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第二章 前編
第二話
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向こうから、鎧や武器を装備した男女数人と、その主君であろうか、赤い上質な服と立派な口ひげが特徴的な中年男性が、馬に乗って移動して来る。
「木を隠すなら森の中」。
私は敢えて隠れず、単なる一通行者として、堂々と歩くことにした。
そのうち、例の団体が接近し、何事もなく通り過ぎていった。
しかし通過後すぐに、蹄の音が止まった。
「待ってくれ」
首班は後続にそう指示すると、自ら下馬し、私に近付いてきた。
「逃げないでくれよ。危害を加えるつもりはない」
警戒する私にそう穏やかに声を掛けた。
「一つ質問したいことがあるのだがよろしいかな、お嬢さん?」
「…はい」
警戒心が無かったわけではないが、私は応じてみることにした。
「サバテ山麓のとある村に、真珠のように美しい容姿と人並み外れた魔法の才を兼ね備えた娘が居ると聞いた。私は彼女の能力を買いに行こうとしていたのだが、もしかして、それは君ではないか?」
「…能力を買うって、どういうことですか?」
「君の優れた力を、私と、このジャサー地方の為に使おうということさ。君が望むものと引き換えにね。…申し遅れたな」
彼はそう言うと、まるで王を相手にしているかのように、片手を胸の前にやって、丁寧にお辞儀をした。
「私はジャサー地方、もといジャサー領統治の命を国王より承った『レイホーン家』が三代目当主、シーゾ・ハシレオス・レイホーンだ。改めて問おう、君はその才能を民と自分自身の為に使ってみる気はないか?」
相手がこの地域で最大の統治者だと知り、私はたじろいだ。
彼の後方に佇む凍てつく顔の近衛兵たちを見て、「既に首に刃を突きつけられている」と思った。「これは交渉であって交渉ではない」と。
それに、どのみち今の私には行く宛がない。
「はい」
私は頷いた。
「閣下、どうか私にご奉仕させてください」
私が平伏すると、彼は「良し」と一言。そして優しく私を抱き上げ、馬の上に乗せた。
「しっかり掴まっていろ」
背中側の私に送った眼差しは優しかった。
「はい」
私は指示通り、しっかりと閣下の大きな身体に掴まった。
「木を隠すなら森の中」。
私は敢えて隠れず、単なる一通行者として、堂々と歩くことにした。
そのうち、例の団体が接近し、何事もなく通り過ぎていった。
しかし通過後すぐに、蹄の音が止まった。
「待ってくれ」
首班は後続にそう指示すると、自ら下馬し、私に近付いてきた。
「逃げないでくれよ。危害を加えるつもりはない」
警戒する私にそう穏やかに声を掛けた。
「一つ質問したいことがあるのだがよろしいかな、お嬢さん?」
「…はい」
警戒心が無かったわけではないが、私は応じてみることにした。
「サバテ山麓のとある村に、真珠のように美しい容姿と人並み外れた魔法の才を兼ね備えた娘が居ると聞いた。私は彼女の能力を買いに行こうとしていたのだが、もしかして、それは君ではないか?」
「…能力を買うって、どういうことですか?」
「君の優れた力を、私と、このジャサー地方の為に使おうということさ。君が望むものと引き換えにね。…申し遅れたな」
彼はそう言うと、まるで王を相手にしているかのように、片手を胸の前にやって、丁寧にお辞儀をした。
「私はジャサー地方、もといジャサー領統治の命を国王より承った『レイホーン家』が三代目当主、シーゾ・ハシレオス・レイホーンだ。改めて問おう、君はその才能を民と自分自身の為に使ってみる気はないか?」
相手がこの地域で最大の統治者だと知り、私はたじろいだ。
彼の後方に佇む凍てつく顔の近衛兵たちを見て、「既に首に刃を突きつけられている」と思った。「これは交渉であって交渉ではない」と。
それに、どのみち今の私には行く宛がない。
「はい」
私は頷いた。
「閣下、どうか私にご奉仕させてください」
私が平伏すると、彼は「良し」と一言。そして優しく私を抱き上げ、馬の上に乗せた。
「しっかり掴まっていろ」
背中側の私に送った眼差しは優しかった。
「はい」
私は指示通り、しっかりと閣下の大きな身体に掴まった。
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