魔王メーカー

壱元

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第一章

第十九話

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翌日も、そのまた翌日も、そのさらにまた翌日も…と、私達の読解は五日間続いた。

そして今日、たった今、遂に「第一章」を解釈し終え、私達は一息ついた。

「長かったね」

私がそう言うと、彼は

「でも、面白かった」と楽しげに笑った。

私も同意し、二人揃って朝焼けを望んだ。

太陽は赤色とも橙色とも言えない色で、程よい明るさと透明感を持っていた。

私は、叶うなら、いつまでもアルクと一緒にこの美しい時間の中に居たいと思った。

ふと疑問が心に浮かんだ。

彼が私と一緒に居てくれているのは何故だろうか、と。

 私と彼との出会いは確かに魔法であった。そして、現在彼が私に期待しているのは言語能力だ。言語能力についてはつい最近判明したことだ。また、今まで、彼が個人的に私に魔法の披露を求めることは殆どなかったように思う。

いつも私の手を取って芝生の方へ連れて行き、寝転び、二人きりで他愛もない数々の事柄をつれづれなるままに話す。あるいは他の友達も勧誘して脇目も振らず鬼ごっこや隠れんぼをして遊ぶ。

私達が共有している時間の大半はこの様に過ごされた。

アルクは何か、私の魔法以外の特性を気に入ってくれているのだろうか?

それとも「友達」というのは定言的に丸ごと愛の中に置かれるものなのだろうか?

「ねえ、アルク」

私は直接的に質問をぶつけてみることにした。

「どうして、これまで私と一緒に居てくれたの? 私はそんなに魔法は使わなかったのに」

即時返答、とはいかなかった。

見ると、彼はどうやら、こちらの顔色をうかがっている部分があるようにも思われた。

「実は…」

照れくさそうに笑い、彼は言った。

「実は、お前が綺麗だから好きなんだ」

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