18 / 153
第一章
第十七話
しおりを挟む
考えすぎた昨夜、十分な睡眠を取ることはできず、結局起床時間も遅くなりすぎた。
目が覚めた時、「無理にでも、寝ておくべきだった」と激しく後悔した。
アルクとの早朝の密会を無責任に欠席してしまったのだ。
お母さんの料理を手伝っている時も、お父さんと他愛もない話をしている間も、私は動揺を悟られまいと必死だった。
昼になって、ようやく一人きりになれた。
私は枕に極限まで深く顔を埋め、気が済むまで叫び続けた。そして、疲れ切ってからふと、ころりと仰向けになった。
この時、明日はアルクよりも早く到着して彼を待っておくこと、そして、彼に誠心誠意謝罪して過ちは繰り返さぬと宣誓することを、虚ろに考え、確固として決意したのであった。
二人が帰ってきてからも、やはり私の頭は明日の事で一杯だった。
もし二人が今朝の私の異常性を勘付いているのなら、きっと夕方の私も朝と変わらないように見えていることだろう。
だが、結果としては私は毛布にくるまるその時まで、疑惑を掛けられる事はなかった。
私は明日一番の目標を確認しながら、しっかり目を閉じた。
目覚めた時、部屋はまだ暗かった。
想定以上に早い時間に起床してしまったことは確かだったが、寝過ごしてしまうことへの恐怖から再度寝転ぶことは出来なかった。
取り敢えず身なりだけは整え、洗面し、黎明の村を闊歩した。
こうしてみると、住み慣れたこの村にも随分と新鮮な趣がある。
染料で塗装された家々の壁は薄暗い中でも快活に自らの存在を訴えていたし、木製の門は昇りゆく朝日を受けて何とも絶妙な色に光っていた。
偶然見た誰かの家の煉瓦の隙間には、白色のヤモリみたいな生き物が寝ているのが見えた。
私は今までほとんど外に出たことがなかった。
もしアルクがあの時訪ねてきてくれなかったら…或いはあの時私が彼らを助けていなかったら…私はきっと永遠にあの狭い家の中に、震えながら引き籠もり続けることになっていただろう。
改めて考えると、私の一瞬の勇気が、アルクとの出会いが、私を変えたのだ。
「ふふ」
顧みた時、私の十一年間を抑えつけていた枷が張り子に過ぎないように思えて、笑みが零れたのだった。
それと同時に、アルクに対する使命感も強まっていった。
目が覚めた時、「無理にでも、寝ておくべきだった」と激しく後悔した。
アルクとの早朝の密会を無責任に欠席してしまったのだ。
お母さんの料理を手伝っている時も、お父さんと他愛もない話をしている間も、私は動揺を悟られまいと必死だった。
昼になって、ようやく一人きりになれた。
私は枕に極限まで深く顔を埋め、気が済むまで叫び続けた。そして、疲れ切ってからふと、ころりと仰向けになった。
この時、明日はアルクよりも早く到着して彼を待っておくこと、そして、彼に誠心誠意謝罪して過ちは繰り返さぬと宣誓することを、虚ろに考え、確固として決意したのであった。
二人が帰ってきてからも、やはり私の頭は明日の事で一杯だった。
もし二人が今朝の私の異常性を勘付いているのなら、きっと夕方の私も朝と変わらないように見えていることだろう。
だが、結果としては私は毛布にくるまるその時まで、疑惑を掛けられる事はなかった。
私は明日一番の目標を確認しながら、しっかり目を閉じた。
目覚めた時、部屋はまだ暗かった。
想定以上に早い時間に起床してしまったことは確かだったが、寝過ごしてしまうことへの恐怖から再度寝転ぶことは出来なかった。
取り敢えず身なりだけは整え、洗面し、黎明の村を闊歩した。
こうしてみると、住み慣れたこの村にも随分と新鮮な趣がある。
染料で塗装された家々の壁は薄暗い中でも快活に自らの存在を訴えていたし、木製の門は昇りゆく朝日を受けて何とも絶妙な色に光っていた。
偶然見た誰かの家の煉瓦の隙間には、白色のヤモリみたいな生き物が寝ているのが見えた。
私は今までほとんど外に出たことがなかった。
もしアルクがあの時訪ねてきてくれなかったら…或いはあの時私が彼らを助けていなかったら…私はきっと永遠にあの狭い家の中に、震えながら引き籠もり続けることになっていただろう。
改めて考えると、私の一瞬の勇気が、アルクとの出会いが、私を変えたのだ。
「ふふ」
顧みた時、私の十一年間を抑えつけていた枷が張り子に過ぎないように思えて、笑みが零れたのだった。
それと同時に、アルクに対する使命感も強まっていった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!
カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!!
祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。
「よし、とりあえず叩いてみよう!!」
ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。
※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる