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第一章
第二十三話
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肌が見えないほどに石や岩で出来た鎧を全身に着込み、石と木の枝を結びつけて出来た、前回よりも巨大に見える斧を片手に持ち、その真っ赤な目で、明確な敵意を持ってこちらを見下ろしていた。
石で出来た仮面の内側で大きな口が開き、声を発した。
アルクと共に「言語」の基本を学んだからだろうか、何一つ単語が不明でも、その「言葉」の意味するところが直感的に分かってしまい、私は震えた。
私は全身全霊で走り出した。
後方からドスドスという低音と、身体の芯まで届くような重い揺れが立て続けに響いた。
「あっ!」
私は足を滑らせ、前方に飛び込むように転倒した。
その瞬間、後頭部を微かに撫でられたような感覚と、突風とが同時に襲いかかった。
遥か前方で硬い何かが衝突する音が響くと共に、頬に髪の毛が何本か降りかかり、そのまま落ちた。
一連の現象の意味を理解した私は、一瞬恐怖で目を潤した。
しかし、私はこれが千載一遇の反撃のチャンスだとも思い、両手に魔力を集中させながら、可能な限り迅速に立ち上がった。
敵は全身に「重荷」を帯びているが為に足が遅く、想定以上の遠方に居た。
両手に炎の球体が生じ、徐々に大きくなっていく。
一方、敵もそれに臆さず走り寄ってくる。
私は頃合いを見て、そいつに向けて両手の火球を放った。
「くらえ!」
私の最も得意な魔法:「大火球」だ。
火球たちは橙色の帯を残しながら相手の石の腹に命中し、軽快な音と共に爆発した。
敵の身体は一度大きく揺れた。
しかし、私の淡い期待は裏切られる事になる。
命中箇所は表面が多少焦げ、僅かに欠損しているのみで、「中身」は無傷なのであった。
対策されていたのだ。
「グヲヲヲ…」
トロールは低くうなり、再び接近を開始した。
「ああ…」
私は再び恐怖に支配され、バランスを崩しながら逃亡を再開した。
距離は詰まらないのに、振り返る度に相手は大きくなっていくように錯覚した。
だが確実に錯覚でないのは、敵が何かを振りかぶったことだ。
「ひゃっ」
私は目を殆ど瞑り、横に飛び移ってそれを避けた。
地面にはどうみても伐採用の斧としか見えない物が突き刺さっていた。
そしてその持ち手に当たる部分には、宵闇によく馴染む暗い色の毛皮が巻かれていた。
二つの事件の真相がたった今明かされたが、そんなことは気にしている暇など無かった。
石で出来た仮面の内側で大きな口が開き、声を発した。
アルクと共に「言語」の基本を学んだからだろうか、何一つ単語が不明でも、その「言葉」の意味するところが直感的に分かってしまい、私は震えた。
私は全身全霊で走り出した。
後方からドスドスという低音と、身体の芯まで届くような重い揺れが立て続けに響いた。
「あっ!」
私は足を滑らせ、前方に飛び込むように転倒した。
その瞬間、後頭部を微かに撫でられたような感覚と、突風とが同時に襲いかかった。
遥か前方で硬い何かが衝突する音が響くと共に、頬に髪の毛が何本か降りかかり、そのまま落ちた。
一連の現象の意味を理解した私は、一瞬恐怖で目を潤した。
しかし、私はこれが千載一遇の反撃のチャンスだとも思い、両手に魔力を集中させながら、可能な限り迅速に立ち上がった。
敵は全身に「重荷」を帯びているが為に足が遅く、想定以上の遠方に居た。
両手に炎の球体が生じ、徐々に大きくなっていく。
一方、敵もそれに臆さず走り寄ってくる。
私は頃合いを見て、そいつに向けて両手の火球を放った。
「くらえ!」
私の最も得意な魔法:「大火球」だ。
火球たちは橙色の帯を残しながら相手の石の腹に命中し、軽快な音と共に爆発した。
敵の身体は一度大きく揺れた。
しかし、私の淡い期待は裏切られる事になる。
命中箇所は表面が多少焦げ、僅かに欠損しているのみで、「中身」は無傷なのであった。
対策されていたのだ。
「グヲヲヲ…」
トロールは低くうなり、再び接近を開始した。
「ああ…」
私は再び恐怖に支配され、バランスを崩しながら逃亡を再開した。
距離は詰まらないのに、振り返る度に相手は大きくなっていくように錯覚した。
だが確実に錯覚でないのは、敵が何かを振りかぶったことだ。
「ひゃっ」
私は目を殆ど瞑り、横に飛び移ってそれを避けた。
地面にはどうみても伐採用の斧としか見えない物が突き刺さっていた。
そしてその持ち手に当たる部分には、宵闇によく馴染む暗い色の毛皮が巻かれていた。
二つの事件の真相がたった今明かされたが、そんなことは気にしている暇など無かった。
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