魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
上 下
8 / 82
第一章

第七話

しおりを挟む
 私達と同じくらいの歳に見える子が二人、少し小さい子が一人。

アルクはその三人に話をしていた。

私は彼の指示で、木陰に身を潜めている。

「俺はあいつとよく遊んでいるけど、あいつ、いいヤツだよ」

「でも、みんな『悪魔』って呼んでいるよ? お母さんも不幸になるから関わっちゃ駄目って言ってたし」

「嘘だぞ。あいつと居ても、別に悪いことは起きないしな」

「本当?」

「ぜってえ本当。あと、お前らもあいつの魔法見たよな? あいつの魔法、すごいんだぜ! ぜってえ面白えから、お前らにも見せてやりたいんだ」

「確かにすごかったけど、怖くないの?」

「大丈夫。あいつ、いいヤツだからさ」

「それなら、見てみたいかも?」

「おう!」

アルクがくるっとこっちを向いた。

三人を怖がらせないよう、ゆっくりと出る。

それでも、私の姿を見た途端、表情が強張ったのが分かった。

でも幸いだった。挨拶できる距離まで近付くことができた。

顔を向き合わせて話せば、希望は見える。

「こんにちは。私はグレア。君達は?」

彼らは顔を見合わせ、黙っていた。だが、そのうち一人が応えてくれた。それに続き、他の二人も名乗った。

「グレア、こいつら魔法が見たいんだってよ。だから見せてやってくれ」

「うん」

 ゆっくりと、両手を胸の高さまで上げる。

三人の目線がそこに集まるのを感じる。

今だ。

掌を天に向け、全身に流れる魔力を集中させる。

「おおー」

光り輝く「火球パシア」が掌上に形成される。

そして空中に打ち出される。

火の玉は天高く上がったが、ある所で上昇を止め、落下してくる。

私は再び魔力を集めた。

今度は炎ではなく、水が渦巻く。

「えい!」

水が真上に発射される。

一本の線になって、火球を撃ち抜く。

水矢シャルロー」。

火球は消滅し、細かな水が爽やかにみんなの上に降り注ぎ、虹が掛かる。

二人で練り上げた作戦は、成功だ。

私は笑顔で三人の方を向いた。

だが、意外にも、彼らは暗い表情をしていた。

「どうした…の?」

鼓動が速まるのを感じる。

まさか、私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。

もしまた村の裁判に掛けられたら…

そんな私の心配は、杞憂に終わる。

「今まで酷いことして、ごめんなさい」

「おら達があの時逃げたのは、怖かったのもあるけど、やり返されると思ったからなんだ」

三人は口々に謝罪し、私と和解した。

思わぬ誠実さに、胸のあたりが暖かくなった。

やはり人と人、話せば分かり合えるんだ。

「これからよろしくね」

握手を交わし、私達は友だちになった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

(完結)妹の婚約者である醜草騎士を押し付けられました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:8,021

いや、一応苦労してますけども。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:749

底辺風俗嬢の私が異世界で公爵令嬢になれるわけがない

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

不実なあなたに感謝を

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,013pt お気に入り:3,449

君の手で‪‪✕‬して~適合体No.02の逃亡理由~

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:16

あたたかくなったら

絵本 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

複雑な関係

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...