魔王メーカー

壱元

文字の大きさ
上 下
8 / 158
第一章

第七話

しおりを挟む
 私達と同じくらいの歳に見える子が二人、少し小さい子が一人。

アルクはその三人に話をしていた。

私は彼の指示で、木陰に身を潜めている。

「俺はあいつとよく遊んでいるけど、あいつ、いいヤツだよ」

「でも、みんな『悪魔』って呼んでいるよ? お母さんも不幸になるから関わっちゃ駄目って言ってたし」

「嘘だぞ。あいつと居ても、別に悪いことは起きないしな」

「本当?」

「ぜってえ本当。あと、お前らもあいつの魔法見たよな? あいつの魔法、すごいんだぜ! ぜってえ面白えから、お前らにも見せてやりたいんだ」

「確かにすごかったけど、怖くないの?」

「大丈夫。あいつ、いいヤツだからさ」

「それなら、見てみたいかも?」

「おう!」

アルクがくるっとこっちを向いた。

三人を怖がらせないよう、ゆっくりと出る。

それでも、私の姿を見た途端、表情が強張ったのが分かった。

でも幸いだった。挨拶できる距離まで近付くことができた。

顔を向き合わせて話せば、希望は見える。

「こんにちは。私はグレア。君達は?」

彼らは顔を見合わせ、黙っていた。だが、そのうち一人が応えてくれた。それに続き、他の二人も名乗った。

「グレア、こいつら魔法が見たいんだってよ。だから見せてやってくれ」

「うん」

 ゆっくりと、両手を胸の高さまで上げる。

三人の目線がそこに集まるのを感じる。

今だ。

掌を天に向け、全身に流れる魔力を集中させる。

「おおー」

光り輝く「火球パシア」が掌上に形成される。

そして空中に打ち出される。

火の玉は天高く上がったが、ある所で上昇を止め、落下してくる。

私は再び魔力を集めた。

今度は炎ではなく、水が渦巻く。

「えい!」

水が真上に発射される。

一本の線になって、火球を撃ち抜く。

水矢シャルロー」。

火球は消滅し、細かな水が爽やかにみんなの上に降り注ぎ、虹が掛かる。

二人で練り上げた作戦は、成功だ。

私は笑顔で三人の方を向いた。

だが、意外にも、彼らは暗い表情をしていた。

「どうした…の?」

鼓動が速まるのを感じる。

まさか、私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。

もしまた村の裁判に掛けられたら…

そんな私の心配は、杞憂に終わる。

「今まで酷いことして、ごめんなさい」

「おら達があの時逃げたのは、怖かったのもあるけど、やり返されると思ったからなんだ」

三人は口々に謝罪し、私と和解した。

思わぬ誠実さに、胸のあたりが暖かくなった。

やはり人と人、話せば分かり合えるんだ。

「これからよろしくね」

握手を交わし、私達は友だちになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異端の紅赤マギ

みどりのたぬき
ファンタジー
【なろう83000PV超え】 --------------------------------------------- その日、瀧田暖はいつもの様にコンビニへ夕食の調達に出掛けた。 いつもの街並みは、何故か真上から視線を感じて見上げた天上で暖を見る巨大な『眼』と視線を交わした瞬間激変した。 それまで見ていたいた街並みは巨大な『眼』を見た瞬間、全くの別物へと変貌を遂げていた。 「ここは異世界だ!!」 退屈な日常から解き放たれ、悠々自適の冒険者生活を期待した暖に襲いかかる絶望。 「冒険者なんて職業は存在しない!?」 「俺には魔力が無い!?」 これは自身の『能力』を使えばイージーモードなのに何故か超絶ヘルモードへと突き進む一人の人ならざる者の物語・・・ --------------------------------------------------------------------------- 「初投稿作品」で色々と至らない点、文章も稚拙だったりするかもしれませんが、一生懸命書いていきます。 また、時間があれば表現等見直しを行っていきたいと思っています。※特に1章辺りは大幅に表現等変更予定です、時間があれば・・・ ★次章執筆大幅に遅れています。 ★なんやかんやありまして...

機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀
ファンタジー
 東京の南はるか先、聟島に作られた魔法特区。魔法技術高等専門学校2年になった俺は、1年年下の幼馴染の訪問を受ける。それが、学生会幹部3人を交えた騒がしい日々が始まるきっかけだった。  これは幼馴染の姉妹や個性的な友達達とともに過ごす、面倒だが楽しくないわけでもない日々の物語。  5月中は毎日投稿、以降も1週間に2話以上更新する予定です。

ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!

直哉 酒虎
ファンタジー
ある日異世界転生してしまった芹澤恵莉奈。 異世界にきたのでセリナと名前を変えて、大好きだったアニメやゲームのような異世界にテンションが上がる。 そして冒険者になろうとしたのだが、初めてのクエストで命の危機を感じてすぐ断念。 助けられた冒険者におすすめされ、冒険者協会の受付嬢になることを決意する。 受付嬢になって一年半、元の世界でのオタク知識が役に立ち、セリナは優秀な成績を収めるが毎日波乱万丈。 今日もクエストを受注に来た担当冒険者は一体何をやらかすのやら…

治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師 そんな彼が出会った一人の女性 日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。 小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。 表紙画像はAIで作成した主人公です。 キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。 更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

処理中です...