魔王メーカー

壱元

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第一章

第一話

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 ケンダル王国、ジャサー地方の東部。

「汎人語」で単に「小さな山」を意味するサバテ山の麓にある名もなきごく小さな村。

その村の中心部に建てられた比較的大きな木造家屋。

蝋燭の火に照らされている赤子を見て、夫は青ざめ、産婆は困惑していた。

未発達ながら既に確認可能な美貌、光沢のある黄金色の産毛。

共に茶髪で、ごく平凡な顔立ちの若夫婦の間にたった今産まれた子と「言い張る」のには無理があった。

そして極めつけは、この静寂。

赤子は鳴き声の一つも上げなかった。

だが決して死産等ではなかった。目を閉じていたが、彼女は着実に呼吸を繰り返していた。

初めての夜を安らかに眠って明かした。


 「グレア」と名付けられたこの娘は順調に、いや、順調「すぎる」程によく育ってしまった。

二歳で流暢に言葉を話し始め、五歳で魔法を使い始めた。

この小さな村には教育機関は愚か、本さえ禄にはない。

本来、教育を受けていない一般人に意図した魔力操作はできないし、それが魔法として認識できる程度にまで到達するのは、五歳から専門教育を受けたとして、せいぜいどんなに早くても十歳頃だ。

魔法というものをまるで遠地のおとぎ話のようにばかり思っていた村人達にも、この異常性は見て取れた。

無知な人々が形成する、小規模で、閉鎖的で、(我々の世界の言葉で形容するなら)前近代的であるといえる社会において、常軌を逸する天賦の才が吸い付けるのは本来与えられるべき「尊敬」「栄光」「羨望」ではなく、その正反対にある、醜く、暗く、歪んだ物であった。

現在十一歳の少女グレアの人生は、既に同情に値するものだった。



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