魔王メーカー

壱元

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第一章

第二十五話 後編

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 顔を上げた時、トロールの太短い左手首が素早く曲がり、何かが真横を通過し、直後私の身体は揺れた。

何気なく右腕を見て、その不自然な凹みと切り傷を認識した時、激痛が襲いかかった。

「あああああああ!!!」

私は疲労を忘れてのたうち回った。

痛み以外何も感じなかった。

あまりに激しく暴れたのでちょっとした土煙が起こった。その向こうに憎たらしい影を見つけた途端、全ての苦痛は憎悪へと転じた。

私はありったけの魔力を左手に注ぎ込んだ。

そして、敵の、焼けて歯や鼻の根元が剥き出しになった顔面に解き放った。

炎ではなかった。

光線が眼前の目標物を貫いた。

だがその時、違和感を覚えた。

力なく倒れたその顔を見て、私は絶句した。

アルクだった。

本来トロールを撃ち抜くつもりで放った一撃が、ここにいるはずがないアルクを貫いた、この非現実は、きっと疲れ切った脳が作り上げた、幻覚だ。

私は力いっぱい拳骨で自分の頭を強打した。

でも、何も変わらないのだ。

私は一瞬思案して、結論にたどり着いた

きっと、これも「あの工作好きなデブ」の悪趣味な「作り物」に違いない。

私を、「彼」を、苔にされたと理解した途端に途方もない怒りが再発し、私はアルクの偽物を殴っていた。

殴打の度に私を邪魔するかのように何かが飛び散ったが、気にしなかった。

ある程度気が済んだ所で、主共々燃やしてやろうと私はよろめきながら立ち上がり、掌を開こうとしたが、何故か指が開かず呆然とした。

その時、人の肉声にも似た何かが聞こえた。

振り向くと、そこには武器を持った村民が居た。

暗闇でも分かるほど顔が青白く、こちらを奇妙な目付きと表情で見ていた。

「何をしている!?」

彼は私にそう質問した。切迫した声色で、必死な様子で。

何をそんなに慌てて居るのだろうかと辺りを見回した時、私の周りには沢山の人たちが居た。

「あれ?」

どういう風の吹き回しだろうか、私を称える為に集まったにしては、皆暗い、怯えた顔をしていた。

アルクに訳を聞こうと思ったのだが、見当たらない。

彼のお父さんとお母さんは居るのに。

「言っただろう」

声の主は村長だった。

「こいつは『悪魔』じゃ」
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