魔王メーカー

壱元

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第一章

第十八話

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私が散歩の末に集合場所に到着して数分後、朝日に照らされながら、アルクは歩いてきた。その両手には分厚い本を持っている。

彼は私を見ると、何気ない様子で、「早いな」と呟いた。

今だ。

私は彼の目をまっすぐ見つめ、誠心誠意謝罪した。

「昨日はごめんなさい」

彼は無言だった。

彼はただ、不思議そうな表情を浮かべるだけだった。しかし、そのうち「何で謝ってるんだ?」と心の底から湧き出したような調子で質問を投げかけてきた。

私が「説明」の名を借りて自らの罪状を供述すると、アルクは笑った。

「そんなこと、気にしちゃいねえよ」

彼は確かにそう返答したのだった。

そしてこう続けた。

「最初会った時も森で迷った時も、お前は俺を助けてくれた。でも、俺のせいでお前は罰を課せられそうになったんだ。だから嫌われたと思った。母さんは俺がお前と会うのに反対してたから、それをきっかけにお互いの為に友達をやめようと思った。でもお前は友達で居てくれた。…俺はお前が仲良くしてくれるだけでありがたいんだ。お前がうっかり何かしても、気にしねえよ」

思わぬ称賛と感謝の嵐に揉まれ、私は驚きながらもあれこれ複雑に物思いに耽っていた。

だが、その間に彼は私の傍に来ていたようである。

「グレア。この本を読んで、何が書いてあるのかわかるか?」

私はどぎまぎしながらも、眼前に広げられたページに目を通した。

「わかるよ」

私がそう答えると、彼は「それを教えてくれ」と言った。

 読み進めていく内に、文字を読むことが出来る彼が何故そんな依頼をしたのか察せられてきた。

この、一昨日のそれに勝る重厚な本は何やら「言葉」に関するものらしい。

とにかく内容も表現も難解で抽象的であったので、私の注釈を必要としたのだ。

私が朗読と講釈を繰り返すと、節目節目で彼はいたいけな眼差しを向けながら、こくこくと頷いた。

まるで小さい子供のようで、何倍も増して愛おしく思えてきた。

そんな中、日は昇り、彼は急いで本を畳んだ。

「明日もよろしくな!」

彼は最後にそう言い残してから元気よく走って行った。



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