91 / 526
第一部
第十話 女と人形(4)
しおりを挟む
「たわわなまでの××を×みしだき、ダニエルは接吻《くちづけ》た。
『先生、止めてください、私……』アンは吐息した。だが、その言葉とは裏腹に、瞳は潤みを帯びてダニエルを見つめていた。
『何をして欲しいか、言いなさい』
いつもの授業のように、ダニエルはアンに問いかけた。
『先生の×××××を』
『それだけじゃ足りないよ』
『先生の×××××を私の……××、××××の中に入れてください』
『もっと言葉を費やして』
ダニエルは笑いながら言った。
『先生の×く××した×××××を私の×れ×れで××××××になった××な××××に突っ込んでください!』
『よし』
ダニエルはアンを押し倒し……」
とここまで読んだところで、ズデンカはロランが自分の胸へ手を伸ばしてくるのを目の端で捉えた。
ズデンカにとってはとてもゆっくりとした動きに見えたが、瞬時に起こったことなのだ。
ズデンカはその手をひょいと軽く掴んで、ロランの身体ごと背中に抱え、前へと投げ落とした。
「ぎゃあ! ……いでででっ!」
床でのたうち回りながらロランは呻いた。
「いきなり何しやがるんだ」
ズデンカは両手を打ち合わせてパンパンと払った。
「召使いの女はだいたいこうすれば何もしてこないものなのだが……恥じらう様子すら」
「あのな、それはお前が怖くて何も出来ないだけだろ。主人という立場を笠に着やがって。まさか興奮しているとでも思ってんのか?」
ズデンカは腰に手を当てて呆れながら言った。
「口答えしてくる女も良いものだな」
ロランはゆっくり立ち上がった。
「お待たせしました。もう朗読も終わりですかね?」
ルナが微笑みながらこちらに歩いてきた。
確かに、中央で鎖に縛られながら立っていたメリザンドはもう声を上げていなかった。
代わりにその周りには座席から歩いてきた男どもが群れをなしており、メリザンドの身体を触りまくっていた。
「あのままにしておいても良いんですか?」
「いいですよ。実際に裸の女に触れて頂いて、楽しんで貰おうって趣向です。実際ペンチやライターなども置いて何でもやってくださいとお願いしたこともありましたよ」
「そしたら、どうなったんです?」
ルナは興味深そうに訊いた。
「皆さん羽目を外し過ぎましてね。メリザンドが血だらけになりそうだったので止めさせました。流石に愛娘を失いたくないですからな。ハッハッハ!」
偉そうにロランは笑った。
「なるほど、まるで人形なんですね。しかし、その所業。創作の中だけに収まっていませんね」
ルナはロランを見つめた。
「創作を出来る限り現実に近づける方法なのですよ。実際、高額なカメラを買って、映画にしようとも考えております。将来的に映像の技術が進めば、安い値段で皆が手軽にポルノグラフィを楽しむことが出来るような社会になると考えています」
「そうなるともう地下出版で済む市場じゃなくなりますね」
「最終的にポルノは商業としてなり立つと思いますよ。私のような少人数だけで楽しみたい者からすれば内心忸怩たるものはありますけどね。でも、どんな凄い官能作品が作られるかと楽しみでなりません。異端を愛する者からすればね」
「まあ、その時代にはわたしもあなたも生きてないでしょうけど」
ルナは笑った。
「仕方ないですよ。次の時代を担う若者たちに任せましょう」
そういってロランはメリザンドへ歩いていき、鍵を外してルナとズデンカの元へ連れてきた。
「『綺譚集』を出されたペルッツさまだ。挨拶せよ」
「初めまして、メリザンド・ジョンキーユです。母の夫の姓を名乗らせて頂いています。よろしくお願いします。ペルッツさまのまとめられたものを朗読したことがありますよ」
メリザンドはにっこり笑って一礼した。
「へえ、そうなんですか。そんな綺譚《おはなし》まとめたかな? 艶笑譚風のものは幾つかありますけどね」
「なかなか好評でしたよ!」
「ありがたいですね! わたし自身は朗読会とかさっぱり行かないもので。人が読むのを聞いたこともないし、聞く気もない」
「お読みしましょうか」
メリザンドは微笑みを崩さず言った。
「いえ、遠慮しておきます。それより新しい綺譚《おはなし》が集めたくてうずうずしてるんです。最近書く機会がなくってね」
と言ってルナは懐から手帳を取り出した。
