魔王メーカー

壱元

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第二章 前編

第四話

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 参戦していた全員が乗馬した。

「今回はこの子が居る。より『綺麗に』頼むよ」

伯爵は後方に目配せしながら、ふとそう言ったのだった。

「仰せのままに」

主君の声に応じたのは、唯一下馬及び参戦しなかった近衛兵。

例外的に金属の鎧ではなく布製の黒いローブに覆われたその背中は異質に映った。

その時、私の中に眠る「田舎者の直感」が興味深い事実を捉えた。

フードの上部が妙に盛り上がっていた。

どうやら、フードの下に何か、二本角のような奇妙な物を被っているようなのだ。

視線を奪われていると、下半身がぐわんと引っ張られた。

「行くぞ」

領主ともののふ七人の馬は、横たわる益荒男たちを避けながらゆっくりと進んでいった。

「振り向くな。見ない方がいい」

閣下が言った。

好奇心は留まるところを知らなかったが、閣下が制止する様なことであるから、思案するのはやめにした。

 約十分後に、その人は合流した。

そのローブにも、馬にも、汚れ一つなかった。

顔を見ようとしたが、フードに隔てられ、殆ど確認できなかった。


 日が沈む頃、私達は城下町のとある道路を通っていた。

そこから見えるものに心奪われた。

オイルランプがそこかしこで暖かな光を放ち、市場は何とも幻想的な眺めだった。

木製の骨組みに布を張り巡らせただけの簡素なものから、石や木材を組み合わせた典型的なもの、瓦を備えた住居のような外装のものまで、多種多様な外観と業態の露店がずらりと並び、絶妙に灯りに照らされていた。そこでは黄昏時でも商人やその客が盛んに取引をしていた。

しばらく進んだところで見えたのは住宅街で、そこでは未だに子供たちが遊んでいた。

彼らは伯爵の姿を認めると、嬉々として手を振り、閣下の方も躊躇いなく振り返した。

この人に付いてきて正解だったと思えた。

巨大な扉が開き、とうとう私達は入城した。



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