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第一章
第七話
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私達と同じくらいの歳に見える子が二人、少し小さい子が一人。
アルクはその三人に話をしていた。
私は彼の指示で、木陰に身を潜めている。
「俺はあいつとよく遊んでいるけど、あいつ、いいヤツだよ」
「でも、みんな『悪魔』って呼んでいるよ? お母さんも不幸になるから関わっちゃ駄目って言ってたし」
「嘘だぞ。あいつと居ても、別に悪いことは起きないしな」
「本当?」
「ぜってえ本当。あと、お前らもあいつの魔法見たよな? あいつの魔法、すごいんだぜ! ぜってえ面白えから、お前らにも見せてやりたいんだ」
「確かにすごかったけど、怖くないの?」
「大丈夫。あいつ、いいヤツだからさ」
「それなら、見てみたいかも?」
「おう!」
アルクがくるっとこっちを向いた。
三人を怖がらせないよう、ゆっくりと出る。
それでも、私の姿を見た途端、表情が強張ったのが分かった。
でも幸いだった。挨拶できる距離まで近付くことができた。
顔を向き合わせて話せば、希望は見える。
「こんにちは。私はグレア。君達は?」
彼らは顔を見合わせ、黙っていた。だが、そのうち一人が応えてくれた。それに続き、他の二人も名乗った。
「グレア、こいつら魔法が見たいんだってよ。だから見せてやってくれ」
「うん」
ゆっくりと、両手を胸の高さまで上げる。
三人の目線がそこに集まるのを感じる。
今だ。
掌を天に向け、全身に流れる魔力を集中させる。
「おおー」
光り輝く「火球」が掌上に形成される。
そして空中に打ち出される。
火の玉は天高く上がったが、ある所で上昇を止め、落下してくる。
私は再び魔力を集めた。
今度は炎ではなく、水が渦巻く。
「えい!」
水が真上に発射される。
一本の線になって、火球を撃ち抜く。
「水矢」。
火球は消滅し、細かな水が爽やかにみんなの上に降り注ぎ、虹が掛かる。
二人で練り上げた作戦は、成功だ。
私は笑顔で三人の方を向いた。
だが、意外にも、彼らは暗い表情をしていた。
「どうした…の?」
鼓動が速まるのを感じる。
まさか、私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。
もしまた村の裁判に掛けられたら…
そんな私の心配は、杞憂に終わる。
「今まで酷いことして、ごめんなさい」
「おら達があの時逃げたのは、怖かったのもあるけど、やり返されると思ったからなんだ」
三人は口々に謝罪し、私と和解した。
思わぬ誠実さに、胸のあたりが暖かくなった。
やはり人と人、話せば分かり合えるんだ。
「これからよろしくね」
握手を交わし、私達は友だちになった。
アルクはその三人に話をしていた。
私は彼の指示で、木陰に身を潜めている。
「俺はあいつとよく遊んでいるけど、あいつ、いいヤツだよ」
「でも、みんな『悪魔』って呼んでいるよ? お母さんも不幸になるから関わっちゃ駄目って言ってたし」
「嘘だぞ。あいつと居ても、別に悪いことは起きないしな」
「本当?」
「ぜってえ本当。あと、お前らもあいつの魔法見たよな? あいつの魔法、すごいんだぜ! ぜってえ面白えから、お前らにも見せてやりたいんだ」
「確かにすごかったけど、怖くないの?」
「大丈夫。あいつ、いいヤツだからさ」
「それなら、見てみたいかも?」
「おう!」
アルクがくるっとこっちを向いた。
三人を怖がらせないよう、ゆっくりと出る。
それでも、私の姿を見た途端、表情が強張ったのが分かった。
でも幸いだった。挨拶できる距離まで近付くことができた。
顔を向き合わせて話せば、希望は見える。
「こんにちは。私はグレア。君達は?」
彼らは顔を見合わせ、黙っていた。だが、そのうち一人が応えてくれた。それに続き、他の二人も名乗った。
「グレア、こいつら魔法が見たいんだってよ。だから見せてやってくれ」
「うん」
ゆっくりと、両手を胸の高さまで上げる。
三人の目線がそこに集まるのを感じる。
今だ。
掌を天に向け、全身に流れる魔力を集中させる。
「おおー」
光り輝く「火球」が掌上に形成される。
そして空中に打ち出される。
火の玉は天高く上がったが、ある所で上昇を止め、落下してくる。
私は再び魔力を集めた。
今度は炎ではなく、水が渦巻く。
「えい!」
水が真上に発射される。
一本の線になって、火球を撃ち抜く。
「水矢」。
火球は消滅し、細かな水が爽やかにみんなの上に降り注ぎ、虹が掛かる。
二人で練り上げた作戦は、成功だ。
私は笑顔で三人の方を向いた。
だが、意外にも、彼らは暗い表情をしていた。
「どうした…の?」
鼓動が速まるのを感じる。
まさか、私は何か悪いことをしてしまったのだろうか。
もしまた村の裁判に掛けられたら…
そんな私の心配は、杞憂に終わる。
「今まで酷いことして、ごめんなさい」
「おら達があの時逃げたのは、怖かったのもあるけど、やり返されると思ったからなんだ」
三人は口々に謝罪し、私と和解した。
思わぬ誠実さに、胸のあたりが暖かくなった。
やはり人と人、話せば分かり合えるんだ。
「これからよろしくね」
握手を交わし、私達は友だちになった。
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