『先生、止めてください、私……』アンは吐息した。だが、その言葉とは裏腹に、瞳は潤みを帯びてダニエルを見つめていた。
『何をして欲しいか、言いなさい』
いつもの授業のように、ダニエルはアンに問いかけた。
『先生の×××××を』
『それだけじゃ足りないよ』
『先生の×××××を私の……××、××××の中に入れてください』
『もっと言葉を費やして』
ダニエルは笑いながら言った。
『先生の×く××した×××××を私の×れ×れで××××××になった××な××××に突っ込んでください!』
『よし』
ダニエルはアンを押し倒し……」
とここまで読んだところで、ズデンカはロランが自分の胸へ手を伸ばしてくるのを目の端で捉えた。
ズデンカにとってはとてもゆっくりとした動きに見えたが、瞬時に起こったことなのだ。
ズデンカはその手をひょいと軽く掴んで、ロランの身体ごと背中に抱え、前へと投げ落とした。
「ぎゃあ! ……いでででっ!」
床でのたうち回りながらロランは呻いた。
「いきなり何しやがるんだ」
ズデンカは両手を打ち合わせてパンパンと払った。
「召使いの女はだいたいこうすれば何もしてこないものなのだが……恥じらう様子すら」
「あのな、それはお前が怖くて何も出来ないだけだろ。主人という立場を笠に着やがって。まさか興奮しているとでも思ってんのか?」
ズデンカは腰に手を当てて呆れながら言った。
「口答えしてくる女も良いものだな」
ロランはゆっくり立ち上がった。
「お待たせしました。もう朗読も終わりですかね?」
ルナが微笑みながらこちらに歩いてきた。
確かに、中央で鎖に縛られながら立っていたメリザンドはもう声を上げていなかった。
代わりにその周りには座席から歩いてきた男どもが群れをなしており、メリザンドの身体を触りまくっていた。
「あのままにしておいても良いんですか?」
「いいですよ。実際に裸の女に触れて頂いて、楽しんで貰おうって趣向です。実際ペンチやライターなども置いて何でもやってくださいとお願いしたこともありましたよ」
「そしたら、どうなったんです?」
ルナは興味深そうに訊いた。
「皆さん羽目を外し過ぎましてね。メリザンドが血だらけになりそうだったので止めさせました。流石に愛娘を失いたくないですからな。ハッハッハ!」
偉そうにロランは笑った。
「なるほど、まるで人形なんですね。しかし、その所業。創作の中だけに収まっていませんね」
ルナはロランを見つめた。
「創作を出来る限り現実に近づける方法なのですよ。実際、高額なカメラを買って、映画にしようとも考えております。将来的に映像の技術が進めば、安い値段で皆が手軽にポルノグラフィを楽しむことが出来るような社会になると考えています」
「そうなるともう地下出版で済む市場じゃなくなりますね」
「最終的にポルノは商業としてなり立つと思いますよ。私のような少人数だけで楽しみたい者からすれば内心忸怩たるものはありますけどね。でも、どんな凄い官能作品が作られるかと楽しみでなりません。異端を愛する者からすればね」
「まあ、その時代にはわたしもあなたも生きてないでしょうけど」
ルナは笑った。
「仕方ないですよ。次の時代を担う若者たちに任せましょう」
そういってロランはメリザンドへ歩いていき、鍵を外してルナとズデンカの元へ連れてきた。
「『綺譚集』を出されたペルッツさまだ。挨拶せよ」
「初めまして、メリザンド・ジョンキーユです。母の夫の姓を名乗らせて頂いています。よろしくお願いします。ペルッツさまのまとめられたものを朗読したことがありますよ」
メリザンドはにっこり笑って一礼した。
「へえ、そうなんですか。そんな綺譚《おはなし》まとめたかな? 艶笑譚風のものは幾つかありますけどね」
「なかなか好評でしたよ!」
「ありがたいですね! わたし自身は朗読会とかさっぱり行かないもので。人が読むのを聞いたこともないし、聞く気もない」
「お読みしましょうか」
メリザンドは微笑みを崩さず言った。
「いえ、遠慮しておきます。それより新しい綺譚《おはなし》が集めたくてうずうずしてるんです。最近書く機会がなくってね」
と言ってルナは懐から手帳を取り出した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる