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第一章
第十七話
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考えすぎた昨夜、十分な睡眠を取ることはできず、結局起床時間も遅くなりすぎた。
目が覚めた時、「無理にでも、寝ておくべきだった」と激しく後悔した。
アルクとの早朝の密会を無責任に欠席してしまったのだ。
お母さんの料理を手伝っている時も、お父さんと他愛もない話をしている間も、私は動揺を悟られまいと必死だった。
昼になって、ようやく一人きりになれた。
私は枕に極限まで深く顔を埋め、気が済むまで叫び続けた。そして、疲れ切ってからふと、ころりと仰向けになった。
この時、明日はアルクよりも早く到着して彼を待っておくこと、そして、彼に誠心誠意謝罪して過ちは繰り返さぬと宣誓することを、虚ろに考え、確固として決意したのであった。
二人が帰ってきてからも、やはり私の頭は明日の事で一杯だった。
もし二人が今朝の私の異常性を勘付いているのなら、きっと夕方の私も朝と変わらないように見えていることだろう。
だが、結果としては私は毛布にくるまるその時まで、疑惑を掛けられる事はなかった。
私は明日一番の目標を確認しながら、しっかり目を閉じた。
目覚めた時、部屋はまだ暗かった。
想定以上に早い時間に起床してしまったことは確かだったが、寝過ごしてしまうことへの恐怖から再度寝転ぶことは出来なかった。
取り敢えず身なりだけは整え、洗面し、黎明の村を闊歩した。
こうしてみると、住み慣れたこの村にも随分と新鮮な趣がある。
染料で塗装された家々の壁は薄暗い中でも快活に自らの存在を訴えていたし、木製の門は昇りゆく朝日を受けて何とも絶妙な色に光っていた。
偶然見た誰かの家の煉瓦の隙間には、白色のヤモリみたいな生き物が寝ているのが見えた。
私は今までほとんど外に出たことがなかった。
もしアルクがあの時訪ねてきてくれなかったら…或いはあの時私が彼らを助けていなかったら…私はきっと永遠にあの狭い家の中に、震えながら引き籠もり続けることになっていただろう。
改めて考えると、私の一瞬の勇気が、アルクとの出会いが、私を変えたのだ。
「ふふ」
顧みた時、私の十一年間を抑えつけていた枷が張り子に過ぎないように思えて、笑みが零れたのだった。
それと同時に、アルクに対する使命感も強まっていった。
目が覚めた時、「無理にでも、寝ておくべきだった」と激しく後悔した。
アルクとの早朝の密会を無責任に欠席してしまったのだ。
お母さんの料理を手伝っている時も、お父さんと他愛もない話をしている間も、私は動揺を悟られまいと必死だった。
昼になって、ようやく一人きりになれた。
私は枕に極限まで深く顔を埋め、気が済むまで叫び続けた。そして、疲れ切ってからふと、ころりと仰向けになった。
この時、明日はアルクよりも早く到着して彼を待っておくこと、そして、彼に誠心誠意謝罪して過ちは繰り返さぬと宣誓することを、虚ろに考え、確固として決意したのであった。
二人が帰ってきてからも、やはり私の頭は明日の事で一杯だった。
もし二人が今朝の私の異常性を勘付いているのなら、きっと夕方の私も朝と変わらないように見えていることだろう。
だが、結果としては私は毛布にくるまるその時まで、疑惑を掛けられる事はなかった。
私は明日一番の目標を確認しながら、しっかり目を閉じた。
目覚めた時、部屋はまだ暗かった。
想定以上に早い時間に起床してしまったことは確かだったが、寝過ごしてしまうことへの恐怖から再度寝転ぶことは出来なかった。
取り敢えず身なりだけは整え、洗面し、黎明の村を闊歩した。
こうしてみると、住み慣れたこの村にも随分と新鮮な趣がある。
染料で塗装された家々の壁は薄暗い中でも快活に自らの存在を訴えていたし、木製の門は昇りゆく朝日を受けて何とも絶妙な色に光っていた。
偶然見た誰かの家の煉瓦の隙間には、白色のヤモリみたいな生き物が寝ているのが見えた。
私は今までほとんど外に出たことがなかった。
もしアルクがあの時訪ねてきてくれなかったら…或いはあの時私が彼らを助けていなかったら…私はきっと永遠にあの狭い家の中に、震えながら引き籠もり続けることになっていただろう。
改めて考えると、私の一瞬の勇気が、アルクとの出会いが、私を変えたのだ。
「ふふ」
顧みた時、私の十一年間を抑えつけていた枷が張り子に過ぎないように思えて、笑みが零れたのだった。
それと同時に、アルクに対する使命感も強まっていった。
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