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生命のバトン

普通じゃない日々

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ー小さい頃から普通に憧れていた。


男子なら当たり前のように経験する遊びや運動が俺には当たり前じゃなくて、いつも制限と隣り合わせの日々だった。



立花湊斗(タチバナ ミナト)。


俺は生まれながらに心臓に病気をもって生まれた。


普段の生活としてはとくに大きな支障はない。
外見でも俺が生まれつき病と闘っているなんて分かる人は話さないと分からないだろう。


ただ、心臓に負荷のかかることは厳禁。そして日常でもたまに胸が痛みだすことがある。


心臓に負荷のかかることができない。



今となってはコントロールできるが、子供の頃はそれがとりあえず苦痛でしかなかった。


身体を動かすことが苦手な子ならまだいいが、テレビでもスポーツ番組が観るのが好きだった俺。


実はスポーツ選手になりたかった、なんて俺の病気をずっと気にしている親の前では口が裂けても言えなかった。



長時間たち続けることもできず、スポーツもできない。もちろん、体育も参加できず。


胸に痛みがあれば数週間から数ヶ月単位で入退院を繰り返していた俺は自然と同年代の奴らと距離が広まっていった。



気づけば小学校卒業時点で友達と呼べる人物は幼馴染の澄(ノボル)を除いて居なくなっていた。



克服するとすれば、心臓移植があるが、それなりの年齢を重ねて心臓移植がいかにハードルの高いものかを知り、一時期はもう終わりだ、と自暴自棄になっていたこともあったが、澄や家族に支えられ、気づけば大学生になっていた。



医学部。



特に大きな志をもって選んだわけじゃない。俺が病気だったから、同じように苦しむ人たちを助けたい!なんて大それたことは言えない。



だって自分の病気ともまた向き合えてない状態なんだ。
他人のことなんて正直二の次。



ただ、もしかしたら自分の病気を治す糸口が見つかるかも。そんな気持ち。



医学部に受かったなんて言うと「すごいね、勉強頑張ったんだね」なんて言われるけど、勉強しかやることがなかっただけ。


入退院を繰り返して、皆が遊んでいる時間にできることを探した結果、それが勉強で。


気づいたら医学部に入学できる知識が備わっていた。ただそれだけ。


そんなふわふわとした状態で、俺は幼馴染の澄とともに県内の大学へ入学した。



その時は、まさかこんな出逢いが待ってるなんて思いもしなかった。






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