魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
上 下
35 / 82
第二章 前編

第七話

しおりを挟む
 嫌な予感に限って必中なのは世の定めだ。


 初日:凍てつく顔の女中頭、サノーネ・キオスに、貴族に仕える者に求められる所作の有無を試され、一挙手一投足にダメ出しされた。

これでは評価対象にならないということで、サノーネに礼儀作法を一から叩き込まれた。

そして一日の終わりにそれらの習得を試され、十点中四点と評価された。

この日は適度に休憩が挟まれ、幸いだった。

夕食時に、さっそく身に付けた振る舞いを実践してみたが、残念ながら誰も褒めてはくれなかった。


 二日目:この日はバセリアが担当者だった。

安心したのも束の間、「これを持て」といきなり木剣を投げ渡され、稲妻のような問答の末に決闘が始まった。

その剣技の恐ろしさを垣間見た私は、思わず足が竦んでいたが、多少は手を緩めてくれるものだろう、と恐怖を振り切って対峙した。

結果、全く歯が立たず、私は全身の苦痛とともに地面に臥した。

「まだまだだな」

彼女はそう言い残して夕日を背に帰城してしまった。

その後、バセリアが戻ってきて怪我の手当をしてくれなかったら、私は人間不信に陥るところだった。

閣下の「彼女は君の師になるかもしれない」という言葉は明暗二色に染められた。

この日は試験開始時刻も遅く、試験時間が短かったので、体力の消費自体は大したことがなかった。


 三日目:再びサノーネが担当。

今度は「汎人語」の運用能力と算術が試験対象となった。

前者では試験官との簡単な問答に加え、筆記や物語の読解を行った。

後者では四則演算を用いて様々な形態の問題を解いた。

筆記も算術も初めて行ったが、少し基礎を教わったことで、何とか形になった。

この日に限っては、楽しささえ覚えていたので、苦ではなかった。


 最終日、朝食を済ませた私は城門に来るよう指示された。

扉を開けた途端、私の身体は強張った。

そこで馬とともに待機していたのは、私が忌避し続けた例の黒フード、「秘密のラーラ」だった。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:227pt お気に入り:8,021

いや、一応苦労してますけども。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:749

底辺風俗嬢の私が異世界で公爵令嬢になれるわけがない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

不実なあなたに感謝を

恋愛 / 完結 24h.ポイント:5,609pt お気に入り:3,450

君の手で‪‪✕‬して~適合体No.02の逃亡理由~

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:16

あたたかくなったら

絵本 / 完結 24h.ポイント:71pt お気に入り:0

複雑な関係

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...