」
「分かりました」
私は距離を取り、両手に魔力を溜めた。
「秘密のラーラ」。
この人についてはその名に違わず全てが秘密。
まずは様子見の意図を込めた一撃目。
腕を軽く振り、「火球」を放つ。
それは真っ直ぐ標的のもとへ飛んでいった。
だが次の瞬間、相手が合掌し、その手を離すと、今まで見たこともない程深い黒色をした布が広がり、まるで「火球」はそこに吸い込まれたように消滅した。
「布」の隙間を狙うべく私は全力で走り、敵の横から次撃を撃ち出した。
相手は少し身体の向きを変えると、例の布を翻し、攻撃を受けて無効化した。
「…なるほど、魔力はかなり高いようですね」
私は再び攻撃しようとした。しかしその時、瞬く間に「布」が消え、その右手の人差し指から真っ黒な光線が伸びてきた。
慌てて回避するが、攻撃は右肩の辺りに僅かに接触し、水色の結界が展開される。
だが、怯んではならない、と私は自分に言い聞かせた。
敵は少なくともこの瞬間は身を守る「布」を持たないのだ。
直ぐさま走り出し、「小火球」を連射する。
狙い通り反応が遅れ、一つだけ、手の甲に命中した。
「いい発想です」
結界の奥で彼女は言い、両手を前に伸ばした。
「では、これにはどう対処されますか?」
十本の指全てから黒光線が飛び出す。
私は上半身を反らし、立ち位置を調整して必死に抵抗した。だが、光線は各々異なる動きをし、何度も命中する。
指の関節を曲げると、その度に軌道が変わるのだ。
出来上がった「闇の檻」の中に捕らえられた。
腕輪を確認すると、液体はまだ十分にあった。
そこで私は回避を諦め、攻撃に転じた。
太腿の辺りを撃ち抜かれながらも両手から一球ずつ「火球」を放って、双方命中させる。
その時、敵の右手の光線が止まった。
突如、地面が割れ、先の尖った氷の棘が幾本も突き出す。
「『凍棘』」
「はい」
私は右腕を差し出した。手首に、全体が銀色で、中央のガラス部には青色の液体の入った腕輪をしっかり装備している。
出発時に与えられた物だ。
「確認できました。次は貴女が私の腕輪の有無を確認して下さい」
彼女も腕を見せた。
黒い手袋の上から腕輪をしっかりと装備してある。
「はい、確認しました」
「ありがとうございます。この腕輪は持ち主が『攻撃と認識されるもの』を受けると、内部の『液体魔力』を用いて結界を生じ、無効化します。どちらかの『液体魔力』が尽きた時点で試験終了と致します。では、お好きなタイミングで開始してください」
「分かりました」
私は距離を取り、両手に魔力を溜めた。
「秘密のラーラ」。
この人についてはその名に違わず全てが秘密。
まずは様子見の意図を込めた一撃目。
腕を軽く振り、「火球」を放つ。
それは真っ直ぐ標的のもとへ飛んでいった。
だが次の瞬間、相手が合掌し、その手を離すと、今まで見たこともない程深い黒色をした布が広がり、まるで「火球」はそこに吸い込まれたように消滅した。
「布」の隙間を狙うべく私は全力で走り、敵の横から次撃を撃ち出した。
相手は少し身体の向きを変えると、例の布を翻し、攻撃を受けて無効化した。
「…なるほど、魔力はかなり高いようですね」
私は再び攻撃しようとした。しかしその時、瞬く間に「布」が消え、その右手の人差し指から真っ黒な光線が伸びてきた。
慌てて回避するが、攻撃は右肩の辺りに僅かに接触し、水色の結界が展開される。
だが、怯んではならない、と私は自分に言い聞かせた。
敵は少なくともこの瞬間は身を守る「布」を持たないのだ。
直ぐさま走り出し、「小火球」を連射する。
狙い通り反応が遅れ、一つだけ、手の甲に命中した。
「いい発想です」
結界の奥で彼女は言い、両手を前に伸ばした。
「では、これにはどう対処されますか?」
十本の指全てから黒光線が飛び出す。
私は上半身を反らし、立ち位置を調整して必死に抵抗した。だが、光線は各々異なる動きをし、何度も命中する。
指の関節を曲げると、その度に軌道が変わるのだ。
出来上がった「闇の檻」の中に捕らえられた。
腕輪を確認すると、液体はまだ十分にあった。
そこで私は回避を諦め、攻撃に転じた。
太腿の辺りを撃ち抜かれながらも両手から一球ずつ「火球」を放って、双方命中させる。
その時、敵の右手の光線が止まった。
突如、地面が割れ、先の尖った氷の棘が幾本も突き出す。
「『凍棘』」
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