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生命のバトン
運命の出会い
しおりを挟む医学部に入学して初日。
まずはクラスで自己紹介なるものが始まった。
大学生になってまで自己紹介かよー、、なんて思って半分夢の中と現実を行き来していた時、
「皆さん、はじめまして!!」
そんな明るく馬鹿デカい声に俺は完全に目が覚めた。
俺の前の席。
色素の薄い、茶髪に目立つ赤のカチューシャをつけた女。
小柄な外見からは想像できないほど元気な声で彼女は自己紹介を始める。
「はじめまして、高田楓花(タカダ フウカ)といいます!!
将来は小児科医を目指して頑張りたいと思います!
よろしくお願いします!」
クラス全体に向けて挨拶をした後、くるりと振り返り、俺ににこりと笑顔を向けた。
ー瞬間、不覚にもその笑顔の虜になった。
誰からみても、満面の笑み。
コロコロと変わる、分かりやすい表情。
見ていてちっとも飽きない行動。
まるで小動物のよう。無意識のうちの目で追っていると気づくまでにもそう時間はかからなかった。
ーきっと、一目惚れだったんだと今でも思う。
誰とでも気軽に話せ、輪の中心になっていく明るさ。
同じ医学部でもしっかりと目指す目標をたて、真っ直ぐ向かっていくその志の強さ。
全てが俺に足りないもので、眩しくみえるもの。
俺は太陽を求める旅人のように果てしなく遠い存在だと感じた彼女に恋をした。
苗字の番号が近かったのが幸いしてか、グループやペアになることが多かった俺達は1ヶ月も経たないうちにそれなりの関係を築いていた。
「ねぇ、カナはなんで医学部目指したの??」
俺の理由にも特に異論を唱えることなく、「すごいことだよ、頑張ったんだね」と全面的に肯定してくれる楓花。
楓花は医者一家の親族がおり、大好きな叔母さんが小児科医でその背中をみて育っており、医学部に入れたら絶対小児科だと幼い頃から決めていたらしい。
この明るい楓花なら、小児科は天職だろう、となんとなく思ってしまう。
これが、俺の人生を変えてくれた彼女ー、楓花との出会いだった。
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